長男
今日は初めて長男のことを書いてみようと思う。
長男は小さな頃から手がかからない子だった。
聞き分けがよくわがままを言うこともほとんどなかった。
誰の空間も邪魔しないような空気感で、家にいても居たの?と思うほど気配が無くよく驚かされた。
初孫で両家の祖父母から愛された。
大人の用事で連れ回すことがあっても自分なりの時間を過ごすことが出来た。
絵が好きで本が好きで静かで物を丁寧に扱う子だった。
私に甘えたい時もあっただろうが次男がいつも横入りした。それでも私とアイコンタクトを交わし、私がウインクするだけで納得できるような子だった。
静かで控えめな長男は夫から「外で遊んでこい」と、よく言われていた。
活発な方が子どもらしくていいと夫は思っていた。
兄弟の仲はよかった。正反対の2人だったが次男は「にいちゃん、にいちゃん」とくっついていた。
そのうち月日は流れ思春期を迎えた。
次男の問題行動が始まった。
親が急に呼び出され家を不在にすることもあった。
家に突然先生が来ることもあった。
誰かがイライラする日も多かった。
私が落ち込む日もどんどん増えた。
どんなに家の中がどんよりしても長男は変わらず学校へ行き部活に励んだ。
次男に対しての態度も変わらなかった。
ある時、元気のない私に長男が話してきた。
「本に書いてたんだけど、何か問題があるときそのことばかり考えたりしてると答えが出ないんだって。
全然関係ないことをしてる時に答えが見つかることがあるって。」
誰のことも責めない、さらっとした言い方だったが
長男なりに家族を気にかけてくれていた。
母親の在り方がどれほど家庭の中で重要だったか私は気づいてなかった。長男の方がずっと大人だった。
そして次男が初めての少年院へ行くころ長男は大学へ進学した。
…長男は小さいとき絵を習っていた。
そこにいる大人は静かで作品に対する受容力があり柔らかな雰囲気だった。
次男は空手を習っていた。
そこにいる大人は試合で歯が飛び流血しても試合続行するようなたくましさがあった。
2人の好きなことは両極端なところにあるなと思った。
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