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AIで人間の仕事が奪われるという誤解を解く

はじめに


「AIの発達で人間の仕事が奪われる」
ちまたではよく聞く言葉です。
しかし、多くの人々はこの言葉をマイナスイメージで捉えてしまっています。
AIによって一部の仕事が消滅していくことは確かですが、それによって「仕事を無くした人間が路頭に迷う」ということにはなりません。
なぜなら、消滅した仕事と同じだけ新たな仕事が創造されるからです。

もしかしたら、ここまでの情報は既に聞いたことがあるかもしれません。有識者たちがネット番組でやんわりと解説していたこともあります。
しかし私は、「実際に生み出される新しい仕事の特徴」について詳しく説明している人を見たことがありません。
そこで、この記事では、科学的根拠に基づいて、AIによって消える職、増える職の特徴と具体例について解説していきます。
これらを理解することで、未来に発展する産業を予測することが可能となります。私たちは消える産業にコストを費やさず、成長していく産業に関わることで利益を勝ち取ることができるでしょう。

先に結論を言ってしまうと、私は、「今後AIの発展によって今後最も増える仕事はYouTuberやバーチャルYouTuberである」と考えています。


機械化で消える職、増える職の特徴


「AIは人間の仕事を奪うのか?」
実はこの問いには50年以上前に答えが出ています。

行動経済学の先駆者にバーバート・A・サイモンという人物がいます。彼は、人工知能、経済学、心理学の世界的権威であり、1978年度ノーベル経済学賞を受賞しました。
彼は自身の著書「意思決定の科学」において、機械化(オートメーション)で人間の仕事は無くならないことを証明しています。


彼によれば、機械化は生産性の向上と実質賃金の上昇をもたらすとのこと。仕事においては、単純で職務満足度の低い仕事から、専門性のある職務満足度の高い仕事へと変化するのです。



これだけでは分かりにくいと思いますので、彼の挙げた例を紹介します。

「ショベルカーが発明されても仕事は減らない。なぜなら鉱夫がショベルカーの運転手になるからだ。」

確かに、ショベルカーの発明で大勢の鉱夫の仕事は無くなります。しかし、その代わりにショベルカーの運転手という新たな専門性のある職業が生まれたのです。それだけでなく、ショベルカーを組み立てる工場でも新たな雇用が発生するでしょう。

簡単に言えば、誰でもできる簡単な仕事が消え、新たにやりがいのある難しい仕事が生み出されるのです。



歴史を振り返れば、昔から人間の仕事は機械に取って変わられてきました。鉄道、電話、車、飛行機などの発明は従来の人間の仕事を奪いましたが、そのせいで失業者が町に溢れたわけではありません。皆新しくできた仕事へとシフトしていくのです。
つまり、「AIによって人間の仕事が奪われる」というものは杞憂に過ぎません。「AIがやりたくない仕事を肩代わりしてくれる」と考えるほうが正しい認識でしょう。


機械化で消える仕事


では、これからの社会では、具体的にどのような仕事がAIによって消えていくのでしょうか?
サイモンによれば機械化で消える仕事の条件は「単純で職務満足度の低い仕事」です。

機械化で消える職業の最も分かりやすい例は、コンビニのレジ打ちでしょう。
Amazonは米国でAmazonGoという無人コンビニを展開しています。AmazonGoでは、スマートフォンによる自動決済のおかげで、レジを通さなくとも商品を買うことができるのです。



レジの自動化の波はファストフード業界にも広がっています。マクドナルド、スターバックスなどの大手ファストフードではセルフオーダー端末が導入され、レジの自動化が進んでいます。


レジ打ち以外にも、ビル清掃員、工場のライン作業員、バスやタクシーの運転手などは、20年後には99%以上無くなる職業であると言われています。

機械化で増える仕事


では、今後増えていく仕事とは何なのでしょうか?
サイモンはAIにより仕事が消えた分、新たに「専門性のある職務満足度の高い仕事」が創造されると述べていました。

アメリカのITサービス大手のコグニザントが新たに増えると予測した仕事を見てみましょう。

1.データ探偵
2.ゲノム・ポートフォリオ・ディレクター
3.散歩・会話の相手
4.倫理的な調達(ES)責任者
5.最高信用責任者(CTO)
6.サイバー都市アナリスト
7.人間と機械の協働責任者
8.人工知能(AI)事業開発責任者
9.BYO(個人所有機器活用)ITファシリテーター
10.エッジコンピューティング専門家
11.フィットネス・コミットメント・カウンセラー
12.デジタル仕立屋
13.AI支援医療技師
14.財務健全性コーチ
15.量子機械学習アナリスト


何やら小難しい名前が並んでいますね。確かに、これらは「専門性のある職務満足度の高い仕事」の条件は満たしています。しかし、自動運転によって職を無くしたタクシー運転手が人工知能の開発責任者になるのは現実的に考えて難しいでしょう。

これらの仕事も増えてくるとは思いますが、AIによって失われた大量の雇用を充足するほどのものとは思えません。

最も増えるのはYouTuber

私はAIによって今後最も増える職業はYouTuberであると考えています。
なぜなら、YouTuberは新たに生まれる仕事の条件「専門性のある職務満足度の高い仕事」にピタリと合致するからです。これに加えて、高度な専門知識が求められないという点で、より普及しやすい性質を持ちます。



まずは「専門性」という点を見ていきましょう。仕事とは生産物を生み出すものであり、YouTuberは動画を生み出しています。そして、YouTuberが生み出す動画は唯一無二のものであり、代替不可能なのです。
YouTuberが引退したとすれば、そのYouTuberの代わりはいません。なぜなら、YouTuberはパーソナリティが重視される仕事だからです。
つまり、「ヒカキン」が引退すれば、もう「ヒカキン」の作り出す動画は二度と見られないというわけです。

それぞれの労働者が生み出す生産物が全て異なる」これは従来の仕事にはほとんど当てはまらないでしょう。従来の企業では、社員が一人退社したからといって、生産が止まるということはありえません。なぜなら、退社した社員の分は補充が利くからです。

このことから、YouTuberは高い専門性を備えていると言えるのではないでしょうか。



次は、「高い職務満足度」という条件です。YouTuberは職務満足度が高い仕事なのでしょうか?

「好きなことで、生きていく」というキャッチコピーの通り、YouTuberの職務満足度は全ての職業でもトップクラスに高いと言えるでしょう。

YouTuberの職務満足度の高さを表す理由の1つは、YouTuberは報酬を貰わなくともやりたいと思える仕事だからです。
YouTuberは動画を生産することで収入を得ています。
しかし、YouTubeはチャンネル登録者数が1000人を超えなければ収益化をすることができません。このチャンネル登録者1000人というのは上位11%に入る数字です。つまり、90%近くのユーザーは動画を生産しても報酬が受け取れないのです。

それにも関わらず、多くのユーザーは無報酬でYouTubeに動画をアップロードしています。これは楽しくて自発的に行っている面が大きいでしょう。「人々が自発的に無報酬で仕事をする」これは従来の仕事にはほとんど当てはまらない現象です。


少し専門的な点で言えば、「成果がすぐにフィードバックされる環境」や「大きな自己裁量権」もYouTuberに高い職務満足度をもたらしています。これら2つの条件は行動経済学で職務満足度を高める要因として挙げられています。YouTuberは仕事の成果が再生数やコメントですぐに可視化され、作りたい動画を自由に作れる環境なのです。よってYouTuberはこれらの高い職務満足度をもたらす条件を満たすと言えるでしょう。


YouTuberになるのに高度な専門知識は求められません。年収数億を稼ぎ出すトップYouTuberたちを見ればわかりますが、彼らは大学院を出た人工知能のスぺシャリストというわけではありません。「ヒカキン」がYouTuberになる前はスーパーのレジ打ちをしていたエピソードは有名でしょう。小学生で数百万人のファンを持つ子どもも存在します。

このように、誰でもなれるYouTuberは、より普及しやすい性質を持つのです。


論理だけでなく、YouTuberの需要の拡大は数字からも読み取れます。


この図の通り、YouTuberの市場規模は年々増え続けているのです。


以上のことから、YouTuberという仕事は機械化で職を失った人々の受け皿になりうるでしょう。



バーチャルYouTuberは専門性の極致

では、結局私たちはどうすればいいのでしょうか?

私は、これからの仕事を考えるなら、YouTuberやYouTubeに関わる仕事は発展性が高く、AIに代替されて職を失うリスクが低いと考えています。更に言えば、YouTuberよりはバーチャルYouTuberのほうがよりチャンスは大きいでしょう。

YouTuberよりも新しく生まれた仕事がバーチャルYouTuberです。職業として見られだした年を考えれば、YouTuberは2011年に生まれたのに対して、バーチャルYouTuberは2017年に生まれました。
サイモンの論理で言えば、新しく生まれたバーチャルYouTuberはより高い専門性と職務満足度を備えており、AIの代替が困難な仕事と言えるでしょう。

バーチャルYouTuberはこれまでに挙げてきたYouTuberの特色に加えて、複数の専門知識が要求されます。
例えば、デザイン、モデリング、VRなどの幅広い知識が必要となるのです。そのため、YouTuberよりも競争相手が少なくなるでしょう。


発展性が大きい、AIに代替されない、競争相手が少ない。これらの点から、今から参入するならば、バーチャルYouTuberのほうがより恩恵が大きくなるだろうと私は考えています。


もちろん、この記事を読んだ全員にYouTuberやバーチャルYouTuberになれとは言いません。しかし、これからのAI社会を考えれば、これらの仕事が増大していくことは明らかです。上手く波に乗ることができればあなたのビジネスの助けになるでしょう。


おわりに


この記事を通して私が述べたかったことは、AIの発展は私たちにとってプラスになるということです。「AIに仕事を奪われる」と恐れる心配などありません。
未来の私たちは、よりやりがいのある仕事へと就いているでしょう。
私は、これからはメディアアーティストの落合洋一氏の提唱する「ワークアズライフ」が一般化していくと考えています。「ワークアズライフ」とは、生活と仕事の一体化のことです。やりがいがあって楽しくて仕方がない仕事ならば、仕事が趣味のように思えるのです。AIによる機械化によって、私たちは「ワークアズライフ」という生き方を実現できるようになるでしょう。

お金儲けのために辛い仕事をしなければならない時代は徐々に終わりを告げようとしています。
今後はAIのおかげで、私たちはそれぞれが自己実現に向かって歩むことができる環境になっていくのではないでしょうか。

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