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【東大生就活体験記③ 文系東大院生~絶対に参考にしてはいけない就活~】

こんにちは、東京大学ピアサポートルームのキャリアチームです。
キャリアチームでは東大生が自分のキャリアについて考える際の参考にしていただくため、東大生の就活や進学選択に関する体験談を投稿しています。
今回は東大生就活体験記シリーズ第3弾です!

教育学研究科2年、人材サービス業内定(職種:IT系総合職)
主に見ていた業界:教育、広告、Web制作、人材サービス

○タイトルに "参考にしてはいけない"とありますが、どういうことでしょうか
 私の就職活動は、数多くの反省点からとても難航しました。私の体験を述べていきますが、とても褒められたものではありません。このコラムを読んでくださっている皆さんなら大丈夫かと思いますが、どうか「このような例もあるのだ」という気持ちで読んで、私の経験を繰り返さないでほしい!という思いでこのタイトルをつけました。

○就活を始めた経緯と時期を教えてください
 私の場合、大学院に進学した時点で修了後に就職する可能性と博士課程に進学する可能性を6:4くらいで想定していました。そこで、どちらの可能性も捨てないまま就職活動をしようと考えていました。ただ、私は同時に「大学院に入ったのに早くから就活に時間を割くのはおかしい」との思いも持っていたため動き出しは遅い方でした。修士の場合は1年目の夏から就職活動を始める方が多いと聞いてはいましたが、学びを深めるためにわざわざ大学院に入学したのに、いきなり多くの時間を就職活動に割くことへのモヤモヤが拭えなかったんです。その後秋に体調を崩してしまったこともあり、1年次の冬にようやく業界研究やインターンへの参加を始めました。またその頃には修了時に就職することをほぼ決意していました。

○就活の軸・ビジョンは何でしたか
 私の就活の軸は、「自分の強みが活かせること」でした。学業面での強みに関しては、私の大学院での研究領域は必ずしも職業に直結しないものだったので「専攻分野と少しでもかかわりのある仕事であればアピールしやすいのでは」と考えて応募先を絞っていました。また後述しますが、就活の後半からは自分のより一般的な強みに着目するようになり、「それを職業に結びつけるとしたらどのような業界が良いのだろうか」という思考で応募する企業を選んでいきました。
 その上で就活全体を通して一番大切にしていたことは、就活の中で一切の嘘をつかないことです。「自分を誤魔化してよく見せて採用されたならば、入社後もその誤魔化した姿を期待されて辛くなってしまうはずだ」「ありのままの自分で採用された企業であれば、入社後も無理することなく働ける可能性が高い」という考えからでした。この姿勢を貫いたことで不採用となった企業ももちろんありますが、結果的には私の正直さを評価してくださった企業に内定をいただけたので間違ってはいなかったと思います。

○就活初期の様子について聞かせてください
 3月時点で見繕った複数の企業にエントリーをして選考が始まりましたが、そこでかなりの苦戦を強いられました。エントリーシートや1次面接の段階で不採用となることも珍しくありませんでした。次々と消えていく選択肢に焦りながら、新たな企業のリサーチも進め、選考に落ちてはまた別の選考に申し込むという日々が4ヵ月ほど続きました。

○選考過程ではどのような点でつまずきを感じましたか
 面接の回数をこなすうちに、就活で求められている自己アピールと私が行ってきた自己呈示との間にズレがあると感じ始めました。私は自分の一番の強みをこれまでに大学で触れてきた学問領域と結びつけて語ることが多かったのですが、面接官である人事の方々からすれば実際の仕事内容との細かいミスマッチが目立ったり、「一緒に働く仲間」としての具体的な魅力に欠けて見えたりしたのかなと今は思います。
 面接を繰り返す中で感じたのは、まず企業や業界によっては「東大」の名前は壁を感じさせかねないということ、そして私のように大学院での専門と職業との接点が見えずらい場合はより一層「なぜ大学院まで出て、この分野を選んだのか」という疑問を持たれやすいということです。私は自分の経歴を何ら特別視していなかったので、特に東大生や院生を多く採用している企業をターゲットとしてはいませんでしたし、専攻分野と少しでもかかわりがある業種であればそれでいいと考えていました。しかし私自身がどう思っていようと、人事の方々の目線に立つとどうしても先入観を持ってしまったり、私が語った大学院までの学問のモチベーションと仕事内容とのズレの部分が気になったりせざるを得なかったというのもまた事実なのだと思います。
 実際に面接において「なぜわざわざうちに?」「もっと東大生の多い企業に行った方が働きやすいのでは?」と暗に伝えられたことが幾度となくありました。そのたびに私は自分自身の考えに基づいて実直な回答を心掛けていましたが、そのまま不採用となったケースもありました。自分が純粋に選んできた学問領域や経歴が就活において足枷となってしまっていると感じたときは本当に辛く悔しかったのを覚えています。大学院って何なのだろう、就活って何なのだろうと思い悩む中で、内定が出ないまま時間だけが刻々と過ぎていきました。

○就活途中でやり方を変えたところはありますか
 先ほど述べたようなつまずきを感じてすぐ、既に就活を終えていた友人らに助言を求めて自己分析をやり直しました。そのときに大切だと思ったのは、「他人の視点を借りる」ということでした。自分でも把握できていない自分の強みを親しい他人から指摘してもらうのは新たな発見がありましたし、そのような「他人から見える」点が就活においては大事な評価ポイントになるのかなと後々思い始めました。追加の自己分析やそれまでの就活で得た実感を踏まえて自己アピールの内容も徐々に変わっていき、私の場合は無理に学業に結びついた強みを語るよりはより一般的な「人間としての強み(”自分の推しポイント”)」を押し出した方がよいと考えるようになっていきました。
 それに伴って、申し込む業界の見直しも行いました。初めは自分の研究分野と直接的ではないにしても少しでもつながりがある業界の方が学業面からのアピールがしやすいだろうと考えて優先して見ていました。しかし後半からは完全に割り切って、”自分の推しポイント(より一般的な強み)”が活きるような業種をより広く探すようにしました。

○就活が長引いたことでどのような苦労がありましたか
 私の就活は想定よりもずっと長引いたので、8月を迎えた頃には「ここまで長引いてしまうと修士論文に影響が出かねない」という焦りがありました。私は修論用の実験研究の計画を立てていましたが、就活の日程は激しく変動するので1週間後の予定も立てられないことが常でした。その状況で実験参加者を募るわけにもいかず、「これ以上実験が遅くなったら修論の執筆が間に合わないかもしれない」「だが、修論が書けたところで来春の就職先がなければ元も子もない」「だが、内定を得られたところで修論が書けなければ...」というギリギリのせめぎあいが続きました。
 そのような状況の中で気持ちだけは落としてはいけないと思い、極力焦らないように着実に修論の準備も進めつつ、周囲と比べないように心掛けて日々を過ごしていました。同時に、もし万が一このまま内定がもらえなかった場合にどう対応するかという”最悪のケース”の想定もしていました。
 ギリギリの状態で粘り続けた結果、9月の頭になって初めての内定をいただき、その後9月半ばに2社目の内定をいただいた企業を選択して長かった就職活動を終えました。安堵感も束の間でその直後から実験を開始し、修士論文へとギアを急転換しました。これ以上長引いていたらと思うと、未だに少し怖いです。

○内定承諾の決め手は何でしたか
 最終的に内定先の企業を選んだ理由は、私自身の就活のテーマであった「嘘をつかない」ということを一番に評価してくれたことでした。選考の段階から私自身のこれまでの経歴も含めて興味を持ってくれた点が印象に残っていましたし、私の正直な質問や回答を興味を持って受け取って真摯に対応してくれた点にも信頼を置けると思いました。かなり回り道をしましたし、当初思い描いていたものとは異なる業界への就職となりましたが、最終的には自分とマッチする企業の方に評価していただけたので良かったのかなと今は思っています。この出会いに感謝をして、自分のキャリアを積み重ねていきたいです。

○就活を終えた今、後悔していることはありますか
 私の就活の苦戦は、総じて時間の見込みが甘かったことに起因すると思います。時間的に追い込まれていけばいくほど心身の健康にも悪影響ですし、企業側の”見る目”も厳しくなってハードルが上がっていきます(「この時期になっても内定をもらえていないということは何かしらの理由があるのでは」という憶測が生まれてしまうため)。そのような現状に直面すると、もう少し早くから自己分析や面接の練習をしたりインターンに参加したりしておけばこんなに苦戦することはなかったのではないかと思わざるを得ません。しかし、するとより多くの時間を就活に割かねばならず「何のために大学院に進学したのだろう」というモヤモヤを募らせていたのではないかとも思います。ですから、私の場合初期から多くの時間を就活に割くのは現実的ではなかったのかもしれません。
 しかし、その中でも絶対にもっと予め準備ができたのではと思う点もあります。ひとつは情報収集を通して志望業界の幅を広げておくことです。私は当初志望業界をかなり絞って見ていたのですが、結果として序盤でつまづきとミスマッチを感じた段階で既に限られた選択肢の多くを失い、時間が経つにつれて申し込める企業もどんどんと減っていってしまうという悪循環に巻き込まれてしまいました。自分のモチベーションや強みと照らし合わせて「この業界も面白そう」という選択肢の幅をもう少し広げておくことができれば、少なからず余裕を持ってより多くの企業にトライすることができたのではないかと思っています。
 もうひとつは、周囲のサポートを求めることです。私は自分の周りに同じ文系の大学院生で就活をしている仲間がおらず、コロナ禍も相まって周囲の就活の実態がいまいち分からないままほとんどの期間をひとりで悩み苦しむことになってしまいました。時間が経てば経つほど自分の就活が遅れを取っているという自覚から周囲のサポートを求めることも気が引け始め、これも完全なる悪循環に陥ることとなりました。もう少し早くから就活仲間を見つけることができていれば情報収集も楽だったのではないか、もう少し早く就活支援のサービスに助言を求めたりしていれば院生としての就活のやり方や合致する業界・自己アピールの仕方などが分かった状態で就活に臨めたのではないかと思います。

○最後に後輩へのメッセージをお願いします
 先ほどの内容にも関わりますが、とにかく「ひとりでやらないでください」。私の場合はコロナ禍で、身近に就職活動をする文系の大学院生の仲間がいませんでした。結果、時間的な見込みが甘かったり対策が不十分だったりと多くの弊害が出ました。だから、絶対にひとりでやらないこと。仲間を見つけてください。もし身近に仲間がいなければ、学内外の就活支援サービスなどを駆使して外部からの助言をもらってください。そのタイミングは早ければ早い方が後が楽になると思います。
 そして、院生としての自分も大切にしてあげてください。私自身が院進後早い段階で就活を始めることに抵抗があったように、人それぞれ自分が就活と学業に費やしたい労力・時間のバランスは違うと思います。その落としどころを見つけていってください。どちらを蔑ろにしても、将来の自分を苦しめることになりかねないので、どうか慎重に。あなたにとって、大学院とはどのような場所で何のために在学しているのか。あなたにとって、就職活動とはどのような意味を持っていて何を求めているのか。それらを考えられる時間があるうちにじっくりと考えてください。
 ここまで、決して参考にしてはいけない就活を終えた私の体験談を読んでくださってありがとうございます。これを読んでくださったあなたが少しでも苦しむことなく、有意義な就活を送れるように応援しています!

○執筆日
2022年2月15日

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