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【連載童話】ヘンリーと赤いふうせん12

「おや 見かけないかっこうの鳥だねぇ」

そのときです。
あたまの上のほうから こえがしました。

見ると 大きくて まっくろいカラスが
ふうせんのあいだから ちらちらと
すがたを 見せています。

「ぼくは 鳥じゃない。
にんげんのおとこのこだよ」

「おやおや とりじゃない。にんげんだと。
それなのに 空を飛んでいるとは」

「そうなんだけど ぼくは あの山のむこうがわへ
行くところなんだ」

ヘンリーが まだとおい あの山のいただきを
ゆびさして 言いました。

そのとたん カラスはわらいだしたのです。

「カッカッカ!バカなことを言うんじゃないよ。
あの山のむこうがわへ行くなんて 鳥でもなきゃむりさ」

カラスが いじわるにわらうので
ヘンリーもとてもいやなきもちになりました。

「それでも ぼくは行くんだ。
むりだなんて わからないもの」

「いーや わかるよ。むりさ。
あんた にんげんなんだろう?鳥じゃない」

カラスが あんまりいじわるに言うので
ヘンリーは ついにムッとして 言いました。

〈つづく〉


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