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春だけど、夏みかん

夏みかんをいただいた。
お庭に立派な夏みかんの木があって、そこに豊かに付いた実のいくつかを厳選してもらったものだ。
高枝切りばさみで摘み取ってくれた。取れたてフレッシュな夏みかん。

今はまだ桜が散り始めた春なのに、“夏”みかんとは言い得て妙というものだが、じつはお庭の夏みかんは梅が咲く前の冬、いやそれ以前からたくさん生っていた。そういうこともあるのだろう。

世の中には、この“夏”みかんのように、「○○だけど○○」のようなものが他に存在するのだろうか、と思うが、何も思い浮かばなかった。残念。

「この夏みかんは酸っぱいけれど、砂糖漬けにするとわりといけるよ」

と言われ、その砂糖漬けもごちそうになった。
八朔やグレープフルーツのような酸味の強い柑橘系が元々好きなわたしは、喜んでいただいた。おいしい。

砂糖漬けのレシピを聞いて、いざ作ってみる。
まずは、外側の皮をむいて…
極度の面倒くさがりのわたしは、普段はこんなふうに皮をむかなければ食べられない果物は買わない、食べない。
むくとして、せいぜいバナナかみかんくらいである。
今回は頂きものということで、普段は入らないスイッチがカチッと入った。

むいた瞬間、夏の匂いがした。
さすがは夏みかんである。
次の工程、薄皮をむく、に突入するとまた一段と夏の気配が濃くなった。
弾ける果汁が指先を濡らし、爽やかな香りが鼻孔をくすぐる。
勢い余って、顔にその飛沫を受けると一気に真夏の青空の下に心がワープする。


今、4ついただいたうちの2つをむいて、この文章を書いている。
洗っても消えない夏の匂いが、キーをたたく指先にしっかりと残る。
あと2つ。夏が待っている。

むいたものを保存容器に入れ、砂糖でサンドする。
分量は適当に。
砂糖を大量に使うので、少量で済むように甘みの強い三温糖を使うことにした。含まれるミネラルも、上白糖やグラニュー糖に比べて少しだけ多いらしい。

こうして、1日も置くと浸透圧で夏みかんの果汁が外へ出てくる。
そうして砂糖と混ざり、シロップとなる。
シロップに浸かった夏みかんは置くごとに甘くなる。
置く日数はお好みで。
私は2日置きが好みだった。

「砂糖抜きの炭酸水に、シロップごと入れるとおいしいよ」
という情報も聞き、炭酸水を買ってきた。
さらに夏が増した気がする。
夏みかん、本領を発揮。

シュワシュワと弾ける炭酸と、プチプチとした爽やかな果肉が出会って両思いになった。

そんな夏。(まだ春)

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