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【連載童話】ヘンリーと赤いふうせん7


ふいに 大きな手に あたまをぽんぽんと たたかれました。
おなじとき 木のかおりが ヘンリーのはなさきに
ふわっと とどいて 目をあけると

目のまえのイスに おじいちゃんが こしかけていました。

「村の外へ行く…か」

シュッ、シュッと
おじいちゃんの 小がたなが
木ぎれをけずっていきます。
そのかたちは やっぱり見たことのない
四つ足のどうぶつでした。

ヘンリーと赤いふうせん7

「あの山のむこうは とおい」

「…うん…」

「村の外では おそろしい目にあうかもしれん」

「…うん…」

「つらい思いをするかもしれん」

「…うん…」

シュッ、シュッ
おじいちゃんの こがたなが 木をけずる音
それから おじいちゃんの くぐもったこえを
聞いているうちに
ヘンリーは なんだか ふあんになってきました。

“やっぱり むりなんだ
とても 行けるところじゃないんだ”

ヘンリーの目に なみだがあふれ
こぼれおちた そのときでした。

おじいちゃんの 大きな手が
しぼんだふうせんを ひろいあげました。
そうして ふうっと いきを ふきこんだのです。


〈つづく〉



   



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