夏の遺影 │ 詩
アルミニウムのように光った夜空に大きな鯨たちが泳いでいた、大海をうねり、どこまでも自由に、美しく、わたしはその景色が立ち去るまで見惚れていた
眠りから目が覚めると、それらはまるで夢だったかのように、空は鮮やかな水色に澄み、昨日より幾分か空気が変わったように感じた
あの鯨たちは、夏を喰い、連れ去ったのかもしれない、わたしの中で何かが損なわれた気がした、そして、奪い去られることに、美しさをきっと感じてしまっていたのだ
夜明けの蝉の鳴き声は、レクイエムのようだ
そのやさしさに、きみは少し救われるだろうか
微かな夏の残穢に、わたしは、さよならと呟いた
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