見出し画像

USCPA(米国公認会計士)からの3,000万超えの可能性 - ベンチャーCFOとIPO

もしかしたら今一番熱いかもしれないベンチャーCFOについてです。
USCPAからベンチャーCFOという人はあまり多くない上、英語が活きるか微妙ですが、十分狙えるし、現在のマーケット的には面白いです。

なお、始めに誤解なきように伝えておくと、

現在の日本において、ベンチャーCFOで年収3,000万円はほぼ不可能です。良くて1,000万~1,300万、悪ければ700万くらいからスタートとなります。

一方で、IPOを成し遂げ、ストックオプションで1発、億り人の可能性もあるかもしれません。その辺を勘案して、今回はタイトルを「3,000万超えの可能性」と無難な所に置いています。

そんな世界を垣間見てみましょう。


上場前ベンチャーCFOは案件の宝庫

さて、それではサクサク行きましょう。IPO前のベンチャー企業のCFOです。

実は、結構需要あります。いくらでもある、と言ってもいいかもしれない。

大概、社長が企業して、事業を成長させてきて、数年後にIPOを目指せるかもしれないタイミングの会社を狙うことになります。この手の会社は、小さなサークルのように、みんなで一丸となって事業拡大に猛進しています。

今まで、社内を見渡せばみんな友達、誰が何をやっていたかわかった状況から、急激に人が増え始め、あちこちに「部署」ができ、「マネジメント」が必要となり、社長一人の声が全員には届きづらくなり始めているフェーズです。

事業拡大に全力を挙げていることから、会社の事務手続きの整備や、ちゃんとした経理・税務のプロセスが回っていないこともあるかもしれません。無邪気に、とんでもないことをやらかしていたけど誰も気付いていなかった、なんてことも、ちょいちょいあるでしょう。

そんな中で、より大きな拡大を目指した資金調達のニーズであったり、社長の願望であったり、株主として入っているVCの組成したファンドの期限が近いからという理由であったりと、理由は様々ですが、IPOを目指して整備ができる人が求められます。

ファンドが株主だと、ファンドの人脈で経験者をCFOに送り込んでいるケースもありますが、まだまだいい人材が不足している日本では結構募集ポジションがある、というのが実情です。

採る会社側も、まだ知名度が低く、中々優秀な人を見つけづらい状況の中、社長の交友関係などからいい人いないか探っていたりすることがよくあります。ケースバイケースではありますが、どこも採用には手間取っているのが普通のため、超優秀でなくても、社長と馬が合えば割と入りやすかったりすることでしょう。

このように、上場前ベンチャーのCFOポジションは、案件の宝庫なわけです。

IPOまでは、ひたすら会社の整備

さて、晴れてベンチャーCFOになったあなたを待ち受けている業務は、会社の事業の理解と、ひたすらに会社の制度の整備です。

整備された会社に勤めたことがなく、もちろん整備の仕方を知らないメンバーを部下に持ち、誰も上場後の青写真を描けない管理部門をあなたが率いることになります。「上場請負人」として入社してきたあなたの肩に期待がドーンと乗るわけです。

ちょっと心細いですよね。

今までの大企業や、監査法人、FASとは勝手が大違いです。

そんな中、あなたがやるべき上場に向けた作業はそれはもう、多岐にわたります。仮にCFOというのが管理管掌役員としてのポジションだったとして、上場前に行う一例を挙げると、こんな感じです。

  • 事業内容を理解し、必要なKPIを設定して適切な事業計画(予算)をタイムリーに作成できる体制を整える(上場審査で最も重視されるポイント)

  • 決算、税務申告などの作業が全てタイムリーに行えるように整備する。必要ならば決算早期化などのプロセス改革を行う

  • 重要な契約などを整備し、社内の法務レビューのプロセスを整える

  • 各種規程の作成・整備と取締役会での承認

  • 従業員の労働状況を把握し、三六協定を遵守させ(残業しすぎの状態の是正をする)、未払残業代をなくす

  • 与信管理、反社チェック、社内の稟議フロー、購買、支払いのフローなどの整備

  • 内部監査手順の整備(本来、独立した機関であるべきだが、社長が整備できないので大概最初はCFOがやらないといけない)

  • 目標バリュエーションの算定、競合企業の設定とエクイティストーリーの作成

  • 上場によって得る資金の使途の想定

  • 上場審査に向けた各種資料(膨大)の作成

  • 管理部の各主要ポスト人員の採用(まだいい人材が確保できていない場合)

  • その他、上場企業として整備されていて当然のものを整備する

気が狂いそうになりますよね?

ここに列挙したものは、上場までに整備が必要なこと、つまりは主幹事証券会社や取引所の審査において、事細かくチェックされるものであり、その全てをクリアをしないと上場できません。

当然ですが、CFOであり上場請負人であるあなたには、単にこれらを整備するだけではなく、上場できる水準で整備した上で、それらの審査を通過できるように、定められた時間内で資料を提出し、膨大な質問に回答・説明をして審査をクリアしなければなりません。

当然に会社の業績だって上向いていないといけない。

正直なところ、1人でやると地獄でしょう。
これらをきちんとできるかどうかは、どれほど優秀な部長陣(法務、人事労務、総務、経営企画、経理財務など)を手元に置いているかで変わります。

上場準備段階においては、上場コンサルを雇ったりはしますが、それでも「何日も徹夜した」なんて話を普通に聞きます。たいていは信頼おける部長陣が揃わないまま、1~2名ですべてを請け負ってしまって、死にそうになっているからに他なりません。

そりゃあ、経理も税務も人事も労務も法務も購買・販売管理もすべて自分でやって、更に事業の詳細と計画・着地見込みの詳細説明までもするとなったら死にますよね。

単一事業の会社なら死に物狂いでやればなんとかなるかもしれませんが、複数事業を行っている会社なら更に量が増えます

そんな時はやっぱり信頼できる仲間の存在です。
優秀なチームが揃っていれば、そこそこの中堅M&A案件の忙しさくらいで、何とかなるものです。

つまり、上場までの残り時間から計算をし、どれほど優秀なチームを作れるか(人を採用できるか)もとてもとても、重要なポイントとなるのです。


すべては社長との相性次第

上場前には、会社の整備でやることだらけだということがお分かり頂いたところで、核心にせまります。

すなわち、「すべては社長との相性次第」ということです。

たとえば、上記の通り、上場前にやるべき会社の整備はいくらでもあります。

それが会社の成長のために良かろうが悪かろうが、株式を公開するためには整備しないと認められないのですが、通常、会社にとっては面倒な事務作業が膨大に増えるため、事業側でこの変化を歓迎する人など一人もいません。

猪突猛進型の視野の狭い社長だったら、それはもう最悪かもしれませんね。

ルールで必要なのはわかっていても、実際に必要性を感じていない社長の場合は、そこに人員(人件費)を割きたくなく、CFO一人にすべて丸投げするかもしれません。なるべく事業に関係ないコストを圧縮したいために、採用も可能な限り少なくしろとプレッシャーを受けるなんてことも、もしかしたらあるかもしれません(あくまで可能性として)。

また、その他のコストに関する考え方について、モメる可能性もあれば、あなたや他の幹部、従業員のモチベーションを大きく左右するであろう、会社のストックオプションの設定などについても、ぶつかる可能性があるでしょう。

経営を一緒になって行う、毎日顔を合わせる上司との相性が最悪だと、それはもう辛いことになるでしょう。「すべては社長との相性次第」とは、そういうことです。

ストックオプション次第で報酬は雲泥の差

ここで、大事な報酬であるストックオプションについて触れておきます。

大変なプロセスをクリアし、晴れて会社が上場ことを人にいうと、

「え、株で億万長者ですか?いいなぁ、羨ましい」

なんて言われることがよくあります。


残念ながら、みんな全然仕組みを知らないんだな、とぼやきたくなります。

上場によって保有している株式を売却し、金持ちになるのは、上場前から株式を保有していた株主だけであり、途中から入社してきたCFOがそのように株を保有しているケースは稀ではないでしょうか。

株を持っているのは通常、創業者である社長や、それまでの資金調達先であるVCなどの投資家です。その大株主たちも、ロックアップと言って、上場から一定日数、売却できないことが通常です。

大概、途中で入社したCFOだと、上場の前に経営幹部や従業員に付与するためのストックオプションを設計し、上場が成功した後にそのストックオプションが付与され、一定期間が経過した後に行使可能となることで、初めて会社の株式を保有するのです。

この一定期間ですが、これも設計次第で1年の場合もあれば3年の場合もありますし、段階的に行使可能となっていくものなどもあり、様々です。

この時、有償ストックオプションであれば、行使に一株当たりの決まった金額の払い込みが必要であります。つまり、タダでもらえるとも限りません。

無償であった場合にも、その設計次第で税制適格か税制不適格かで適用される税制が異なるため、あなたが支払う税金のタイミングも有利・不利も変わってきます。

このように、ストックオプションはとても複雑であるため、専用のコンサルティング会社に有料で設計してもらうのが普通です。

つまり、難しい設計をしてもらってストックオプションを発行し、大変な思いをして上場が成功、晴れて付与されることになって、初めて『報酬ガッポリ、おめでとうございます!』ということになります。

最も、報酬の額は、付与される株数や、設計時に決まったストックオプションの行使価格、そして売却時の株価によってその価値は大きく変わります。行使価格を低く設定でき、更に売却時に株価が大きく跳ねていれば大きな収入を得られますが、当然にその逆もあり得るわけです。

そして、株を売る時期も重要ですね。大概、CFOともなるとインサイダーが絡むため、決算発表後の一部の限られた時期にしか売却できません。

更に、その限られた時期に水面下でM&Aの案件が動いていたり、株式市場で更なる資金調達のための案件が動いていたりすれば、当然にインサイダーになるわけですので、やはり持ち株を売却することはできません。

いろいろと制約も多いストックオプションですが、一気に億り人となるケースもあるでしょう。一方で残念ながら、少し多めのボーナス程度のものもあり得ると思います。

いずれにしても、上場まで頑張ったことに対する報酬という位置づけと、その後も会社に長くいてもらいたいとの思いから設計される報酬体系であることから、思いの詰まった報酬となることでしょう。

ベンチャーCFOになるための近道。

さて、これらを総合して考えると、ベンチャーCFOは非常に泥臭い業務が多いですね。しかも手探りでやることが多いことから、答えがわからず、戸惑うことも非常に多いでしょう。

業務の内容ですが、実は監査法人やFASのキャリアというのがとても有効と言えそうです。

内部統制や経理周りの整備には監査法人で培った知識が活きます。

予算・中期経営計画の策定とその詳細KPI、人員計画の作成、運用と今期着地見込みの説明のための作業は事業側へヒアリングする点なども含めて、FASのDDやFAでの経験がものすごく活きてきます。


そして何より、M&AとIPOの両方の経験があるCFOというのは強いです。

この辺はその内、別な記事で詳細を書いてみたいとおもいます。

最も、法務や労務周りなどはやはり専門家が必要ですので、素直に採用して最強チームを作りたいところです。経理・税務の実務も、上場企業基準となると、一人で全てやりきるのは結構しんどいので、やはり優秀な経理マンが欲しいところですね。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?