インストラクショナルデザイン学習記録②

鈴木克明先生著の「教材設計マニュアル:独学を支援するために」を中心にインストラクショナルデザイン(ID)の学習をしようと思います。
数学は独学で学べる部分が多いので、教材の力だけでどこまでできるのか知りたいと思ったからです。また、youtubeを活用した動画教材の開発をしており、そのクオリティを上げるためにIDの勉強が不可欠だと思ったので、今回の学習にいたりました。
また、このnoteは「教材設計マニュアル」をまさに独学で学習した際のレポートでもあります。引用はありますが、ほとんどすべて自分のことばでまとめていきます。
【感想】は最後に。それ以外は、私のための学習記録です。

【第2章ー教材づくりの手順】

この章での目標
教材づくりのPlan-Do-See(計画-実行-評価)を説明できる。
システム的な教材設計・開発手順(要素)を5つに分けて説明できる。

そもそもインストラクショナルデザインってなにか

教材開発は、Try&Errorで進みます。初めから完璧に作りたいのはやまやまですが、そううまくいきません。まずはとりあえず出来るだけいいものを作り、点検してみて(協力者にみてもらい)、もう一度改善する、というほうが良いものができあがります。
後で見直すことありきで、教材開発を行う必要があります。(1回でうまくいくと思うな、ということです)

「教材をつくる」という行為は、「誰かのために何かを教えたい」というステキな思想からきます。よって、出来るだけいいものを作りたい。そんな想いから、「こんな手順で作ると、うまくできるよ」という教材開発の手法がまとめられています。それらは、「教材開発・設計へのシステムアプローチ」と呼ばれています。ようするに先人の知恵です。巨人の肩です。
教授設計(インストラクショナルデザイン)と呼ばれるものの基本的な考えです。


【Plan-Do-See】のシステム

教材設計においても、「Plan-Do-See」のシステムでつくるとより良いものができます。日本語だと、計画-実行-評価です。教材設計においては、「どんな教材を作るか考える(計画)→教材を実際につくる(Do)→できた教材が独学を支援するものになっているか確認する(See)」ということになります。重要なのは、SeeのあとにPlanに戻ることです。評価をして、「もっとここをこうしたら良くなる」という箇所がみえてきます。そのあと、Plan-Do-Seeをもう1度行うということです。一度つくったものを作り直すのは、面倒だし、時間も労力も使います。また、「作ったのにダメ出しされて作り直すことになった」とあれば、モチベーションを保つのも困難になります。
しかし、本当に良いものは、そのような形でしか生み出されないのでしょう。1回でうまくいくと思うな、つくりっぱなしにするな、ということですね。


世間では、「PDCAサイクル」と呼ばれるもの。本当の意味で活用されているのは、どの程度なのでしょうか?しかも、このサイクルは何回転もさせるのが良いとされます。そのシステムは頭で理解できますが、実行してみると大変なものなんだと実感させられます。私にとって、2周目3週目を行うのがいつも苦しいです。


【教材設計の5つのステップ】

1.出入口を明確にする(ゴールは初めから設定する)
2.中の構造を見極める(ゴールまでの道のりを細分化する)
3.どんな教え方にするか考える(細分化された道ごとに教え方を考える)
4.教材をつくる
5.教材を改善する

教材開発のための5つのステップです。教材に限らず、この5つのステップは教授設計(ID)の基礎基本です。以下、1つずつ解説していきます。

1.出入口を明確にする
特に、出口(ゴール)を明確にしましょう。学習者がどのステップまで進めば、学習達成なのか明確にします。
ゴールとは、つまり最後に行うテストのことです。テストは、教材設計するとき、一番初めに作成します。
私の数少ない経験から言うと、学校現場では出口(ゴール)が不明確な学習ばかりです。ゴール設定を明確に示さずに授業は繰り広げられます。50分間の授業のゴールも示されないので、子どもたちは「いったいどこまで進むんだ?」という隠れた不安やストレスの中で学習をしています。数学の授業でよくやってしまうのが、「今日は進めるとこまで進めるよ」というもの。
これは、「カリキュラムを終わらせないといけない」ことや「40人の一斉授業である」ことが原因で起きていると私は思います。そこに文句を言っても、現場がすぐさま変わるわけではないのですが……。
少なくとも、「次のテスト範囲」は明確に決定した状態で、授業はスタートさせたほうが効果的だとIDは言っているわけです。
私自身、ゴール設定をせずに授業がスタートしていることがよくありました。非効果的なことを教員がやってしまっているんです。そりゃ、いろいろうまくいきませんよね。。。


2.中の構造を見極める
入口から出口までのステップを明確にしていきます。ゴールにたどり着くまで、スモールステップでみるということです。別の言い方をすると、どんな大きさのハードルが、どのくらい、どんな順番であるのか、をハッキリさせます。
この構造を「課題分析図」という形でまとめると効果的です。課題分析図については今後の記事で紹介していきます。

3.どんな教え方にするか考える
各ハードルの乗り越え方を考えます。それを「指導方略表」という形でまとめると効果的です。これも、今後の記事で紹介します。
独学者が、迷いなく進むための教え方を明確にしておくことが大事です。

4.教材をつくる
実際につくります。ここがDoの部分です。そして、ここまでの1.2.3.がPlan(計画)にあたります。
教材づくりといえば、まさに「つくる」ところがメインだと考えられますが、計画の部分も大きいです。計画の部分が大きくしっかりしているとクオリティが上がるのでしょう。

5.改善する
Seeの部分です。あらかじめお願いしておいた協力者に、点検してもらいます。この作業を「形成的評価」と呼びます。教材の良い悪いを明確にし、改善につなげる非常に重要な作業です。
学校の現場では、形勢的評価がうまく機能していないときがあります。なぜぜなら、学校の先生は褒め上手が多いからだと思います。たとえば、生徒のアウトプットがそんなに良くなくても「よくできた、頑張ったね!えらい!」と褒めます。モチベーションを上げる効果があるのでとてもよいことです。しかし、その発想が職員室にも、教材開発にも持ち込まれます。新しいものを作ったとき、良い悪いをハッキリさせずに「作ってくれてありがとう、よくやってくれた」と褒め上手を発揮してオシマイになる。
褒められて終わると、完璧だと錯覚するので、批判に対する免疫も落ちてしまいます。
もちろん、学校だけではないでしょう。明るくみんな認め合って仲が良いように見える環境は、もしかしたら沼っている(その環境から抜け出せない)だけかもしれません。怖いですね。


【ポイントの整理】なにが一番大切なのか

なにより、Try&Error&Try&Error&Try……です。教材を作りっぱなしにするな、1回で良いものができると思うな、ということです。
Plan-Do-Seeを何回転もさせるのは、精神的にもきついですが、そのような形でしか本当にいいものは仕上がらないのでしょう。

しかし、そんな大変な作業の中にも教授設計(ID)という道しるべが存在します。先人の知恵、巨人の肩です。そのフローや科学にのっとればまだ効率よく目的を達成することが可能でしょう。5つのステップは、教授設計の基本概念です。



【感想~又吉直樹さんの言葉より】

第2章ー教材づくりの手順をまとめているうちに、この講演のことが頭をよぎりました。なんだか合点がいったんです。
近畿大学の卒業式では近年、有名な方の講演を行っています。私の大好きな又吉直樹さんの講演から言葉を引用いたします。
又吉さんのゆったりした語り口調、ビビットさはありません。17分と長いですが、ぜひ見てほしいです。

①「自分の思い描いているビジョンを、一旦、疑っておく」
②「嫌なことやしんどい夜が続くとき、これは次にいいことが来る”フリ”だ」
③「バットエンドはない、僕たちは途中だ」

私たちは途中です。ハッピーエンドを迎えるまで続きます。バットエンドとは、途中で終わってしまったからバットエンドなんだと、そんな力強いメッセージに感じます。
教材開発は途中です。途中でやめてはいけません。(と自分に言い聞かせて)

→【第3章】へ続く





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