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バックパッカーで世界に出て。自ら体験し、成長を

「私を変えたあの時、あの場所」

~Vol.9 タイ、カンボジアなど

本コーナーでは、東京大学にゆかりのある先生方から海外経験談をお聞きし、紹介していきます。

今回は、佐藤 安信先生にバックパックをしていた当時のご体験をお伺いしました。取り上げた場所については こちら から。

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世界の実情を自ら見るためにバックパックへ

―かつてバックパックをされたとのことですが、経緯を教えてください。

佐藤先生: 1984年に弁護士資格を取得後、バックパックで1年かけて世界を旅することにして、フィリピン、中国、タイ、ネパール、インド、パキスタンを回りました。弁護士として活動する上で、世界の実情を自ら見て、体験して、自分を発見するということでもあり、アジアでは現地の人権と日本の関わりなどの調査もしました。


―バックパックで大変な体験も多くされたそうですね。

佐藤先生: フィリピンでは、空港で警察官に騙されて白タクに乗り、路上での外貨交換で騙されました。タイのカンボジア難民キャンプにNGOボランティアとして入り、そこで、国際社会の支援のためにかえって行き場をなくし、苦悩する難民を目の当たりにしました。インドでは腸チフスにかかり、危うく死にかけるところでした。


人権担当官としてカンボジアに赴任。感じた人権や法制度の限界

―その後、国際弁護士を務められたり、国際機関に従事されたりしていますね。

佐藤先生: 1987年には、日本定住のストレスから妻子四人を殺害した、カンボジア難民の弁護をしました。

また、1992年から1993年に国際連合カンボジア暫定統治機構(UNTAC)人権担当官としてカンボジアに赴任し、三度ほど命の危機に瀕する体験をしました。しかし、法も司法も崩壊した現場では何もできず、助けを求める村人をなかば見捨てるような形で任務を終了し、帰国しなければいけませんでした。

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▲1993年初め頃、UNTACでカンボジアのコンポンチュナン州の赴任地にて。中央が佐藤先生。「トンレサップ湖というカンボジア最大の湖で、村人が武装組織クメールルージュに襲われて虐殺されたとの情報があり、国連海軍のニュージーランド将校たちとモーターボートで捜査に行ったときのものです。この後、既に埋葬された死体を素手で掘り起こし、確認したのち、クメールルージュの支配地域に入った途端、AK47などで銃撃され、慌てて戻りました」と佐藤先生。


―ご帰国されたときのお気持ちや、帰国後の活動について教えてください。

佐藤先生: 途上国では汚職が横行していること、難民キャンプでは、国際社会の支援の無責任さや、日本での難民受け入れの困難さを知りました。また、難民が帰還できる国造りを目指したものの、経済力や雇用がなくては人権や法制度すら無意味であることを悟りました。

帰国後は、国際金融法専門事務所に入り、途上国などへの日本企業の大型投資案件などを担当しました。その後、欧州復興開発銀行(EBRD)に出向し、旧ソ連・東欧の市場経済移行のための法整備支援を立ち上げましたが、法制度が社会に根づくには現地の実情に適合する必要があることから、ロンドン大学博士課程で研究し、大学に転向しました。


自ら体験し、苦悩することで成長を

―多くの体験を経て、感じられていることをお教えください。

佐藤先生: 失敗から、学ぶことの重要さを学びました。座学で人の言ったことのみを真に受けるのではなく、自ら体験し、リスクを冒し、苦悩することでしか成長はないと思います。人生、どん底と思ったときこそ、最大のチャンスです。「涙とともにパンを齧ったものでなければ、人生の本当の味はわからない。」というゲーテの金言が好きです。海外では多くの友人もでき、言葉は通じなくとも、心を開いて付き合えば理解し合えると思え、自信やリーダーシップも持てるようになりました。海外では日本人離れした国際人と言われ、日本では逆に変人扱いされるようになりました。


―海外に出たからこそ、得られたと思うものは何ですか。

佐藤先生: 海外での体験がなければ本学で教鞭を執ることもなかったはずです。今、多くの留学生や海外の研究者や実務者とのネットワークができているのは海外経験の賜物です。現在の妻ともめぐり会わなかったでしょうし、ジェンダーにも無頓着だったはずです。

異なった考えや価値観の友人を持てたことで、常に自己を相対化し、複眼的に物事を観察して考えることができるようになりました。日本の常識や慣習の問題も見え、国内の外国人差別などにも敏感になると同時に、日本のよさ、美しさ、素晴らしさにも気づき、剣道を海外で教えるため稽古をしています。


挫折を飛躍に変え、道を切り開いて

―最後に、グローバルな活躍を目指す学生にメッセージをお願いします。

佐藤先生: リスクを取ることを恐れず、面白いと思えることをするために、楽しく努力することが大事ですね。人間関係においては、できるだけ本音で付き合える人と激論を交わすことを恐れず、常に相手から学ぶ姿勢を忘れないことです。私はバックパックで放浪しましたが、旅は人を成長させるし、それこそが人生だと思います。

実は、1988から1989年のハーバードロースクール留学中に、妻が出ていき、1歳にならない息子とも会えなくなるという人生最大の苦悩を味わったことがあります。しかしその後、国連で今の妻とめぐり会い、アフガニスタンまで追いかけていったことで、国連でも多くの友人ができました。挫折、失敗こそ、大きな飛躍や新たな人生の幕開けと思い、自分流の道を切り開いてほしいです。

―ありがとうございました!

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