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肋木はUIデザインのお手本だと思った話

先日、こんなツイートを見ました。

たしかに体育館で見たことはあるけど、名前も用途も何故置いてあるのかも知りません。

遊具にしては飾り気がなさすぎるし、タオル掛けにしては大きすぎるし(タオル何人分?)、モップ掛けの時裏側にモップが届かなくて、もはや邪魔だった記憶さえあります。

しかし調べてみると、まったく知らない用途に衝撃が走りました。

どんなトレーニングも出来る万能トレーニング器具

まずこれが何なのかと言うと、トレーニング器具なんだそうです。名前は肋木(ろくぼく)。

しかもただのトレーニング器具ではなく、かなり幅広いトレーニングを可能にするとのこと。

たとえば上記の記事でも紹介されていたこの動画には、肋木を使った75種類のトレーニングがまとまっています。

肋木トレーニング01 (1)

肋木トレーニング02 (1)

画像ように、腕も、足も、腹筋も、背筋も、幅広いトレーニングを実現してくれます。出来ないのは室内では難しい有酸素運動くらいでしょうか。

1つのインターフェース、無限の用途。

みなさんは上の動画や画像を見てどう感じられたでしょうか。

筋トレ趣味の方はちょっと欲しくなったりしましたか?もしかすると、もう持ってるなんて人もいるかもしれませんね。

自分はというと、なんて素晴らしいUIデザインなんだろうと感じました。間違いなく最高のUIデザインの1つだと思うんです。

どういうことかと言うと、単一の形態であらゆることを可能にするのは、UIデザインにおいては追い求める最高の形の1つだからです。

最近の国内のUIデザインの中ではモードレスやOOUIといった概念が普及してきていますが、これらの希求するところも、専門的ではなく汎用的なインターフェースへの挑戦と実現です。

汎用的であることがよいものであることの説明としては、たとえば最高のインターフェースの1つが人間の手であることが挙げられます(逆説的ですが)。

人の手は、シンプルに見えて大抵のことはこなしてしまいます。

ペンを握ったりネクタイを結ぶことも出来れば、大小様々な荷物を運ぶことも、拳闘で相手を殴りつけることも出来ますよね(後者はあまりやろうとは思わないですが)。

肋木もまた、1つの形態でありながら様々なトレーニングが可能なプロダクト。間違いなく最高のUIデザインの1つです。

高度な抽象化の欠点?

誰もが見たことがあるほど全国の学校・体育館におしなべて導入されているのは、高い汎用性の証左と言えるでしょう(もちろん実際の普及には仕掛け人がいて、永井道明さんという体育指導者の努力があったようです)。

ただ惜しむらくは、戦時に30年の空白が生まれ、その使い方が忘れ去られてしまったこと。

第二次世界大戦が激化すると学校の教育内容が変わってしまい、肋木は授業で扱われないように。それから約30年後の1971年、再び学習指導要領に採用されましたが、この頃には肋木の指導ができる人材がいなくなっており、結局、ほとんど使われなかったとか。

高度に抽象化されたデザインから、インストラクターが居なければ何の道具か分からなかったことは想像できます。

(だってハシゴにしか見えn)

今では体操選手やその練習など、中級者以上にのみよく使用されている模様です。

融けるデザインとはいうものの、肋木においては融け込みすぎて、子供の遊び道具か運動部のタオル掛けになってしまったようです笑

外部要因があったとはいえ、もしかするとこれは汎用性(抽象化)の欠点と言えるのかも?

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