見出し画像

ITに取組む前に

会社の業務にIT活用を考える際には実は色々なレベルでの取組みがあると思います。
もちろんIT関連のシステムや仕組みを新たに導入するためにはお金がかかりますので、会社員であればその取組みに見合った決裁を取らなければなりませんし、経営者であれば自身でその投資の妥当性などを判断しないといけません。
IT投資と言われるものは、コロナ禍を経てそれなりに注目されていますが、実際にIT投資をした結果、必ずしも満足のいく状況になっているわけでは無いようです。
ネットの記事を漁ると、IT投資後に満足している割合が約3割とか、約9割が期待外れだと思っているとかそのようなものがいくつか見つかります。
日本は最近特にIT化に遅れをとっているとかデジタル化化は世界で下の方だとか騒がれているのはご存知でしょう。

「デジタル化」には努力が必要?

では「IT化」と「デジタル化」とはどんなことなのでしょうか。
これまた結構あいまいな用語として使われますので、厳密に世間で一致している定義が普及しているか疑問ですが、「IT化」は業務に情報処理技術を取り入れて便利にしようとする行為で、「デジタル化」はアナログ業務をデジタル(コンピュータで利用可能なもの)にする行為と考えることもできます。
この両者はほぼ同じ意味で使われていると思いますが、私の感覚ではデジタル化はIT化の前提というか入口みたいな感じです。
ですから、単にアナログ業務を「デジタル化」によりデジタルに置き換えても、それ自体が大きな何かを生み出してくれることは少ないでしょう。
コンピュータで活用可能な「デジタルデータ」にまずは変換し、その上で「IT化」の取組みをうまく行い、意味を高めていく。そしてさらには業務の改善を伴う「DX」な活動にしていかないとなかなか成果はでないかもしれません。(ITとDXの違いについては別の記事で簡単に書きました
「デジタル化」で思い付くものとして、「FAXをE-mailに切り替える」とか「勤務管理をパソコンで行う」とか「ハンコをやめてみる」などがありますよね。
私のように仕事の大半がパソコンで行なっていたり、動き回って仕事しなくても済むような方たちの場合にはそれほど苦にならない作業かと思いますが、パソコン入力に慣れていない方たちや、仕事上外を動き回っていらっしゃる方たちにすれば、いちいちパソコンなんかで打ち込んでいられないという方たちも結構いらっしゃるのではないでしょうか。
アナログの時は「電話」や「FAX」でとりあえず相手に連絡しておけば自分の作業は完了していたのに、パソコン開いてアプリ起動してメール打ち込んでとなると面倒以外の何ものでもないとなりますよね。
最近はだいぶスマホが仕事でも活躍してきているので、それでも一昔前から比べればだいぶ楽に「デジタル化」できるようになってきたと思いますが、それでも手間が増えているかもしれません。
そうです、「デジタル化」はかなりの確率で結構現場の努力が必要なんですよね。
先に書きましたように「デジタル化」しただけでは面白くなくて、その後に「IT化」された仕組みの中で今までにはなかった便利で嬉しいことが待っていると信じて現場では「デジタル化」の努力をするのでしょう。

「デジタル化」がなぜ面倒なのか?

では「デジタル化」がなぜ面倒くさいのでしょう。
これは人間が優れすぎているからと考えることができると思います。
「デジタル」の反対である「アナログ」というものは、平たく言えば人間の行動や自然の状況がそれぞれの赴くままに不連続にしかもあいまいさを含んで存在している状態です。
人びとは「アナログ」なコミュニケーションを行う際に、例えば「電話」で連絡を撮る場合(厳密には今の電話は仕組みはデジタルですが気にしないことにします)には相手の声の大きさや単語の区切れ具合、テンポやスピードなどといった言葉意外の要素も含めて感じとり、尚且つそれを自分の経験や知識に照らし合わせて伝達内容に付加情報を補って相手の言いたいことを理解しようとします。
これは本当に人間の素晴らしい能力だと私は思います。そのおかげで人と人は「電話」で話をするだけでかなり正確に思いをやりとりできるのだと思います。
しかし「デジタル」にした情報(データ)では、例えばメールで伝えようとした場合、当然ながら文字(活字)と文章がメインのコミュニケーションになります。
文字を太くしたり、色をつけたりと工夫はできるかもしれませんが、メールを出している人と受け取った人が同じ温度感を共有できるかどうかは定かではありません。
私たちはそのことをなんとなく理解しているので、メールでコミュニケーションをとる際は、文章に工夫したり、時には書き直したりとそれなりに努力します。
それでも言いたいことがうまく伝わっていなくてその後二度手間になることもあるでしょう。

こんな感じなので、メールで連絡すれば良いやと思っても、「今は手が離せないから後で少し落ち着いたらメールしよう」となってしまったりするのではないでしょうか。
これが積み重なると「面倒くさい」となったりするのでかなと思います。
要するに、「デジタル化」では「アナログ」の時には人が自然とカバーしていた曖昧さや雰囲気などをできるだけ正確に「デジタル(数値)」にしないといけないという状況が一因かもしれないと考えられます。
もちろん、単にパソコン使うのが面倒ということもありますけどね。

ですから、できるかぎり面倒くさくなく「デジタル化」する工夫が色々と試みられています。
スマホを活用するのもその一つだと思いますし、顔認証や指紋認証も広い意味ではその工夫になるでしょう。
さらに音声認識とかもそうですね。
これらのテクノロジーを活用することで、「デジタル化」の面倒くささを軽減しようとしています。
でもまだ面倒くささの本質的な部分である、「あいまいさや雰囲気」みたいなものを補ってくれる技術はこれからな感じがします。
そしてIoTやAIというものも、この部分を補い、強化するために世界中のエンジニアや企業が頑張っているのだと思います。

IT化への取組みの目的と期待を具体的に共有する

このように「IT化」、「デジタル化」に取組むことは、お金がかかる以外にもそれなりの努力が必要になります。
途中でみんなが、「面倒だから一言だけ書こう」とか「報告回数を減らそう」とか、ひどい場合には「もうやってられん」となってしまっては全く残念なことです。
それゆえに、IT化に取組む際にはそれに関わる全ての人と、その目的と期待する効果を事前にちゃんと共有しておく必要があります。
できれば、関係する人たち全員に、「ほら、こんなに嬉しいことになるはずだからぜひ一緒にやりましょう」と話をして「なるほど、OK」と思ってもらった上で進めたいところです。
なかなか現実にはそうはいかないと思いますが。

設定する目的は、誰が主導するか、また取組む規模や範囲により変わってきます。
経営者が会社の経営戦略上必要と判断して取組むIT化であれば、その目的は会社の業績向上(売上、利益、収益率向上など)になるでしょう。
営業部門全体として取組むのであれば、営業経費削減かもしれません。
開発チームで取組む場合には、目的は開発工数削減やコミュニケーション質向上などですか。
いずれの場合にもできるだけ具体的な数値目標を設定し、運用しながら定期的に現状と目標の乖離をモニタリングすることが重要です。
そのためにも最初に目的と期待値を明確にし、関係者で共有しましょう。

ITへの取組みは一発では終わりませんよ

ITへの取組み、IT投資はそれなりにお金も手間もかかりますが、残念ながら一回大きく投資したらおしまいというわけにはなかなかいきません。
IT投資の最終目的は、それにより事業活動が高まり、より儲かる企業になることですよね。
ITはそのための道具ですし、ITに着手すればすぐに儲かるようになるわけでもないことは皆さんお分かりなんだと思います。
継続して会社全体のIT能力を高めていきながら、次から次に起こる様々な課題に取り組んでいくことが必要です。
でもそれがうまくいけば、会社はおそらく想像をはるかに超えたステージに辿り着いているかもしれませんね。
そのためにも経営者、従業員が一丸となって続けて取り組んでいくことがとても重要です。
前述したように、関わる人たちが面倒になって活動が止まってしまったり、形骸化してしまったら、IT化の効果は期待できなくなってしまいます。

どうしても投資したらすぐに効果を期待したい気持ちも分かりますし、そう何回も多額な予算はつけられないこともよく分かります。
でもIT化は関わる人間も含めてうまく対応していかないとまずいのです。

ITに取組むためには、残念ながらそれなりに専門性が必要です。
自社でこれらの取組みを進めていける場合には特に問題ないかもしれませんが、もしIT化に自社のリソースだけでは難しいと感じた方がいらっしゃいましたら、躊躇なくサポートしてくれる専門家にご相談ください。
自治体の相談機関や金融機関などでも相談できると思いますし、私が所属しているITコーディネータ協会などでも相談できると思います。
多少は追加のお金がかかるかもしれませんが、IT投資を満足いくものにするためにはかなり有効なお金の使い方だと思います。(普通は相談だけならお金掛かりませんね)
まずはどこかのソフトやシステムに依存しない形で相談にのってくれるところにコンタクトしてみてはいかがでしょうか。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?