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マーケター最大の武器である消費者理解を14の「本能」から解説する

こんにちは、サンチャゴと言います。
普段はIT系の企業でWebサービスのマーケター兼PdMをしています。

今回はマーケターにとって最も大事なスキルと言われる「消費者理解」についての私なりの解説記事となります。

8,000字を超えるボリュームとなりましたが、お時間がない場合は、

  • 目次からタイトルが気になる部分だけを選ぶ

  • 各章の最後にある「まとめ」だけをかいつまんで読む

といった形で、ご覧いただけるとありがたいです。

1. はじめに

1-1. 本記事の結論

まず、この記事の結論ですが、

マーケター必須スキルである消費者理解は
14の本能を理解することが重要であり、
目の前のサービスがどの本能に刺さるかを常に考えよう

です。

ここからは、そもそもこの記事を書こうと思った背景や、この結論に至った理由について解説をしていきたいと思いますので、お時間が許す限りお付き合いをいただけると幸いです。

1-2. 本記事を書いた目的と背景

この記事を書いた目的について説明をする前に、私の尊敬するマーケターである森岡毅さんが消費者理解について説明した以下の記事をご紹介させていただきます。

私自身はこの記事を数十回読んでおり、私なりに解釈をしているのですが、この記事を読んだ最初の頃は、以下のような点が解決せずにモヤモヤした状態でした。

  • 消費者理解の重要性はわかったけど、自身の業務の活かし方がわからない

  • 本能って他にどんなものがあるんだろう(←本記事のメインテーマ)

そのため本記事は、当時の私のようなマーケターに向けて、消費者理解に対してわかりやすく噛み砕いて説明した内容となっており、日々の業務で実践してもらうことを目的としています。

1-3. 想定となる読者と得られるメリット

基本的には、消費者向けにサービスや商品を提供する全てのビジネスパーソンに読んでいただきたいと考えております。ただ、B向けのビジネスをされている方にも気づきとなる部分は多い内容だと考えております。

この記事を読むことにより得られるメリットとして、お客様が本当に必要とする商品やサービスが提案できるようになることを目指します。消費者理解を徹底的に意識することで、読者の皆様が検討している企画がお客様に刺さる確率が格段に上がることを確信しております。

1-4. まとめ

下記に、1章のまとめを書きましたので、振り返りとして活用いただけると幸いです。

2. 消費者理解とは何か

前置きが長くなってしまいましたが、ここからが本題となっておりますので、適度に肩の力を抜きながらお付き合いをいただけると幸いです。

2-1. 消費者理解の定義

まずお伝えするべきなのは、この記事で紹介する消費者理解は多くの人が現状想像、実施している、グループインタビューやビッグデータの活用によってわかるものではなく、極めてアナログな情報であるということです。

昨今、あらゆる商品やサービスがオンライン上でやりとりがされることを前提に作られているので、消費者の情報をデータ化して取得することが容易になりました。その結果、ビッグデータと呼ばれる大量の顧客情報を集めて、そのデータをもとに消費者への価値提案をすることが消費者理解だという風潮があります。

この風潮についてですが、確かにこれも消費者理解の一部の側面ではあると思いますが、私がこの記事で考える消費者理解は、データや表面的なインタビューでは見つけることができない、消費者の行動の本質を把握することだと考えております。

上記で紹介をした森岡さんの記事では、消費者理解について以下のように定義しているので、ここでもその定義を踏襲させていただきます。

「消費者理解」とは何なのか。私は、「本能が支配する消費者の選択の構造を解き明かすこと」と考えています。要するに、人間の本能を理解することなんですね。

Agenda note 刀・森岡毅氏が語る、どんな戦略でも使える“武器”とは

先ほど私が、表面的なインタビューや、ビッグデータの解析だと消費者理解が不十分になると記載させていただいた理由は、それだけだと本能レベルお客様を理解することが難しいためです。

2-2. なぜ本能の理解が必要なのか

では、マーケターがなぜ本能レベルで消費者を理解することが必要かについて説明をします。

結論からお伝えすると、

インサイトが当てやすくなることで、
お客様により良い価値を提供できるようになるため

です。

まず、これから出てくる「インサイト」という言葉の説明です。インサイトとは人を動かす隠れた心理のことであり、昨今のマーケティング活動において、かなり重要な概念となっております。

その理由は、現在、消費者の表面的なニーズは満たされており、そのニーズを満たすだけの商品やサービスは売れない状況となっているからです。

そこで、表面的なニーズではなく、インサイトを見つけて解消してあげることがマーケティング活動をする上で必要となってきました。

では、そのインサイトをどのように見つけるかについてですが、これがまさに本能の理解が大事になってくるポイントであります。なぜなら、多くの場合、インサイトは本能から湧き起こるものだからです。

そのため、

本能を理解する

インサイトが当てやすくなる

消費者により良い価値提供ができるようになる

といった論理構成で、マーケターにとって本能が大事な内容であると説明できます。

2-3. まとめ

下記に、2章のまとめを書きましたので、振り返りとして活用いただけると幸いです。

3. マーケターが理解すべき14の本能

この記事で最もお伝えしたい、14の本能のカテゴライズについてここから説明をさせていただきます。

3-1. 一般的な本能の分類

突然ですが質問です。
「本能」と言われて思いつくのはどのようなものがあるでしょうか?

一般的によく言われているのは3大欲求と言われる、食欲、性欲、睡眠欲であったり、狩をしたいという思いに代表するような狩猟本能などを思い浮かべた人もいるかもしれません。

また、欲求という観点からマズローの欲求5段階説などを考えた人もいるかもしれないです。

上記のような例については、どれも間違ってはいないと思います。

ただ、今回大事になってくるのが、そもそものこの記事で本能に触れる目的が消費者のインサイトを発掘するためであり、そのためにはどのような本能があるかについて、マーケティング活動に使えるように区分けする必要があると考え、整理をさせていただきました。

次の章では、マーケターの武器となり得る、14の本能について説明をさせていただきます。

3-2. 14の本能の概要

ここから、私が考えるマーケターにとって大切な14の本能について説明をさせていただきます。この本能のカテゴライズはあくまでも私の主観で、マーケティングをする上でこの分け方だとうまくいきそうという観点で分けたものであり、学術的な意味づけはないことはご了承ください。

まず最初に、今回の本能のカテゴリを考えるにあたって、大きく参考にさせていただいた本があるので、この場を借りてご紹介をさせていただきます。

こちらの元任天堂のプランナーでWiiの企画担当者である玉樹真一郎さんの『「ついやってしまう」体験のつくりかた』という本となります。

この本は、マーケティングの本ではないのですが、人を動かす体験をどのように企画するかという点について、非常にわかりやすく書かれた本となっております。

その中での人がゲームをする上で、飽きずに続けるためにどのような工夫ができるかという内容について、今回の本能のカテゴライズと考え方が一致することが多く、参考にさせていただきました。

もし興味のある方は是非手に取ってご覧いただけると幸いです。

では、ここからは14の本能について1つずつ紹介をさせていただきます。大きく下記の3つの分類があり、その中に各本能が紐づき計14個となります。

  • 欲しいという欲求に紐づく本能(8個)

  • 避けたいという欲求に紐づく本能(4個)

  • 刺激を得たいという欲求に紐づく本能(2個)

それでは、次の章からはそれぞれの本能の詳細について解説をしていきます。

3-3. 欲しいという欲求に紐づく本能(8個)

最初に、生物的に欲しいという欲求に紐づく8個の本能について解説をします。生物進化の考え方からすると、これらの欲しいという本能が発達した個体が過酷な自然環境を生き延びることができたと考えることもできます。

本能と言われてすぐに思いつく内容が多いので、イメージしやすいと思います。

1. 食

これは言わずと知れた、美味しいものを食べたい、飲みたいといった行動の背景にある本能となります。食べ物や飲み物(特にアルコール)、飲食店のCMなどはこの食の本能をうまく刺激しているものが多いと思います。

2. 性

俗に言う性欲となります。ここでは、異性にカッコよく、可愛く見られたいと言った欲求も含めております。出会い系のサービスなどはこの本能をど真ん中でついているサービスとなります。

3. 楽

人間は楽になりたいという本能があり、自身、もしくは他者や環境によって律することをしない限り、怠惰な方向に進んでいくということを示しています。世の中の多くの商品やサービスは、人を便利に生活できるように用意されたものであり、この楽の本能に従っている結果と言えます。

4. 成長

成長というと大げさかもしれないのですが、できなかったことをできるようになりたいという行動は、自然界で見れば生存確率を高める行動であり本能の1つとして分類をさせていただきました。

5. 正解

自分が予想を立てた内容を当てたいという本能です。クイズとかが出題された時に、外したい!とはあまり思わず、本能的に自分の予想が当たることを望みます。また、何も言われなくても勝手に予想してしまう場合も、この本能が原因と考えております。

6. 解放

日頃の生活からの解放を望む本能となります。テーマパークや海外旅行はこの本能を大きく満たす存在かと思います。また、それ以外にも匿名でのSNSの運用は、一種の解放したいという欲求のはけ口となっている考えられます。

7. 承認

マズローの欲求5段階にもありますが、他社から認められたいという本能となります。よくあるSNSのいいねなどを求める行為だけでなく、昔はよく言われていた、とりあえずいい大学やいい会社に入ろうといった風潮はこの本能に起因すると考えております。

8. 損得

単純に得をしたい、損をしたくないという本能となります。行動経済学によって、人は得をしたいというより、損をしたくないという欲求の方が強いことが証明されました(プロスペクト理論)が、ここでは得をしたいという方に焦点を当てたいと思います。

行動経済学の理論や実践の方法については別の記事でさせていただきます。

以上が、欲しいという欲求に紐づく本能となります。自分の生活や行動を振り返ってみると、上記の8個の本能に従って行動していたものがかなり多いことに気付かされると思います。

3-4. 避けたいという欲求に紐づく本能(4個)

2つ目に、避けたいという欲求に紐づく本能について解説をします。生物進化の観点からは、これらを避ける本能がしっかり発達した個体が、過酷な環境で生き残ることができたことになります。

一方で現代社会では、この生物的に避けたいと思える危機に晒されることが自然界と比べると少なくなりました。そのため、本能的には避けたいと思えるような事柄にはなっているのですが、身の安全がある程度担保された現代においては、エンターテイメントとして、人々が刺激として求める場合があります。

9. 不浄

汚いものを避けたいという本能になります。除菌などといった衛生的なものだけでなく、悪事などの行動などの汚さも含まれます。一方で、エンターテイメントとしては犯罪の映画を見たくなるということは、この不浄な感覚を一時的に求める人間の行動の結果とも考えられます。

10. 暴力

誰でも痛いのは嫌ですし、避けたいという本能が働くものです。ただ、多くのゲームにおいては、モンスターや相手と戦うものばかりであり、暴力を自らはたらくという行動がエンターテイメントとして求められていて、また成立していることがわかります。

11. 混乱

誰でもごちゃごちゃした状況は不安になって嫌と感じますし、基本的には改善したいと思います。しかし現代社会にとっては、人は刺激として混沌とした状況を求めます。例えば、高速で動くジェットコースターなどのアトラクションに乗る行動は、まさにこの混乱を求めた結果と言えます。

12. 死

最後は生物にとって終わりを意味する死となります。これは生物としては絶対に避けたい状況なのですが、生死を題材にしたエンターテイメントは多く存在し、所感になりますが、大きく流行るコンテンツで生死にまつわる話が絡まないものは、むしろ少ないと感じております。

以上が、避けたいという欲求に紐づく本能となります。各項目は生物学的には避けたい内容ではありますが、エンターテイメントしてどの本能も求める対象にもなっているのが、とても面白い状況だと考えております。(これについての考察は別の機会に行いたいと思います。)

3-5. 刺激を得たいという欲求に紐づく本能(2個)

最後に、刺激を得たいという欲求に紐づく本能について解説をします。刺激を得たいという意味では、3-4でご紹介した、避けたい本能のエンタメとしての側面にも近い部分もあるのですが、本能の根本に避けたいという本能が紐づいていないため、今回は分けて分類をしました。

13. 射幸

人は、結果がわからない何かいいことが起こりそうなものを求めるという本能となります。

ある実験で、人はスロットなどで当たりが出た時よりも、当たりが出るまでの期待がある時の方が、ドーパミンと呼ばれる快楽を感じる神経伝達物質が出ることがわかっています。このドーパミンが本能的に、何かいいことを期待すること自体を求めている理由だと考えております。

14. 私事

人のプライベートを垣間見たい、もしくは自分のプライベートを隠したいという欲求となります。

プライベートをさらけ出そうとすると誰でも恥ずかしさを伴いますし、本能的に隠そうとする思いが働くことをご自身でも実感できると思います。また、芸能人のプライベートを見てみたいという欲求もこの本能が原因だと考えております。

以上が、 刺激を得たいという欲求に紐づく本能となります。どれもドキドキという感情に近いものがあると考えており、人々は本能的に刺激を求めているのかもしれません。

3-6. まとめ

下記に、3章のまとめを書きましたので、振り返りとして活用いただけると幸いです。

4. 本能をサービスに活かす方法

ここまで、本能の理解がなぜ必要なのかの説明と、その種類について解説をさせていただきましたので、ここからは、それらを踏まえた上でどのように活用するのかについて説明します。

詳細な活用方法は別の記事に書きたいと思いますが、簡単にイメージをしていただくために、さわりだけでもご紹介をさせてください。

4-1. サービス、商品の担当者だった場合

サービスや商品の担当者だった場合は、以下の2点について確認してみてください。

  1. 担当するサービス、商品が、どんなニーズ/インサイトを解決するのか

  2. インサイトの場合は、14の本能のうち、どれに紐づくものなのか

2-2にも書かせていただきましたが、基本的に消費者の表面的なニーズは満たされており、そのニーズを満たすだけの商品やサービスはなかなか売れない状況となっております。(企業向けのサービスや圧倒的な独自の機能がある場合は別となりますが)

そこで、表面的なニーズではなく、インサイトを見つけて解消してあげることがマーケティング活動をする上で必要となっています。

様々なサービスや商品のPRをみていると、機能の何がすごいなどといった内容を訴求をしているものが多く、お客様のインサイトはこれであり、このサービスや商品によって解決できるといった提案は少ないように感じます。

もし、現状提案しているものが、本能への関連性がないのであれば、お客様への説明情報をどうすれば本能に関係する内容にできるかを検討してみるのが良いと思います。

もちろん、簡単なことではないですし、商品が食べ物だから「食」本能にまつわる説明があれば良いというような、単純な検討も意味がない場合が多いです。

マーケターにとって大切なのは、お客様のインサイトを見つけることであり、そのインサイトが妥当なものかの一つの判断基準として、14の本能に当てはまるものなのかを確認することが大切となります。

もちろん、インサイトの発見のために本能が必ず必要という訳ではないですが、本能を理解しておくことで、インサイトの仮説がグッと立てやすくなるはずです。

4-2. 日頃の練習方法

もし、あなたが商品・サービスに関係がない業務をしている場合は、日頃からできるトレーニングを紹介します。

それは、TVCMや街頭広告を見たときに、4-1で示した時と同じように、以下の2点について自分なりの仮説を立てることです。

  1. どのようなニーズ/インサイトを解決するのか

  2. インサイトの場合は、14の本能のうち、どれに紐づくものなのか

この2つを日頃から意識することが、マーケターとしてとても大切な訓練だと考えております。特に、消費財においてはこのインサイトを各メーカーが見つけて解決する、いわば合戦状態になっておりますので、分析するだけで楽しいと思います。(変態かもしれませんが笑)

4-3. まとめ

下記に、4章のまとめを書きましたので、振り返りとして活用いただけると幸いです。

5. 最後に

以上、気づけば7,000字を超える量の記事となっておりましたが、マーケターにとって必須のスキルの消費者理解に、大いに役に立つと確信している本能の理解について解説をさせていただきました。

昨今のビッグデータの活用によって、確かに消費者の購買行動を予測することがある程度可能となりましたが、その仮説を立てるのに必要なのがマーケターの消費者理解で、今回はその基礎となる本能の理解について解説をさせていただきました。

今回の14の分類は現時点で私が想定しているものなので、正解という訳ではなく、これからもどんどんブラッシュアップしていきたいと考えております。

そのため、もし感想や質問だけでなく、率直にここは違うんじゃないの?といったご意見は是非ともいただけるとありがたいです。

最後に、なかなか長い記事にお付き合いいただきありがとうございました。もし、参考になったという方がいらっしゃたらスキなどのアクションをしていただけるととても嬉しいです。

補足)森岡さんの記事と14の本能の関連付け

補足の内容として、最初に紹介をさせていただいた森岡さんの記事と、今回紹介をさせていただいた14の本能との関連について、簡単に説明をさせていただきます。

もし、まだお読みになっていない方がいれば読んでから戻ってきていただきたいのですが、この記事の中で森岡さんが紹介をしている本能として、大きく以下の2つがありました。

「人はなぜアウトドアに行くのか?」の答え、人間が大自然を求める理由には大きく2つあります。

ひとつは、「自分が何かをできるようになることを確認する」ため。
(中略)
もうひとつは、「自分が生きている実感を得る」ため。

Agenda note 刀・森岡毅氏が語る、どんな戦略でも使える“武器”とは

今回ご紹介をさせていただいた14の本能のうち、

  • 「自分が何かをできるようになることを確認する」は「成長

  • 「自分が生きている実感を得る」は「

が対応している形となっております。

これで、本当に最後になりますが、ご覧いただきありがとうございました。

サンチャゴ


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