開発者インタビュー|形状記憶合金とロボティクスの会社が生み出す、ムクムクうごく「線人間」
こんにちは。ユカイ工学 PRの青井です。
今回は先日発表した新作プロダクトの開発者インタビューをお届けします。
形状記憶合金の加工・販売を行う吉見製作所とユカイ工学の心をくすぐるコラボレーションプロダクト、ムクムクうごく「線人間」が誕生します。
CAMPFIREにて、11月18日からクラウドファンディングをスタートしました。
ところで、形状記憶合金って、みなさんご存じですか?
熱や電流をかけると記憶させた形状に形が戻る、ふしぎな合金です。身近なところでは女性下着のワイヤーや、スマートフォンのカメラのピント調整に使う動力などにも使われています。
線人間は吉見製作所の形状記憶合金を使ってできており、スイッチを押し続けることで線に熱が伝わり、くしゃっと崩れた形からもムクムクと元の凛々しい立ち姿に戻るのです。
そんな不思議な形状記憶合金を扱う会社とロボティクスベンチャーのユカイ工学がどうしてコラボし、不思議なオブジェ「線人間」を作るのか。その背景を吉見製作所の坂一宏さん、坂春菜さん、ユカイ工学の巽に聞きました。
吉見製作所とユカイ工学の出会い
--吉見製作所とユカイ工学がコラボしたきっかけは?
吉見製作所 春菜さん(以下、春菜さん):吉見製作所は、熱や電流をかけると記憶させた形状に形が戻る、形状記憶合金という金属の加工・販売に特化した会社です。
元々釣具やブレスレットの芯材などの自社商品を作っていますが、他にも新しいものを作っていきたいなと思っていました。
うちは工場で作るという部分はできるけど、企画力や営業力、デザイン力はあまりないというのが課題としてあって、そういうところを補い合える会社と出会えたらいいなと思って、AICHI MATCHING 2021に出たんです。
AICHI MATCHING 2021では、お互い何ができるかを提示しあって、興味があるところと話を進めていく流れでした。そこで初めてユカイ工学と出会って、形状記憶合金を使って何かできないかなとスタートしました。
線人間にたどり着くまで
--コラボ企画はどのように進んだのでしょう?
ユカイ工学 巽(以下、巽):昨年末頃から社内デザイナーで形状記憶合金を使ったプロダクトのアイディアを出し合い、吉見製作所さんに見せて徐々に候補を絞っていきました。そして今年に入って、最終的に線人間を作ろうと決まりました。
--線人間の決め手は?
吉見製作所 一宏さん(以下、一宏さん):形状記憶合金は熱で動かせるなかでも制約があります。形や温度、どこから熱を伝えるのか、など。その制約の中でも実現可能で、面白いということで選びました。線人間はシンプルだけど、動きとして面白い。
巽:ユカイ工学社内でも、線人間のつぶされても立ち上がる健気な姿がいいねとなりました。
最初は、電源には繋がず形状記憶合金だけで実現できるものを検討していたんです。ライトを当てて戻るようにできないかとか、ドライヤーはどうかななど、いろいろな方法で試しました。吉見製作所さんの方でもトライアンドエラーしてもらいました。
結局は、電池を繋いでみたときの線人間のムクムクとした感じが一番理想だったんです。ユカイ工学の得意分野である回路設計や基板作りなど、お互いの持つ技術を出し合いながらコラボーレーションして作れるところもいいなと、線人間に着地しました。
--線人間以外にはどんなアイディアがあったのでしょう?
巽:例えば、飲み頃の温度になると形が変化するようなコーヒーツールや、電気虫という、バネと形状記憶合金を使ってピクピクと動くアメンボのようなものなどがありました。
線人間に決まってからの道のり
--今のポーズ以外にも線人間のアイディアはあったのでしょうか?
巽:ファイトポーズや座禅、体育座りなどがありました。ライト当てたりとかだと、いろんなポーズもできるかなとか。
型を作るとなると直立のほうが実現しやすいということで落ち着きました。
一宏さん:今回はシンプルなのに面白いという形を作ってもらえましたが、結構一筆書きって難しいんですよね。
--今のポーズに決まってからは、どのくらい試作をしたのでしょうか?
一宏さん:プロトタイプは思ったより少なかったかな。
巽:手元には5つのバージョンのプロトタイプがありますね。
その他にも、基板側のマイナーバージョンアップもあったり、修正や形状変えたり、綺麗に直立させるために形状記憶合金の線の曲げポイントを試したり。
吉見製作所さんでも手作りの型で曲げポイントをトライしてもらって、それがだいたい決まってきたら、金属を加工する業者さんにお願いしてもう少し精度の高い金型でやってみたりと、ステップステップで進めました。
驚きと笑いを生む、不思議な線人間
--プロトタイプをMaker Faireでお披露目していましたが、体験された方の反応は?
巽:驚きと笑いという感じでしたね。甘噛みハムハムも展示していたのもあって、指を噛まれて笑って、線人間をムクムクさせて笑って、という。
春菜さん:大府市産業文化祭にも出展したのですが、「どうして?どうやって動いてるの?」と、不思議に思われる反応が多数でしたね。
--線人間をどんな人に使ってもらいたいですか?
春菜さん:線人間って、やっぱりちょっと元気や笑いが出るんですよね。今は家にいることも多いと思うので、手が空いたなというときにピッと押して、うふふと。そのくらいで楽しんでもらえたらいいですね。
巽:あとは、博物館とか美術館などのショップで置いてもらうという展開もできたらいいなと思っています。
あとがき
「線人間」は、吉見製作所とユカイ工学が出会い、自分たちにはない技術を互いに出し合って生まれるプロダクトです。
"合金" と "ロボティクス"。どちらも固い・無機質というイメージを持たれることが多いかなと思いますが、ふにゃっと形が変わる柔らかい線がムクムクと健気に立ち上がるという、なんだか心がゆるむアイテムができました。
何度つぶされても立ち直ってくる姿を眺めていると不思議と和み、気づいたら繰り返し遊んでいる。そんな線人間の不思議な体験をみなさんと共有できたら嬉しいです。
11月18日〜12月25日までのクラウドファンディングでは、「線人間デザイン券」というリターンもあり、好きな形のムクムク動くオブジェを作ることができます。
みなさんだったら、どんな形の形状記憶合金を作ってみたいですか?
好きな動物や思い出のある形、ムクムクとした動きを生かした形など。今回コラボならではのプロダクトが生まれたように、吉見製作所とユカイ工学だけでは出てこなかったアイディアが加わって、新しいアイテムを生み出すことができるのではと楽しみにしています。
ムクムク動く「線人間」をどうぞよろしくお願いします。
▼ クラウドファンディングはこちら
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