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兎がほざく

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ショート•エッセイ、140字以内。毎日投稿、どこまで続く?
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2022年12月の記事一覧

兎がほざく639

兎がほざく639

ハグをしあうと心身の健康によいという話を読んだことがあります。

人の体温と湿り気が触覚を通じて伝わると安心につながるみたいです。

しかしそんな機会がある人はごく少数でしょう。

今のぼくは相手を探し回る代わりに独りでコーヒーで一服してそれなりに安心したいです。

兎がほざく638

兎がほざく638

素晴らしい美女が現れて、あなたはわたしの言うとおりにしなさいと言ったとします。

その人が美しいことを理由に従いたくなるかもしれません。

でも本当のことは美しいとは限らないのです。

それにかつて美女が自分を愛したことなどあったでしょうか?

喰われるのも運命?

兎がほざく637

兎がほざく637

大きな駅は大小さまざまな人生のターンテーブルです。

駅に勤める人以外の全ての人はどこかから到着したかどこかへ行くのです。

これから体験する時間への不安と期待。

通勤客も駅で勤め人と私人との役を切り替えます。

行き詰まりを感じた時は駅に佇むと元気になれる気がします。

兎がほざく636

兎がほざく636

東京銀座近辺で朝十時からフライ定食のお店に列ができていました。

開店十一時半、料金千五百円とありました。

戸外に長時間並ぶ紳士淑女たち。

苦労して手に入れると喜びは大きいといいます。

それで幸せな気持ちになればいいことだと思いました。

兎がほざく634

兎がほざく634

先日東京駅の地下街を長時間散歩しました。

客層に合った店舗構成が隅々まで考えられた商店街です。
アジア系雑貨みたいなとがったお店はないです。

ぼくはお客さんとしてでなくただ通行するだけです。

水族館の魚になって大水槽を回遊しているようで愉快でした。

兎がほざく632

兎がほざく632

心にはいくつもの人格があるとすれば、そのうち世間に打たれ強い人格をいつも表に立たせたくなります。

世間をスイスイと受け流すアバター。

さてそのアバター、どのくらい持ちこたえてくれるでしょうか?

休み休みならば何とか持ちそうでもあります。

やってみようと思います。

兎がほざく635

兎がほざく635

なぜかマッチ売りの少女のお話を思い出しました。

売らないといけないマッチを擦っては束の間の夢を見ます。

ぼくにとって書くことがマッチを擦ることです。

夢にすがっています。

少女のようにおばあさんが迎えに来るという結末はぼくに約束されていないのは知っています。

兎がほざく633

兎がほざく633

ぼくたち日本に暮らす人は再び夢に救いを求めているのでしょうか?

理屈では問題を指摘できても処方箋が出せないことが多く、理屈を言う専門家は保身が見えてあてになりません。

既存の保守にも革新にも今一つ希望がもてないのです。

王道楽土の夢が頼みの綱なのでしょうか?

兎がほざく631

兎がほざく631

敗戦の反省はさまざまです。

敵国の力を見誤って拳を上げたことの反省。

殺し合いしたことの反省。

家族や友人を見捨てたことの反省。

外国の人を不幸にしたことの反省。

同調してしまったことの反省。

共通するのは「戦争とは失敗」という思いでしょう。

兎がほざく630

兎がほざく630

散歩の途中で東京の浅草橋を通りました。

アクセサリーの部品や人形や扇子の店が並んでいます。

貴石やビーズやパールに気を惹かれます。

飾るとは人にとっておまけではなく日常生活の前提の舞台設定のような気がします。

モダニズムだって過剰を削いで飾っているのです。

兎がほざく629

兎がほざく629

風姿花伝の「秘すれば花」の意味を長年考えています。

わかった気になったことも数回あるのですがまたわからなくなりました。

花は芸の秘密というより役者の魅力の秘密という気がしてきたのです。

芸と役者の魅力とは似ているようで違います。

しばらくこの仮説で試してみます。

兎がほざく628

兎がほざく628

都会が好きなのは人が好きだからのようです。

見ず知らずの人が行き交う雑踏で自分はたいてい独りで歩いています。

老若男女、さまざまな事情を抱えて何らかの理由をもって今日ここを歩いているのです。

なのにぼくだけは人を見たいという理由だけで路上にいるのです。

兎がほざく627

兎がほざく627

横浜で勤務したことがあります。

ここに住む人はほとんどがよその土地から来た人です。

ドライで現金な割り切りがある土地柄です。

つまり港町らしいのです。

横浜の波止場に似合うのは別れの涙ではなく束の間の出会いと別れに明滅するマリンタワーの青い光だと思います。

兎がほざく625

兎がほざく625

時代劇である浪人の夫婦者が大道芸で稼いでいるシーンを思い出しました。

妻は三味線か琵琶を弾いて歌い、夫は顔だけ白塗りにして、歌が終るとやおら居合抜きで半紙を切る、それだけです。

お客さんはまばら。

媚びないで淡々と技を見せるだけなのがカッコいいと思いました。