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ショートショート:LINEで借金

「先輩、お疲れ様です!」
「おう。久しぶりだな。こうして飲むのは」

 焼き鳥屋で大学時代の後輩と飲んでいる。数ヶ月前のことだが思い出したことがあり、後輩に聞いてみた。

「そう言えば、この前知らない人からお前のことについてLINEが来てたぞ。『この人はお金を返さない人だから注意してください』的な。無視したけど、なんかあったのか?」

「先輩、すみません。ご迷惑掛けちゃって。大丈夫ですんで、無視しておいてくれますか?」

「変なところから借金でもしてるのか?」
「いや、実はちょっと急な入り用があって、LINEでお金を借りたんです」
「LINEでお金を借りた?」
「LINEというか、LINEを介して個人からなんですけどね」
「それって危ないって言うか、怪しくないの?」
「結果、怪しいんですけど、その時は、ほら、消費者金融よりはいいかな? と思って」

 後輩はLINEで見ず知らずの個人から借金をしたようだ。

「いくら借りたの?」
「五万円です。毎月一万を五ヶ月で返済する契約でした。利子がなかったんです。もちろん期日を越えると利子が増えるというか、あるんですが、返せると思ったんで」

「利子不要か。それで借りちゃったと」
「それが、期日までに送っても受け取らないんですよ」
「受け取らない?」
「そうなんです。今になってわかったんですが、わざと受け取らないんですよ」
「ほう。わざと受け取らない。なんで?」
「利息が貯まるからです」
「なるほど。なんか凄いな」

「送ったって言っても取り合わないし、それがもう何ヵ月も続いたんで、もう無視することにしたら、LINEでみんなに知られるハメになってしまいました。本当にすみません」

「そうか。なんか面倒だな。でもどうして俺のLINEを知ってるの?」
「そこなんです。本当に先輩に謝らないといけないのは。LINE友達のIDを担保に取られたんです。だから無利子だったんです」

「なるほどぉ。でもそれって犯罪にならないのか?」
「無断でIDを他人に教えることですか? 私もそう思ったので、そいつに聞いてみたんです。そしたら当人に被害が及ばなければ犯罪にはならないし、あくまでも担保だと言うので。本当にごめんなさい」
「バカとしか言いようがないけど、いい勉強になったよ」

「先輩! お詫びに今日は奢らせてください!」
「LINE Payでか?」
「はい!」

(完)

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