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ユースティオ・デ・ヴォール
2024年5月31日 01:22
◯ ぼく ◯◇ いつもの夢。 もう何度見たかも分からない、だけど起きたらきっとすでに忘れている不思議な夢。 きらきらと陽の当たる明るい部屋で、みんなが楽しそうに笑っている。それをぼくは部屋の隅から、ジッと見つめている。 視界が暗転し、正面に古臭いテレビと丸い時計が淡い光に照らされ浮かび上がる。テレビではぼくの思い出が細切れに流れ、丸時計の短針と長針は目まぐるしい速さで回転してい
2024年5月29日 10:34
◆ どうやらダイニングテーブルに顔を突っ伏したまま、一晩中寝てしまっていたらしい。顔を上げると、すでに正面の出窓からは眩しい朝陽が外の桜をまだらに輝かせていた。 ふと、窓台に置いた二つの写真立ての傍らにある鉢植えのアングレカムが、いつのまにか枯れてしまいそうになっているのに気が付いた。 元々冬から春にかけて咲く花だから仕方ないけど、それでもやっぱり大好きな花が萎れていくのを見ると、それ
2024年5月27日 18:14
◯ ぼく ◯◇ また、同じ夢を見ている。 暖かそうな陽射しに明るく照らされた部屋。そこでみんなが楽しそうに笑っている。 なにをそんなに笑っているのかは分からない。彼らがどんな話をしているのかも聞こえない。 ぼくも彼らと同じ場所にいるのに、ぼくだけが彼らとはまったく違う場所にいる。 誰もぼくを見ていない。誰もぼくには気付かない。 視線を変えると、部屋の窓辺に沿わせて置かれ
2024年5月23日 10:38
◆ 目が覚めて、ベッドから起き上がり寝室を出た。 隣のリビングに場所を移して、ダイニングチェアに腰を下ろすと、ちょうど正面に見える出窓の向こうで、外の桜が春風に吹かれてキレイに咲いていた。 その咲姿を見て初めて、冬の終焉と春の到来を実感する。 わたしに季節の移ろいを気付かせてくれるのは、今や窓から見えるこの景色だけだった。 別に卑屈になっているのではない。それが現実なのだ。明か
2024年5月21日 23:31
◎あらすじ◎ 女優を目指す恋人の楓と二人暮らしをしているぼく。慎ましくも幸せな毎日だ。しかし、ある日突然現れた男によって、ぼくは四日後の死を宣告されてしまう。その未来を、楓はまだ知らない。 十年前、恋人だった雄馬が突然、この世を去った。以来、わたしの世界はガラリと変わった。女優の道は諦めた。五年前には新しい恋人ができたのだけど、その関係も正直ギクシャクしている。この先どう生きていけばいいのか