無料公開!絶え間なく下がるリチウム価格と湧き上がる陰謀論: 最後まで生き残る企業はどこだ!?
早速みなさん、このグラフを見てみてください。
ずっと上がっていた価格が急にガクンと落ちてしまったグラフ。心が痛みますね。これは一体何のグラフでしょうか?
はい、その通りです。リチウムのグラフです。リチウム相場は、商品化され市場に供給されるリチウムの形態の一つである炭酸リチウム(Lithium Carbonate)を基準にみて、1トンあたり9万人民元にまで落ちました。2023年の最高値では1トンあたり60万人民元近くまで上がっていたことを考えると、5分の1どころか、6分の1以下にまで減ってしまったことになります。
AIと半導体が市場を席巻する前に、同じくらいの規模で市場に大きな影響を与えていたのが、まさにリチウムと電気自動車です。はるかに大規模な新しいバブルが起きて、今では市場参加者の関心をほとんど引かなくなってしまいましたが、一時期これらはアメリカの株式市場でも、日本の株式市場でも、信じられないほどの存在感を誇っていました。
本日のコンテンツでは、2024年の夏休みが近づいているこの時点で、リチウムの相場と関連株の動向について重要なお話をします。そして、一つの陰謀論(?)も提起してみますが、かなり興味深い内容になるでしょう!
まず、リチウムの相場がなぜ下がったのかといった、誰もが知っている話は改めてする必要はありません。これは以下の2つの理由だけで要約できます。
需要は我々が思っていたほどには伸びず、供給は思っていた以上に増えたため、余って在庫として積み上がっているリチウムが多くなったのです。それが全てです。本日のお話は「なぜこうなったのか?」ではなく、「それでこれからどうなるのか?」です。過去を分析することも大切ですが、理由があまりにも明白な場合には、過去を分析するよりも未来を予測する方がはるかに生産的な思考方法です。
さて、今日、焦点を当てる内容は、「リチウムの地政学」です。リチウムの需要と供給を担うのは当然、民間の電気自動車会社やリチウム採掘会社ですが、そこに国家や政府の重要な思惑が絡んでいるとしたらどうでしょうか?
アメリカと中国、リチウムを巡る争い
米中紛争が激化する中、リチウムが戦略的な原材料として浮上しています。
アメリカと中国が未来の産業の覇権を握ろうと争う中で、AIや半導体、軍事分野だけでなく、リチウムもその対象となっています。例えば、最近バイデン政権は、アメリカの電気自動車サプライチェーンに投資する企業に対する税額控除を、中国企業や中国企業が株を保有する合弁企業については適用外とする計画を発表しました。
同時に、アメリカエネルギー省(DOE)は2024年初めに、北米で最大のリチウム埋蔵量を誇る鉱山の本格的な採掘のための、22億6千万ドルという記録的な条件付き融資を発表しました。この融資の目的は発表文に明示されています。アメリカ政府はバッテリー製造に使用されるリチウムなどの金属に対する中国依存を減らすための取り組みに、22億ドル以上の資金を投入するということです。
これは、バッテリーと直接関係のあるエネルギー省だけでなく、一見リチウムと無関係に見える財務省のような部門でも重要視されています。2024年3月にアメリカのジャネット・イエレン財務長官は、チリにあるアメリカ企業のリチウム処理施設を訪問した際に準備した演説で、「クリーンエネルギーを含む我々の主要なサプライチェーンの一部が現在、中国に過度に集中している」と述べました。
退屈な背景の話はこの辺にして、我々の「アメリカ株式義塾」の記事をお読みの皆さんがこのあたりで感じる疑問についてお話ししましょう。
もちろんです。
これは電気自動車産業の停滞とは関係ありません。リチウムは電気自動車だけでなく、電力を消費したり蓄えたりするすべてのものに使われています。さらには、AIやデータセンターの電力供給網にもリチウム製のバッテリー蓄電装置が必要です。
リチウムは重要なものであり、アメリカと中国という世界第1位、第2位の超大国が命をかけて確保しようとしている鉱物です。
そうですよね。今も至る所でリチウムが重要だと言われ、リチウムの採掘量確保の競争が世界中で繰り広げられている、アメリカ企業が中国のリチウム供給網を奪い取るために多大な努力をしている、半導体とAIの貿易紛争がリチウムにまで拡大している、そんなニュースであふれています。
それなのになぜ、リチウムの価格は上がらないのでしょうか?
気になってるはずです。
私たちはここで一つの仮説を立てたいと思います。「リチウムの価格が果てしなく下落して1トンあたり9万元を割りそうになっている理由は、リチウムがアメリカと中国にとってそれほど重要な原材料だからである」というものです。
逆説的ですが、一体これはどういうことなのか、具体的に説明いたします。
皆さんもご存知の通り、リチウムの重要性に対して、リチウムを生産できる国や地域は非常に限られています。ちょうど上の地図で色付けされている国々でのみ、意味のある量のリチウムが生産されています。それでは、一度大きく分類してみましょうか?
まず、アメリカのリチウム鉱床に中国企業がアクセスすることはできません。逆もまた同じです。これは当然のことですよね?それでは、利害関係国ではない国々の場合はどうでしょう?
カナダ、南米、オーストラリアは政治上は中国よりもアメリカと親しいですが、民間企業にとってはただお金を出してくれる相手が味方です。そこで中国は豊富な資本力をもとに、これらの国々の現地企業と合弁して迅速にリチウム鉱山の所有権を手に入れました。
これは、中国企業が進出したリチウム鉱山です。アメリカ本土では当然、1gのリチウムを採掘することさえ考えられませんが(...)、カナダ、アルゼンチン、アフリカ、オーストラリアなど、リチウムが少しでも産出される国々にはすべて進出し、鉱山を所有しているか、現地企業と共同で運営しています。
アメリカも同様です。中国本土を除いた世界中のあらゆる場所で、企業を設立するか、合弁してリチウム鉱山を運営しています。アフリカは最近、中国の影響下に大きく入っているため、アメリカ企業のリチウム鉱山を見るのは難しいですが、カナダ、オーストラリア、南米には多くあります。
アメリカと中国は、互いの本土を除いて、世界中のすべてのリチウム鉱山で競争しなければならない状況にあります。
さて、少し長くなってしまったため、第1回はここまでとします。
リチウムを巡るアメリカと中国の覇権争いの概要を理解していただけたかと思います。
第2回では中国の陰謀論(?)ともいえる、リチウムの価格が下落した理由を追求します。
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