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#007 どっちが勇敢かという問題|闘牛士のフレスコ画

 今週末の東京は雪が降るかと思いきや、そこまででもなかったですね。2月には降るのでしょうか。
 そんな今日はこちらの作品を観ていきます。

今回の作品

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Minoan fresco depicting a bull leaping scene, found in Knossos, 1600-1400 BC, Heraklion Archaeological Museum, Crete
Carole Raddato|Flickr

○予備知識なしで知覚的に観る

 ゴツゴツとした表面に、カラフルなイラストが描かれています。中央には牛が大きく描かれていて、その上に逆立ちして乗っている人がいます。そして牛の両端にも人が立っています。
 牛のイラストの周りはカラフルな色合いをした絨毯のようなもので囲われています。

 作品のメインとなる牛を見てみると、両足をまっすぐ伸ばして、飛んでいるように見えます。勢いよく跳びかかっているみたいです。暴れているようにも見える牛の上で逆立ちをする人は、曲芸の練習中に見えます。不安定な状態で逆立ちをキメるのも凄いんですが、個人的には暴れる牛の角を身体に刺さりそうな勢いで止めている人の方が勇敢な気がします。

●知識も蓄えて観る

 こちらの作品は、《闘牛士のフレスコ画》と言います。フレスコ画とはイタリア語の「新鮮な、生気のある:fresco」に由来するもので、壁に直接絵を描く技法のひとつです。

 クレタ島(ギリシャの島)にある宮殿にあったもので、当時の庭や臨時会場で行われていた闘牛の様子を描いた作品です。クレタ島で栄えたミノア美術作品で、闘牛のような競技は宗教儀式において重要なモノであったようです。

 赤色=男性、白色=女性を表現しているようで、様式化された人物、きれいな曲線がミノア美術の特徴的です。

 そして、気になる勇敢な角を持つ人について、発掘した人がレスリング選手に見せたところ、この体制では角をしっかりと握ることはできないと助言を得ているそう。
 もしかしたら、逆立ちしている曲芸師すごいぜ!よりも、角を持つ人の勇敢さを描いた作品なのかもしれません。

最後に

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Chania, Crete
Pedro Szekely|Flickr

 ここまで6作品ほど紀元前の作品たちを観てきたわけですが、紀元前の数千年の段階で結構カラフルなものが描かれてきたんだなと感じました。どことなく暗めの色づかいを観てきた印象でしたが、ここにきて水色や赤、黄色などのカラフルなものが出てきたのにびっくりしています。

 そして、闘牛が儀式において大事なものであったことも、日本では馴染みなく実感がわかないところですが、そういう世界もあるというのを知っていると、見慣れないものに出くわしたときにもわりかし受け入れられる自分になっていくのではないかなと思いました。

 ではまた次回!

◆作品情報
 闘牛士のフレスコ画(紀元前1550年頃~紀元前1450年)
 作者不詳
 フレスコ画、しっくい
 イラクリオン考古学博物館(ギリシア、クレタ)

◆参考書籍
 世界アート鑑賞図鑑 (日本語) 大型本 – 2015/2/9
 東京書籍
 スティーヴン ファージング (編集), 樺山 紘一 (その他)
 https://amzn.to/2LvUd7l

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