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【ショートショート】仕返しう○こ②

(前回:仕返しう○こ①)

 さっきまで、巻き巻きう○こちゃんがあったステージの上で僕は、「生きてりゃいいのさ~♪ ロケンロー♪」

 なんて叫んでいる。う○こちゃんがあったことは僕とミミしか知らない。誰にも言えるわけがない。ふとミミに目をやると、ミミが僕の方を見て微笑んだ。僕は歌いながら心が張り裂けそうだった。もしかしたら恋? そんなわけがない。すべてはう○こちゃんのせいだ。

 なんとかライブは無事に終了し、バンド仲間と近くのバーに打ち上げに出かけた。カウンターに座った僕の隣にはバンドメンバーのドラマーが座った。彼はわざわざ蘇州から来てくれている。その彼が乾杯をした後に話しかけてこた。

「知ってる? 昔無錫で日本料理をやっていた宮本さんが蘇州で店出したの?」
「ああ、知ってるよ。洋食系でしょ? でももう一年くらいは経つでしょう?」
「そうだったな。それくらいにはなるかな。蘇州でも洋食屋をしてるんだけど、最近従業員が交通事故で死んじゃったんだって」

「えっ!? もしかして出勤時とか?」
「いや、休みの日だったらしいから、証明もできるし、店側に責任はないんだけど」
「そうか。悪い話だけど、店は関係なくて良かったな」
「そうなんだけど、問題はこれからでね、田舎から親が出て来て、補償金を払えって言ってくるんだって」
「うわあ、やだなあ。それも中国あるあるだけどさ」

「一応さ、香典として五千元くらいは払ったらしいし、補償金を支払う必要はないからさ、しばらく放っておいたんだって。そしたらね、一週間くらい経って、親族らしい人たちが汚い格好して店の前にずっといるんだって。それで客が入って来なくなっちゃってね」

「親族が大勢来るってのも中国あるあるだけど、実際にやられると困るよな」
「それで、彼らが諦めるまで仕方なく店を休みにしたんだよ」
「営業妨害だね。警察には言ったの?」
「うん。言ったって言ってた。ま、その効果かどうかはわからないけど、人は来なくなったみたい」
「ほう、それは良かった」「でもね、店のドアの前に、毎朝う○こちゃんがどっさり置かれているらしんだ」

「う、う、う○こちゃん!」
 僕は息が止まりそうだった。

「いやだよねえ、う○こちゃんは。俺はしばらく行けないよ。どっさりあったう○こちゃんのところ通るの。思い出しちゃうし」

 ステージの上にう○こちゃんをされた話は誰にも言わないでおこうと強く思ってはいたが、アルコールの勢いも手伝って、ステージの上にう○こちゃんがあったことをドラマーに途中まで話してしまった。ドラマーが絶句をし、話を途中で遮ってしまったのだ。そして、

「えっ!? ミミちゃんう○こちゃん? それなら見てみたかった」
 と悔しさを滲ませた。こいつが変態であったことを忘れていた。面倒くさいので、もうミミちゃんのう○こちゃんということにしておいた。

 翌週、ライブに来たドラマーがステージに上がると、
「う~ん。ほんのり漂うミミちゃんの香り」
 と喜びながら深呼吸をしていた。

(終わり)


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