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バカンスの小麦、何がちがう?

おいしさに 「アンサー」 は必要だ


11月に入り、すっかり冷え込んできました。
自社で小麦を育てているバカンスにとっては、秋は麦の「はじまりの季節」。山口県の農場では麦まきが始まりました!

こちらではその様子をお届けするとともに、小麦へのこだわりをお伝えできたらと考えています。

さて、みなさんは「国産小麦」と聞くと、どんなイメージを持ちますか?

なんとなく安心? 
なんとなくおいしそう?
 なんとなく(外国産より)良さそう?


……という心の声があちこちから聞こえてきたような気がします!!(笑)

そう、消費者にとっては「なんとなく」のふんわりしたイメージしか浮かばないのがリアルなのかもしれません。何を隠そう、この記事を書いている私もイチ消費者として、その気持ちを実感するところでもあるからです。

ですが、その「なんとなく」に対してきちんとアンサー(根拠)を出せるのがバカンスの小麦の最大の特徴でありおいしさの根源。

お客さまの顔を想像しながら育てている生産者である社長・神尾の顔、そして、上質でおいしいパンになるための細やかなプロセスや徹底した管理を、自信を持ってオープンにできること。

これは、他にはない強みだと考えています。

小麦栽培が難しい山口で、最高の品質にチャレンジ


で、そのアンサーって具体的にはどんなこと? というところだと思うのですが(笑)、その前に少しだけ小麦のお話をしたいと思います。

今では95万トン、自給率15%(令和2(2020)年度)まで生産量が回復している(農林水産省HPより)という小麦。

ほとんどが国外からの輸入です。湿気に弱く乾燥を好む小麦の安定した生産は梅雨のある日本では難しく、国産小麦の生産量はまだまだ伸び悩んでいます。

そんな中でも、外国産にはない特徴の高品質の品種ができはじめたのはここ20年ほどのこと。近年ようやく国内産であることがポジティブに受け取られるようになってきたと考えると、冒頭の「なんとなく」のイメージは、当たり前といえば当たり前なのかもしれないという気もしますよね。

おいしいパンを生み出す、おいしい小麦。重要なポイントは「タンパク質」です。

特にパン用小麦ではグルテンと呼ばれるタンパク質が大切で、グルテンが多いことでふっくらと膨らむパンになります。

ところが、タンパク質の含有量が低く、品質も安定しないというのが国産小麦の問題点。しかも、農場のある山口県は中山間地域。地形が平坦ではなく日当たりや温度も均一ではないこの場所は小麦の栽培には向いていないとされています。

理想とするタンパク質の含有率は12% 以上。パン用小麦の栽培では、開花期の前後に窒素肥料を与えることで含有率を高めていきますが、圃場(ほじょう)の排水が悪くて肥料が効かなかったり、そもそもの肥料の量が不十分だと、十分にタンパク質の数字は上がりません。
また、製粉の時点でタンパク質をたくさん含んだ小麦の外側が取り除かれるため、理想の小麦を育てるのはなかなか難しいのです。

そこでバカンスでは2020年より、パン用小麦の収量と品質を高めるために、日本でも新しい肥料のやり方を取り入れた、こだわりの小麦栽培を始めることにしました。


作物や生育環境のしくみを使ってより良い栽培方法を開発し、栽培場の問題を作物や生育環境のしくみを使って解決する、
栽培研究のスペシャリスト
(山口大学 栽培学研究室 荒木教授)

技術のスペシャリスト
(農家 神尾辰雄)


がタッグを組んだ、おいしさにとことんこだわった高品質の小麦栽培への取り組みです。


左:荒木教授 右:神尾


自然に合わせて、手間をかけて育てる


新しい肥料のやり方というのは「追肥重点施肥(ついひじゅうてんせひ)」というもの(難しい!)。

詳しくはまた記事にしたいと思いますが、平たく言うと、小麦があまり窒素を吸わない間には与えず、その分をたくさん窒素を吸うタイミングで与えるという、小麦に合わせた肥料のやり方。
従来に比べて収量も上がるほか、種のタンパク質も1パーセント程度上がるとされています。

では、従来のやり方はどうだったのか? というと、北海道を除いた多くの小麦の産地では、生育の前期に元肥料という事前の肥料を一度に与える方法を取っていました。

このやり方は農家側からすると効率的ではありますが、麦の生育次第で効果が薄くなることも。さらに、ここ数年で、麦は茎が伸長し始める時期からの窒素を蓄える量が多いこともわかってきました。

荒木教授は、自身が提唱する追肥重点施肥を全国の研究機関と一緒に研究しているほか、この肥料のやり方は、麦の最新栽培マニュアルとしてもリリースされました。

バカンスではまず土壌の力だけで麦を厳しく育てて、2月末・3月末あたりにかけて生育に合わせて窒素を含んだ肥料を2度散布。その後、開花期である4月の中旬ごろに、尿素(チッソ)を2度に分けて葉面に散布する方法をとっています。

自然に合わせたやり方は手間がかかりますが、その分おいしいパンになってくれると信じています。

「ミナミノカオリ」の麦まきがスタート


バカンスでは、この秋の麦まきから「ミナミノカオリ」という品種に挑戦しています。これまで育てていた「せときらら」よりも育てにくく収量も落ちますが、しっかりとタンパク質を持ち合わせたおいしい小麦です。
どんな仕上がりになるのか、今から楽しみです!

これは麦まきの前におこなう、「額縁明渠(がくぶちめいきょ)」という排水を高めるための作業。湿度を嫌う麦のための排水対策で、中山間ならではの工程です。

その後、麦まきがしやすいように稲刈り後に残った稲の株を粉砕して、

土を粗く耕起していきます。この作業も、土壌を乾燥しやすくさせて、酸素を入れるための工程。もし雨が降っても、細かい土よりは粗い土の方が排水しやすいんです。

今後も、農場から小麦の成長をお届けしていきます。バカンス気分になれるパンを生み出す、山口からの風景をぜひお楽しみに!

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