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「自分を試したい」と、渡米へ。異文化の中での研究生活

「私を変えたあの時、あの場所」

~Vol.4 米国/マサチューセッツ工科大学 (MIT) 生物学部
米国 スクリプス(Scripps)研究所 分子生物学部

本コーナーでは、東京大学にゆかりのある先生方から海外経験談をお聞きし、紹介していきます。

今回は、若杉 桂輔先生に、博士研究員やリサーチ・アソシエート時代のお話を伺います。取り上げた場所については こちら から。

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「思う存分研究し、自分を試したい」と、留学へ

―まずは留学経緯からお聞かせください。

若杉先生: 1996年に大学院博士後期課程を修了し、博士号を取得した後、「世界の最先端の研究環境で思う存分研究を行い、自分を試したい」と思い、同年の4月に米国マサチューセッツ工科大学 (MIT) Paul Schimmel教授の研究室でポスドク (博士研究員/Postdoctoral Fellow)として働くために渡米しました。

MITはケンブリッジにあり、キャンパスのある河畔の対岸には、重厚で趣のあるボストンの街並みが広がり、キャンパス内はノーベル賞受賞者も多く、アカデミックな雰囲気でした。

写真3_MIT生物学部の建物を撮影

▲MIT生物学部の当時の様子。

写真2_1996年にMITのキャンパスで私を撮影

▲MITのキャンパスにて。1996年撮影。


初の海外生活、周囲の人々に支えてもらった

―留学先で苦労などはありましたか。

若杉先生: 初めての海外での生活であり、生活のセットアップに苦労しました。

渡米してから最初の1カ月間、研究室の秘書の方が手配してくれたゲストハウスに宿泊し、ゲストハウスの管理人には、銀行口座の開設のために一緒に銀行まで来てもらったり、日常生活に関するさまざまな相談に乗ってもらったり、大変お世話になりました。

写真4_1996年にMIT Schimmel研究室の個人スペースで私を撮影

▲1996年にMIT Schimmel研究室の個人スペースにて撮影。


―しかし、その後、住居や研究場所を移転する必要があったそうですね。

若杉先生: 渡米後1年ほど経った1997年8月、研究室がMITからScripps研究所に移動することになりました。Scripps研究所は、世界で最も評価の高い研究所であり、カリフォルニア南端近くの高級リゾート地ラホヤにあります。ケンブリッジからラホヤへの引っ越しで、生活環境を整えることも大変でした。


―1年足らずで引っ越しとは、あわただしそうです…。

若杉先生: MITからScripps研究所への研究室の移動は、アメリカの北東の端から南西の端への引っ越しでもありました。そのため、Schimmel研究室のポスドク仲間と、アパート探しやカリフォルニアで生活するには無くてはならない車の運転免許の取得など、一緒に協力して行いました。

Scripps研究所では、その後1999年9月までリサーチ・アソシエートとして勤務しました。

写真5_Scripps研究所のあるラホヤの海岸を撮影 (1)
写真6_Scripps研究所のあるラホヤの海岸を撮影 (2)

▲いずれも、Scripps研究所のあるラホヤの海岸を撮影。


タフさが鍛えられたコミュニケーション

―海外生活の中で、気をつけていたことなどはありますか?

若杉先生: Schimmel研究室には、中国、韓国、インド、米国、中南米、イギリス、フランス、スペインなど世界各国出身のポスドクが10名以上在籍していました。文化的な違いも多々あり、言葉で言って表現しないと相手の思いがわからず意思疎通できないため、私は、“してほしいこと”をはっきりと言うように心掛けました。また、自分が困らないことであれば、細かいことは言わず、気にしないようにしました。これらは、海外など多様な考え方の中で生活するうえで大事なテクニックだと思います。

相手と違う意見を主張することは、かなりのエネルギーを使うものであり、タフさなどが鍛えられました。


主体的に考え、研究し、実績につなげる

―なるほど。では、研究面では留学で変化はありましたか?

若杉先生: 留学により、主体的にものを考え、研究を進めていく力が身につきました。

留学中に私は、細胞内で働くタンパク質が、細胞外で細胞間の情報伝達の働きも併せ持っていることを発見し、Science誌に論文を発表しました。また、取得した特許の被引用回数が2012~2016年のバイオテクノロジーの分野で世界第3位になったと2017年のNature Biotechnology誌で取り上げられました。

帰国後も、タンパク質の新奇な機能を探索する研究を続けています。意外な発見は隠れているものであり、旺盛な好奇心と思考力、注意深い洞察力などが必要だと感じています。

写真7_2016年に開催されたSchimmel先生の誕生日パーティーにて、私とSchimmel先生を撮影

▲2016年に開催されたSchimmel先生の誕生日パーティーにて。Schimmel先生と若杉先生。


―ちなみに、留学のこぼれ話などありますか?

若杉先生: 研究者間の英会話に関しては、しっかり話を聞き、理解しようとしてくれるので、心配する必要はなかったのですが、一般の会話ではトラブルもありました。ハムサンドを注文した際、なかなか通じず、“Ham”を何度か繰り返すと、“Half Ham”と間違えたらしく、パン半分がゴミ箱に捨てられたことがありました。

―それはショック……!!


チャレンジを。そして、タフさを鍛えて

―では最後に、留学を希望している学生へ、メッセージをいただけますか?

若杉先生: 留学によって、視野が広がり、ものの見方が変わると思います。積極的に人と交流し、チャレンジしてほしいと思います。

海外で暮らしていると、さまざまな要望・手続きなどの物事が一度で済むことはまずありません。何をするにも最初から3度くらいはかかると覚悟して生活すると、大して苦労になりません。「タフさ」も鍛えてください。

―ありがとうございました!


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