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東京のりもの散歩~いちょうマークの車窓から~16~30

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東京の自治体専門紙、都政新報に掲載されたイラストエッセイを再録しております。
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#都営交通

歩道橋から「お疲れ様」を【東京のりもの散歩~いちょうマークの車窓から29】

 都営浅草線西馬込駅の南口を出て第二京浜国道をしばらく南下すると歩道橋への階段が見えてくる。歩道橋に上ると、眼下には道路、ではなく線路、線路、線路……鉄道好きにはたまらない光景が広がっている。ここは馬込車両検修所。都営浅草線の車両基地である。ある冬の日の早朝、散歩を兼ねて、この歩道橋を訪れてみた。  なぜ冬の日の早朝にこの場所を訪れてみようかと思ったのかというと、とある日の出愛好家の方のブログ記事で紹介されていたからである。鉄道、切手、骨董、アニメ……世の中にはさまざまな

地蔵堀と2尊の地蔵【東京のりもの散歩~いちょうマークの車窓から28】

 所用のため荒川郵便局に足を運んだ。バスの仕事では週に何回も通過する場所だが降りるのは初めてで、所用を終えて明治通りの歩道へ出ると、隣接する荒川警察署との間に、とある空間があることに気がついた。バスの運転席からは目に入らなかったが、「交通安全地蔵尊」と書かれた石の標柱の奥に、台石に乗った石地蔵が鎮座していたのだ。  『荒川区史跡散歩』によると、石地蔵は「地蔵堀の石地蔵」と呼ばれており、その高さは台石ともに約1丈(約3メートル)ほどあるそうである。1740(元文5年)年に浄

唯一無二のエメラルド【東京のりもの散歩~いちょうマークの車窓から27】

 日暮里・舎人ライナーは交通局が運行する新交通システム(動輪にゴムタイヤを使用し、コンピューター制御で無人運転を行う略称AGTと呼ばれる交通システム)で、日暮里から埼玉県境に近い見沼代親水公園までの約9.7キロを結んでいる。開業当初はクロスシート(進行方向に対して直角に設置された座席)が主体の300形車両12編成で運用が始まり、乗車人員の増加とともに300形は現在16編成まで増えている。2015年度には車体を軽量化して全席ロングシート(進行方向に対して平行に設置された座席

帯と都電と百葉箱【東京のりもの散歩~いちょうマークの車窓から24】

 「都電で好きな車両は?」と聞かれたら、私は迷わず8500形と答えるだろう。1990(平成2)年に登場した8500形は、実に28年ぶりとなる新車で、都電の路線が荒川線のみになって以来の新車でもあった。その後2007年の9000形を皮切りに8800形・8900形・7700形が登場し、当時の新車は今では最古参の車両になった。9000形と7700形は外観がレトロ調で旅行をしたような気分に浸れるし、8800形と8900形は未来を予感させるデザインで、心がはずむ。どの車両も個性的だ

祭りのバスは華やかに【東京のりもの散歩~いちょうマークの車窓から23】

 都バスを語る上で、1月18日と9月20日は欠かせない。1月18日は「都バスの日」。1924年のこの日、交通局の前身である東京市電気局が、前年に発生した関東大震災により大打撃を受けた市電の代替輸送機関として乗合バスを開通したことに由来する。私は最初、「都と都バス」の語呂合わせで記念日が決まったものと勘違いしていた。今考えると恥ずかしい。  そして、都バスのマスコットキャラクター「みんくる」が誕生したのも1月18日である。1999年、都バス開通75周年を記念し、一般公募によ

迷った先には招き猫【東京のりもの散歩~いちょうマークの車窓から22】

 バスの運転手という職業に従事して軽く10年以上の歳月が経過した。実のところ、私は根っからの方向音痴である。このように書くと不安を覚える方がいらっしゃるかもしれないが、通常の業務においては、(日々さまざまな出来事が起こるとはいえ)定められた路線を一日に何度も往復することに集中しているので経路を間違えることはない。  仕事を離れたプライベートの時間になると、時折スイッチが切れるのである。  東京を代表する劇場のひとつである明治座。先日、とある舞台を見るために明治座へ足を運ん

梅の印のバスに乗る【東京のりもの散歩~いちょうマークの車窓から21】

 JR青梅駅の改札を出て右へ進むと、都バスの乗り場にたどり着く。以前から梅01系統、玉堂美術館行(循環)のバスに乗車したいと思っていたが、8月の猛暑日にようやく決行することができた。梅01系統は土日・休日にのみ運行される路線で、行き先を示すLEDには梅の印(イラスト)が描かれているのが特徴だ。  青梅駅を発車すると、万年橋で多摩川を渡り、住宅街を進んでいく。吉野まで20分ほどの区間は梅76丙系統と重複する。梅76丙系統は、早朝から夜遅くまで毎時2本から4本の頻度で運行され

境界線でくちばしを【東京のりもの散歩~いちょうマークの車窓から20】

 「橋上駅」という言葉がある。線路を川と見立て、その上にかかる橋の上に設置された改札口から入場し、各方面のプラットホームに階段やエレベータで下りる仕組みとなっている駅のことである。この言葉自体は広く知られているのではなかろうか。  都営新宿線の東大島駅は橋の上にあるが、いわゆる橋上駅ではない。跨線橋の上に駅舎がある一般的な橋上駅とは異なり、河川に架かる、本来の意味での橋の上に駅があるのだ。早朝から深夜まで多くの電車が安全に停車し、発車する場所は、一級河川・旧中川の真上。プ

その終点にあったもの【東京のりもの散歩~いちょうマークの車窓から19】

 都バスの都02系統は、大塚駅前から錦糸町駅前を結ぶ、片道10キロ程度の路線である。ほとんどの便は錦糸町駅前行きとなっているが、大塚二丁目行き、東京ドームシティ行き、春日駅前行きという区間便も存在する。中でも大塚二丁目行きは、平日なら1日に20本以上が運行されており(土日祝日はやや本数が少ない)、午前中から夜遅くまで、その行き先を目にする機会は多い。大塚二丁目付近は多くの教育機関が集まる文教地区であり、新型コロナウイルス感染拡大にともなう休校措置が実施される以前には、特に

運転席で笑顔を放つ【東京のりもの散歩~いちょうマークの車窓から18】

「都電おもいで広場」の休場期間が延長になりました。詳しくは下記のリンクをご覧ください。 都電荒川線のニュース【お知らせ】2020年4月9日 東京都交通局 新型コロナウイルス感染症への対応に伴う施設の臨時休場について  都電荒川線の荒川車庫前で降りると、荒川電車営業所に隣接する「都電おもいで広場」が見えてくる。開場しているのは、年末年始を除く土曜・日曜、祝日のみだが、ここでは、昭和時代に活躍した2両の車両を間近に見て、車内に入ることもできる。  展示されているのは、75

動物園の超特急【東京のりもの散歩~いちょうマークの車窓から16】

 上野動物園モノレール(上野懸垂線)の開業当時の模様を映した『モノレール 懸垂電車』という記録映画がある。  「東京名物の一つとして、空中を走る電車、モノレールが誕生しました」。軽快な音楽とともに、宮田輝アナウンサーの声がモノクロの画面に響く。 「実験用として作られたこの小型モノレールは、骨組みは飛行機のモノコック構造に準じたもので、軽くて強いポリエステルを使い、目方は6トンに過ぎません」。そこに映るのは、流線形のモノレール。開業当時に運行されていた、初代H形車両である。