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東京大学情報基盤センター nodes vol.1

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2022年3月発行の東京大学情報基盤センターの広報誌「nodes」創刊号です。 https://www.itc.u-tokyo.ac.jp/public/nodes にて、ご意見… もっと読む
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記事一覧

nodes vol.1 (全文一気読み版)

創刊にあたって 自らの成果を誇る広報誌としてではなく、日ごろ科学雑誌・科学番組に親しまれている方、中学生・高校生、技術者の方など、科学技術に感度の高い方々に、私たちや周りの人々が生み出す研究・開発・サービスの姿をお伝えする。そして、科学技術のいまとこれからを作り、紡ぎ、繋いでいく。そんな媒体として、「nodes」は生まれました。 英語で「結び目」を意味する語であるnode(ノード)は、ICT(情報技術)の世界においては特別な意味を持ちます。複雑で重層的なネットワークに接続

創刊にあたって

自らの成果を誇る広報誌としてではなく、日ごろ科学雑誌・科学番組に親しまれている方、中学生・高校生、技術者の方など、科学技術に感度の高い方々に、私たちや周りの人々が生み出す研究・開発・サービスの姿をお伝えする。そして、科学技術のいまとこれからを作り、紡ぎ、繋いでいく。そんな媒体として、「nodes」は生まれました。 英語で「結び目」を意味する語であるnode(ノード)は、ICT(情報技術)の世界においては特別な意味を持ちます。複雑で重層的なネットワークに接続されて機能する電子

特集 いま、スーパーコンピュータでCOVID-19に立ち向かう

スーパーコンピュータで人類と地球を護る KEY POINTS ▶ COVID-19に関する研究のため、スパコンの利用枠が迅速に用意された。 ▶ 大学のスパコンは、「開かれたスパコン」として多くの分野で活用される。 ▶ 次世代スパコンはサイバー・フィジカル空間の融合でSociety5.0実現を目指す。  2020年春に世界がコロナ禍に突入して以降、多くの研究者が問題解決のために何らかの貢献をすべく様々な活動を実施してきました。スーパーコンピュータ(スパコン)を使用した新型コ

スパコンで薬剤の効果を探る

2020年度 COVID-19対応HPCI臨時公募採択課題紹介 計算科学が解明するCOVID-19の理解と対策 採択課題 新型コロナウイルスの主要プロテアーゼに関するフラグメント分子軌道計算 スパコンで薬剤の効果を探る  2020年度の特別課題で、JCAHPC※1のOakforest-PACSを使い、新型コロナウイルスの主要(メイン)プロテアーゼと薬剤候補分子の複合体のシミュレーションを行いました。計算は、FMO(フラグメント分子軌道)法に拠ります。FMO法は量子力学な

見えない飛沫を可視化する

2020年度 COVID-19対応HPCI臨時公募採択課題紹介 計算科学が解明するCOVID-19の理解と対策 採択課題 室内環境におけるウイルス飛沫感染の予測とその対策:富岳大規模解析に向けたケーススタディ 見えない飛沫を可視化する  私の専門は流体のシミュレーションです。対する理解と防御の重要性を伝えなければ」とCOVID-19の流行が始まった時、感染症に対して感覚的な言説が多くありました。これに対して「シミュレーションをして社会に発信する必要がある。飛沫やエアロゾ

全学授業オンライン化で「ユーザー目線の大切さ」を痛感

nodesの光明全学授業オンライン化で「ユーザー目線の大切さ」を痛感  我々、情報メディア教育研究部門は、教員が授業の課題や資料を配布したりテストをしたりできる「学習管理システム(ITC-LMS)」の提供や「教育用計算機システム(ECCS)」の運用などをやっています。授業ではかなりの台数の端末が必要になりますが、各授業で同じ環境が必要となるため、全学に1500台程度の端末を設置しています。他にもGoogle社のGoogle Workspace for Educationのア

30秒ごとに更新する「ゲリラ豪雨予測システム」を開発

飛翔するnodes30秒ごとに更新する「ゲリラ豪雨予測システム」を開発これまでの天気予報システムではゲリラ豪雨を正確に予測することが困難でした。  まず、ゲリラ豪雨を「観る」ことができないと予測ができません。従来のレーダは「5分毎」の気象データを測定できます。パラパラ漫画のように連続させて未来の形を予測するのですが、突発的に成長するゲリラ豪雨の予測には、5分では間隔が長すぎます。最新の「フェーズドアレイ気象レーダ」は従来の100倍のデータを一度に取得できて、「30秒毎」に取得

「冬眠するブラックホール」の実態を解明

飛翔するnodes「冬眠するブラックホール」の実態を解明  銀河は星やガス、ダークマターなどが集まってできている天体です。ほとんどの銀河の中心には,太陽質量の10万倍を超える大質量ブラックホールがあります。ブラックホールとは、「強い重力によって光ですら脱出できない天体」です。銀河中心ブラックホールの質量と母銀河の物理量との間には強い相関関係があることが知られており、お互いに影響を及ぼしあいながら成長(共進化)してきたのだと考えられています。だから銀河とブラックホールを考える

動物の鳴き声の変化を可視化

nodesのひろがり動物の鳴き声の変化を可視化  専門は情報デザインと野生動物IoTです。これは環境問題の解決支援として、情報空間と生態系が分かちがたく一体化し、全体として高度な情報処理を実現するシステムの研究です。具体的には、福島第一原発から10キロ離れた立入禁止区域内の森に生息する野生動物の鳴き声の長期変化の可視化です。「野生動物間センサ・ネットワーク機構」を用いています。データ解析はチェルノブイリ原発事故対応を行うフランスの研究機関と共同で実施しています。この立入禁止

真の教育とは何か

nodesのひろがり真の教育とは何か   新任教員の声として自由に作文をしてくださいということだったので、ここでは私が最近考えている、「真の教育とは何か」ということについて書いてみたいと思います。  私は情報基盤センターデータ科学研究部門に昨年3月に着任しましたが、本学の教員としては2013年から活動しています。当初助教として学生の研究指導をしていた頃は、生の対話の中で「人を教え、育てる」という言葉通りの教育の実感があったのですが、前期・後期課程の講義を担当するようになり、

野生動物にセンサーを装着

nodesのひろがり野生動物にセンサーを装着  現在行っている研究のひとつは、野生動物装着型センサーネットワークによる情報収集機構の開発です。野生動物にセンサーを運搬してもらうことで、野生動物の行動の記録や、人間が容易に侵入できない自然環境での情報収集の達成を目的とし進めています。自然環境には電気や通信のインフラがありません。そのような環境でも長期間にわたって情報収集が実現できるよう、さまざまなアイデアを模索しています。例えば、野生動物同士が遭遇した際にその仕草を検出してデ

センターの研究をバズらせるために

nodesのひろがりセンターの研究をバズらせるために  2021年4月に広報担当に着任した私の最初の大きな仕事が広報誌のリニューアルで、産みの苦しみを噛み締めているところですが、ようやくその形が見えてきてワクワクしています。お手元に届いた「 nodes」、いかがでしょう ? 皆様のご感想をぜひお聞かせください。  センターの新しいnodeとなった(なりたい ?)私の 使命は、第一にはセンターの研究を広報することだと思っています。情報基盤センター、外部からは教育用システムや事

編集後記 (nodes vol.1)

 新型コロナウイルスが猛威を振るう 2021年、nodesは産声を上げました。この「コロナ禍」の中、メディアや SNSからこれまでになく感じたのは、あまりに巨大な科学技術への不信、科学技術の軽視でした。しかし、ワクチンや治療薬の開発、聞いたこともないような分野の専門家の専門知が、人々に希望を与え、社会に光明をもたらしています。 21世紀も半ばを迎えるような時代にあって、私たちは再び科学技術との向き合い方を模索しています。  センターのプレゼンスを社会にアピールするという広報