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【連載童話】ヘンリーと赤いふうせん8


「わしは 村の外へ行ったことがある。
あの山のむこうがわへな」

ふくらんだふうせんを ヘンリーの手に
にぎらせながら おじいちゃんは 言いました。

「え!?」

ヘンリーはびっくりしてしまい 
ほかに ことばが見つかりません。

「ちょうど おまえさんくらいの としのころさ。
どうしても あの山のむこうへ行ってみたくてな」

「…本当に!?」

ヘンリーはおもわず ふうせんをぎゅうっと
にぎりしめました。
むねのどきどきが 大きく はやくなっていきます。

シュッ、シュッ
おじいちゃんは またしずかに こしをおろすと
こがたなを いそがしく すべらせはじめました。

「あの山のむこうは とおかった」

「…うん…!」

「村の外では おそろしい目にもあった」

「…うん…!」

「つらい思いもしたなぁ」

「…うん…!」

「それでも 行くか?」

ヘンリーは いっぱいにふくらんで
ぷかりとうかぶ ふうせんと
おじいちゃんのかおとを 
かわりばんこに 見つめました。

そうして しばらく考えてから
こう言いました。

「うん!行く!!
行きたいんだ!!」


〈つづく〉


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