HRとして熱量を上げる
1エンジニア、Tech Leadとして入社しましたが、現在完全にジョブタイトルも評価もビジネス職になり、100% HRとして働いています、ばんくしです。
最近「兼業なんですよね?」「なぜHR?」と聞かれる事があまりにも多いので、1つ記事を書いておこうと思い至っています。
やっていること
実際に100% エンジニア採用にフォーカスしています。
技術広報の管理から分析、採用フロー設計、社内外の需要調査、採用Opsの構築や連携、書類チェック、候補者とのやり取り、カジュアル面談、1on1でのキャリア相談、各制度設計など全てのHR業務に時間を費やしています。
採用においては、戦略と寄り添いが全てだと思っているので、面談等の定常タスクの時間以外は、事業と人を知り考える時間に当てています。
ひたすら事業の事を調べ、プロダクトマネージャーにヒアリングを行ったりエンジニアと1on1することで『自分たちにマッチするエンジニア像』について考える時間。市場を把握して候補者の人生を考える時間。ただひたすら毎日これを繰り返しています。
元々Tech Leadとして働いていた時は、所属チームの採用計画設計から面接フロー構築、カジュアル面談、技術面接からアトラクトまで私が実施しており、その上で開発しながらMVPとして表彰されたりしていたので、何となく向いていた説はあります。
人と会って話を聞きより良い選択をしてもらう事、良い選択のために制度や仕組みを作る事には、人一倍強い関心がもともとあったなとも思います。
今非常に楽しいです。
HRと熱量
HRをやっている理由は「エンジニア組織の熱量を上げたい」です。
熱量の高い組織
ワールドカップで多くの人が盛り上がった時のように、大学での研究室で何か新しい事が始まった時のように、ロボコン部で夜通しものづくりに励んだ時のように、皆が前のめりな高い熱量の組織を作りたいと思っています。
誰かが何かに挑戦している時「否定」「無関心」のような姿勢ではなく「一緒に挑戦できる」「より良くするための言及ができる」そういう状態です。
熱量のコントロールの難しさ
熱量の高い雰囲気の図を見て「人数の少ないベンチャーでは当たり前ではないか」というイメージを持たれる方も多いかもしれませんが、近年流行する初期からのマルチプロダクト戦略においてはサイロ化しコミュニケーションが不足したりしますし、リモートワーク、人数の急増、言語や制度、マネジメント層の考え方やマネジメント力、事業の方向転換など、熱量が低い状態はどんな会社にも発生し得ます。
私は、趣味で副業等を請け負う、少人数の開発チームも運営しています。
そこにはSWEとしては業界トップクラスのリーダー級の面々が集まっていますが、そういった場でさえも一度全体の熱が下がった事があります。
どれだけ優秀なメンバーを集めても起こりえます。
優秀なエンジニアを集めた組織が組織崩壊を起こすのと同じように。
もちろんこれは、大企業においても同じ事が言えるでしょう。
ここでいう "熱" には「内発的/外発的な熱がある」「熱は伝搬する」という特性があると考えています。
ワールドカップで皆で盛り上がっている時、多くの人は、外発的な熱が他者から伝搬して盛り上がっている人の良い例と言えるでしょう。
ソフトウェアエンジニアでも分かりやすく言えば「土日も遊び感覚でプログラミングしてしまう人」はまさに内発的に熱を持っている人と言えます。
一見盛り上がっていれば何とかなりそうな”熱量”ですが、外発的な熱はコントロールできるが内発的な熱はコントロールが難しい事、マイナスの熱も伝搬する事が組織というモノをややこしくします。
どれだけ内発的に発熱して保温できる人も、体調や家庭の事情、事業や人の方向性、キャリアのタイミングなどで冷めてしまう事もあります。また、熱量が高くても、それらを上手に外に出すようなコミュニケーションが苦手なメンバーも居るでしょう。
熱が低い状態でコミュニケーションをしてしまい、他者の熱を下げてしまったという事は、社会人なら誰しも経験があるのではないでしょうか。
全員が内発的な高い熱量を持ち、全員が良い影響を及ぼしあっている理想の状態は、一定人数を超えるとほぼ有り得ない、といって良いでしょう。
私の趣味開発チームでも、当時熱量が低くなっていたメンバーが他者を巻き込んで仕事の仕方を変えようとしてお客様にも迷惑が掛かった、という事がありました。
今では全員で振り返りって上記のような特性を把握した上で、外発的な全体の熱量は保ちながら、内発的な熱量が低い時は関わりを減らす仕組みに改善しています。
熱量と開発
全体の熱量の低い状態は、開発によるROIが低い状態、とも言えます。
ある特定の熱量の高い開発者が、素晴らしい物を開発したとしても、それらに対して周囲がコミットしないならば事業での応用、成功は見えづらくなるでしょう。
これは個人、チーム、組織全てにおいてそうだと思います。
この開発との関係については、@iwashi86氏のスライドもオススメです。
こと開発を例に出しましたが、組織スピード、意思決定、採用、成長や挑戦、目標達成、マネジメントなど、熱量が低い状態では組織は前に進みにくいと言えます。
マネジメントの熱量や意思決定の熱量、開発の熱量も相互に関連しているので、どこか1つで一時的な盛り上がりがあっても、組織が良い状態とは言えない所も難しいポイントです。
チームや組織でやること全てにおいて「スタンスのない否定」「無関心」が増えたと感じたら、様々な事に影響が出る前の黄色い信号だと思った方が良いとすら考えています。
実際に私が経験したエムスリーは、熱量の高さも圧倒的だったなと振り返って思います。エムスリーではリーダーシップと表現されていた内容が一部近いかもしれません。以下の記事はオススメです。
各メンバーが前のめりにリーダーシップを取り、リーダーシップを言語化して共有し、全員が組織をより良くする事で「事業」に挑んでいました。かくありたいものです。
開発組織の熱量を上げる
開発組織の熱量を上げる方法は3つあると思っています。
プレイヤーとしてより広くリーダーシップを取る
マネージャーとして全体の熱をコントロールする
人を入れる、変える
1つ目はプレイヤーとしてリーダーシップを発揮する事です。スタンスを持って主体的になるだけでよく、技術者としての信頼関係から熱も伝搬しやすく、なにより分かりやすいので、全員にやってほしいくらいですが、さておき難しい側面もあります。
開発者の仕事がある以上、他のチームまで影響を及ぼしていくには非常に多くの時間をかける必要があります。熱量を伝えるには、どうしても技術だけでは難しいと言えます。
実際に私が所属していたチームは、業界的に見ればトップ10に入るような少数精鋭チームでしたが、このメンバーを更に強く大きく伸ばすためには、今の立ち位置じゃエンジニア組織全体の熱量に影響を及ぼすのが難しくやり切れないなという課題感を持っていました。
2つ目は、マネージャーとして全体の熱をコントロールする、という方法です。プロダクト/プロジェクトマネージャーであれば少し難しい所もあるかもしれませんが、エンジニアリングマネージャーとしては本質と言っても良いかもしれません。
仕組み作り、FBを作り、熱量の代わりになるKPIを上げる事、その上で事業目標を達成する事が求められる役職でもあり、これらを達成する事が事業をマネージメントする事でもあると思います。全体の熱量を見て、人の入れ替えも行う等ラディカルな行動が取れる数少ない立ち位置でもあります。
特にエンジニア組織であればCTO、VPoEのような立場が、各個人との1on1の口実も作りやすく、各個人レベルでの内発的熱量の把握や全体の仕組みによる外発的熱量の焚き付け・切り分けをコントロールすることもやりやすいでしょう。こういった立ち位置の役職を事も考えても良いかもしれません。
プレイヤーとして生きていきたい人も多いのがエンジニア組織なので、「なりたい人が少ない」という難しさも側面としてはあるでしょう。また、エンジニアリングマネージャでも熱量が低く文句は言うが自ら行動しない人はどうしても出てきてしまうので、全てにおいて上手く回っているとは言えない点がプレイヤーとは変わらないとも言えます。
3つ目が、新しい人を入れる、変える、といった方法です。
新卒、転職市場に出ている人、というのは何らかの挑戦心や不満から来る熱量を持ち合わせている事が多いです。熱の伝搬する特性の活用を狙い、より熱量が高い人の全体における割合を高める、というのは実際効くでしょう。
この方法においては、よりギークでスマートな事業に対する熱量を持った人とマッチングする事を強く意識できる人が採用に関わっているか、は大事です。所属組織では、採用がエンジニアリングマネージャーの片手間になっているシーンが多くあったため、最高の伸びしろだとも思っていました。
端的に言えば、1つ目に示したプレイヤーとしての熱量上げには注力していたが難しいなと思っていた所に、ちょうど3つ目に関われる「HRという立ち位置やらない?」という話が来たので100%振っているというのが私の今の立ち位置になります。
なる時は正直迷いましたが、HR適性があるとも感じていましたし、今自分が感じている課題に対して最も良い立ち位置を考えた時に取れる所に来たという形です。
これから
目の前の事でまずゴールを取る事をやる予定です。
今居るエンジニア採用チームのMissionは
『日本からAmazonを超える開発組織を作る』
らしいのでまず一旦作ろうと思っています。
実際にAmazonからBar Raiserの精神を取り込んだりしています。
本気でやっていますのでよろしくお願いします。