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新しい家

結婚してから5回目の引越しをする。
私の第5章が始まる。
夫の転勤でいろんな家に住んだ。
結婚して最初の家は古いアパートだった。
新しい畳の匂い、初めての子育て。
子どもたちとお米を乗せ、重くてハンドルが効かない自転車を漕いだ。
寝る前に子どもの選んだ絵本を面白おかしく読んで怒られた。
おままごとのような日々だった。

2度目の家は広い庭があって草むしりに奮闘した。
少年野球の応援に明け暮れた。
朝から晩まで、土日もなく、寒くて毎日が濃かった。

3度目の家は初めての関西、初めての社宅。
経験したことない狭さとボロさだった。泣きに泣き、嫌だ嫌だとごねた。
夫はスーパーで惣菜を買い込んで来て
『ママを励ます会』なるものを催した。
そんな風にして新しい場所で家族と暮らした。
次男は小さな風呂で海猿の真似をよくしていた。
『水面よしっ』と指差し、ストローをくわえ、水中に潜っている様子を動画で撮ってと言っていた。

4度目の家は阪神大震災でも壊れなかった私と同年代の古くて広いオンボロ社宅。
長男はいつも何かを描いていた。
小さな音で夜遅くまで音楽を聴きながら何かを作ったり描いたりしていた。
次男は思い切りグレた。
つらくて切なくてボロボロだったはずなのに、あの日々が愛しい記憶になって残る。

今までの引越しで大事なものをたくさん捨ててきた。そうしないと暮らせなかった。
戻りたくてももう戻れない。もう今までの思い出の場所には帰れない。
だけどいつでも目を閉じるとすぐにどの家にも飛んでいける。どこで眠っていたとしても、あの時の自分の場所に行くことができる。
目を閉じるだけで全部思い出せる。

ありがとう、今までのお家。
オンボロアパートよ、
草むしりと少年野球の家よ、
狭い社宅、海猿のお風呂の家よ、
警察が何度も来た悲しかった家よ、
全部家族4人で過ごした奇跡の我が家。
ボロくても狭くても関係ないんだね。
ありがとう。
全部の我が家、さようなら。
また私の新しい生活が始まる。楽しもう。

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