ノアの「あ」　＃01

　時々、昼間すんごい眠たくなることってあるよね。毎日ちゃんと寝てるのに、なんでか。
そういう時って必ずっていうほど、金縛りにあう。幽霊みたいな怖い感じは全然ないんだけど、身体が動かなくなっちゃうの。
頭では、眠りそう、これから夢に入るなって分かっているんだ。現実と夢の間を行ったり来たりして、変な感覚になるのが面白いんだよね。
題名つけるとしたら『夢か現実か幻か』ってな感じ。
でも目覚めたとき、めっちゃくちゃ疲れているのが、あとあと大変なんだけど。

　
　夏休みに入って一週間くらいたった時だったかな。まだまだ夏本番って熱い感じはなくて、セミもそんなに鳴いてなかったと思う。
電気代節約のためにって、クーラーつけずに扇風機だけ回して、玄関を開けて、ベランダから入ってくる風を通していた。
風ってこんなに気持ちいいんだって思ってたら、目つぶっちゃった。そしたら、やっぱり来たんだ金縛り。いつもの通り、身体を動かすことができなくなってね。
　
　目つぶっているはずなのに、目が開いてかのように、天井が見えるのね。早速、夢に入ったかなと思ってたんだけど、その日は夢の入り方がすんなりしてた気がするんだよね。
遠くの方では、ブォォォォーって、いつものように自衛隊の戦闘機飛んでた。なんか、毎日スクランブルらしくて大変みたい。最近はなぜかうちのアパートのすぐ上を飛んでるのも見たんだけど、こんなとこ飛んで大丈夫なのか？と思ったかな。
と、そんなこと思い出してた時、奇妙なことに気づいた。戦闘機の音がだんだん近づいているのに。

　頭の上の方に何かいるのに気が付いたんだ。目を頭上にゆっくり向けてみると、マカが僕を覗き込んでいた。

〈つづく〉