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短編もしも小説 「鳥の顔をした石像の正体」 - 8 賢いカラスはトトのドローン説

7 鳥人間への進化に許された時間 からの続き。

「確かに鳥って頭いいもんね〜、カラスとかちょー賢い。」

ナオミは教授のとっておきの持論に対して、なんとものほほんと、しかしちゃんと文脈に沿った返事を返した。

「鴉。確かに。そうですね。人が出したゴミを漁っている様子は一軒野蛮で野性的に見えますが、それはあくまで人からの視点の話。見方を変えれば、効率的に餌にありつけるという知恵を備えているということですから。

カラスが賢いってことは割と知られていることだと思いますが、それがなぜなのかと考えてみると面白いと思いませんか?
実は類人猿よりもはるかに長い歴史を持っているから、、と言うのは少々持論にこじつけすぎかな(笑)」

「カラスって、人が住んでいるその辺でめちゃめちゃ見かけるから身近だけど、なんか真っ黒だし、ちょっと怖い。」

確かに、カラスにはどことなく恐怖を感じる何かがあるかも。シュンはナオミの何気なく放ったその感覚が、自分も無意識で同様に感じていることを改めて気づかされた。

「そうですね。牙を持つ鳥と書いて鴉ですしね。非常に身近な存在であると同時に、どこか畏怖を感じる。なぜでしょう。
鴉や蛇は人がなぜか無意識に恐怖を感じたり、
森や海を美しいと感じる幸福感は、
生まれながらに持っている感覚なだけに、生まれた時からDNAに組み込まれているということなのか。」

シュンは思い返していた。そういえばナオミは焼鳥屋で、鶏の顔を彷彿させる皮があまり好きではないと言っていた。母親も同様のことをよく口にしていた。シュン自身は怖さとまではいかないものの、言ってることは理解できた。

「鳥人間とヒトが、神話で語られていたように、壁画に描かれているような主従関係、もしくは尊敬する対象にあったとしたならば。無意識で畏怖の念を感じるのはDNAの持つ情報に対して素直な感情と言えるのかもしれませんね。

トトは知恵の神として崇められていて。
日本の神話で登場する八咫烏は、神武天皇を案内した導きの神と言われています。
まぁ、カラス1種類だけを取り上げるのもなんですが、世界中どこにでもいる鳥という点では、特徴的な存在ではありますね。」

シュンは思いついてしまったことをしゃべらずにはいられなかった。
「餌を求めて山から降りてくるサルの賢さと比べても、カラスは他の鳥と比べて確かに群を抜いているような気もしてきました。クジラやイルカももえらい賢い印象がありますけど、なんというか、目の前で起きていることに対して頭の中で知恵が発動して、パズルを解いたりするサルや、水族館で演技もできるイルカたち哺乳類に匹敵する賢さを持っている印象がカラスにはありますね。面白い。」

「奴隷である人類の進化を監視させるには、もってこいの存在だと思いませんか?」

ハンコックは突然ギョッとすることを言い出した。

「人間が生まれる以前に地上を支配していたのかもしれないトトが、彼らにとってのヒューストンで人類を監視しているとしたならば。先程の火星の話のごとく、カラスに限らず、空を飛ぶ鳥の目全てが、人類の挙動を監視するドローンのカメラのようなものだとしたら。」

(続く)


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