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多頭飼いは同じ犬種にすべき?犬種以外に着目すべき点も徹底解説!

◎ドッグトレーナーの資格保有者執筆◎

すでにわんちゃんと暮らしているけれど、2頭目、3頭目をお迎えしたい…と考えたことはありますか? 愛犬の兄弟・姉妹として迎えるわんちゃんはどんな子がいいのかわからない。巷では、犬種が同じわんちゃんの多頭飼いをしている人をよく見かけるけれど、2頭目を迎えるなら1頭目と同じ犬種でそろえるべき?という疑問をお持ちの飼い主様も少なくないでしょう。

そこで今回は、多頭飼いをする際に、同じ犬種のわんちゃんをお迎えするべきなのかどうかについて掘り下げてみたいと思います。実は、同じ犬種を迎えることで良い面がある一方で、検討すべき事例もあるのです。

ハッピーな多頭飼いを実現するために必要なことも、ドッグトレーナーの視点から詳しく説明していきます!ぜひ参考にしてみてくださいね。

単犬種の多頭飼いによって起こる良いこと

はじめに、同じ犬種のわんちゃんを多頭飼いする良い点について考えてみます。犬種が同じだからこその多頭飼いの醍醐味は存在するのでしょうか。順に見ていきましょう。

【良い点①】犬種ならではの特徴を理解できている

もちろん個体差はあるものの、犬種固有の性質や特徴というものは少なからず存在します。それには体格毛質などの外見的なものから、必要な運動量社交性のレベルトレーニングのしやすさかかりやすい病気など内面的なものまで含まれます。

すでに特定の犬種のわんちゃんと長く暮らしているのであれば、例えばこの犬種は抜け毛が多いからこまめなブラッシングが必要だとか、小柄なわりに体力があって毎日たっぷりの運動が必要だとか、投げたボールを持ってくるのが得意だとか…実体験を通してその犬種に共通する特徴についてよく理解しているはずです。

新しく迎えるわんちゃんが同じ犬種であれば、知識や経験をフルに活用できるので、まったく別の犬種を迎えた場合に比べてお世話に余裕が生まれやすいでしょう。

【良い点②】好みのわんちゃんを見つけやすい

最初にわんちゃんを迎えようと思ったとき、犬種図鑑を調べたりネットで検索したりして、いろいろな犬種の性格や特徴を比較・検討したという飼い主様は多いのではないでしょうか?筆者自身もそうでした。あるいはご近所さんやお友だちが迎えているわんちゃんを見て同じ犬種を望んだ、というケースも多いでしょう。以前に特定の犬種と暮らしていた経験があり、思い入れがあった、という方もよく聞きます。

犬種選びにおいて、自身の環境や生活スタイルに適しているかどうかを考慮するのはもちろんですが、「サラサラの長毛が好き」とか「鼻ペチャがツボ」のように、主に外見的な特徴が自分の好みであるかどうかも多くの人が重きを置くポイントです。

見た目の好みが明確で、それに対するこだわりが強ければ強いほどお気に入りの犬種は限られます。このような傾向のある飼い主様の場合、2頭目も先住わんちゃんと同じ犬種を選ぶのはごく自然な流れと言えるでしょう。

【良い点③】愛犬グッズを共有できる

首輪、リード、服やレインコートなどの身に着けるものから、ブラシなどのお手入れ用品、ベッドやクレートなどの身の回り品、ペットシーツなどの消耗品など。同じ犬種同士なら、身体の大きさも同じくらいのことが多いため、わんちゃん同士で共有することができます。

わんちゃんグッズは高価なものも多いので、共有できるものがあると飼い主様のお財布にやさしいですよね◎浮いたお金でわんちゃんたちにちょっと良いおやつを買ってあげることもできるかもしれません!

単犬種の多頭飼いを慎重に検討すべき事例も?

ここまでは、同じ犬種のわんちゃんを迎えた場合の良い点について見てきました。一方で、単犬種の多頭飼いを慎重に検討すべき場合もあります。

注意すべき点は大きく分けて2つあります。順に見ていきましょう。

【検討すべき組み合わせ①】多頭飼いに向かない犬種同士

わんちゃんはもともと群れで生活する習性があるため、多頭飼いに向かない犬種があるというのは意外に感じられるかもしれません。もちろん個体差や飼育環境によって異なるため絶対に多頭飼いNGというわけではまったくありません!あくまでも傾向としてですが、多頭飼いでトラブルが起きやすい犬種を知っておくことは大切です。

一般的には、フレンチブルドッグ、ブルテリア、ピットブル、土佐犬など闘犬としてのルーツをもつ犬種や、柴犬、紀州犬などの和犬は多頭飼い向きではないと言われています。闘犬気質な犬種は闘争心や攻撃性が強く出やすい、和犬は独立心旺盛の傾向があるというのがその理由です。

例えば1頭目に迎えたフレンチブルドッグが温和な性格だったとしても2頭目が同じとは限りませんし、2頭目を迎えたことで1頭目が攻撃的な性格になったというケースもあります。犬種でひとくくりにできる話ではもちろんありませんが、それぞれの犬種の遺伝子に組み込まれている気質を無視して安易に多頭飼いに踏み切るのは賢明ではありません

【検討すべき組み合わせ②】特定の疾患を発症しやすい

犬種によっては、先天的に特定の疾患を発症する傾向が高い場合もあります。

例として、キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルは僧帽弁閉鎖不全症という心臓の病気を遺伝的に発症しやすいとされています。また、パグやフレンチブルドッグは、鼻ペチャであるがゆえに呼吸が困難となる短頭種気道症候群を発症することが多いです。

疾患のリスクを十分に理解し治療費が倍になる可能性も覚悟の上で2頭目のお迎えを検討しましょう

犬種以外の着目すべき注意点4つ

ここまで、犬種が同じわんちゃんの多頭飼いについて掘り下げてきました。実際に多頭飼いをするとなると、犬種の他にも注意が必要な点がいくつかあります。ハッピーな多頭飼いライフを実現するために、以下に挙げる注意点をあらかじめ十分に考慮しておきましょう。

【注意点①】先住わんちゃんの性格

犬種が同じだったとしても、わんちゃんの性格は十犬十色で多頭飼いのストレスを感じやすいわんちゃんもいます。先住わんちゃんに次の①から④ような傾向がある場合は、たとえ飼い主様が強く望んでいても多頭飼いをはじめるタイミングではないと筆者は考えます。

①何らかの問題行動があり、解決のためのトレーニングが進行中(または検討中)
②お散歩やドッグランで、わんちゃん同士の交流を好まない
③他のわんちゃんに対して興奮しやすく、攻撃的になりやすい
④甘えん坊の焼きもち屋で、飼い主様の愛情をひとり占めしたい

上記のうち1つでも思い当たる点がある場合は、多頭飼いには慎重になるべきでしょう。①、③、④についてはトレーニングで改善するケースが多いですので、2頭目を迎える前に専門知識のあるドッグトレーナーに相談することをオススメします。②については、積極的にかかわろうとはしないけれど、同じ空間を共有することに抵抗はないという子もいますので、2頭目のわんちゃんとの相性次第ではストレスなく多頭飼いができる場合もあります。

【注意点②】先住わんちゃんに持病がある、またはシニア

例えば、2頭目を迎える理由が「今いるわんちゃんがシニアになり、このままだとお別れが辛すぎるからペットロス予防のために次のわんちゃんを迎えたい」というものだとしましょう。このような場合、先住わんちゃんがすでにハイシニアで自力歩行や排泄がままならず介護が必要、またはそこまでいかなくても1日の大半を寝て過ごし、お散歩も気分転換程度であるとします。このような時期に多頭飼いに踏み切るのはあまり賢明とは言えません

というのも、新しくわんちゃんを家庭に迎えたら、家族や環境に十分慣れるまでの間は何かと手がかかり、気配りも必要となります。先住わんちゃんの介護を優先して新入りわんちゃんのトレーニングにかける時間がない、あるいは新入りわんちゃんのお世話にかかりきりで介護がおろそかになってしまう、という状況はどちらにしても望ましい環境ではありません。

同じ理由で、先住わんちゃんに持病があり症状が進行している、日常的な通院や介助が必要、という場合も、新しいわんちゃんをお迎えするよりも目の前のわんちゃんの治療に専念してあげるべきです。わんちゃんにとっての幸せ飼い主様は真剣に考えてあげましょう

【注意点③】年齢差が大きい

パピーは、好奇心が旺盛で遠慮を知らない段階です。そんなパピーが、静かに寝ていたいシニアにグイグイ絡んでしまうことがあります。すると、シニアのわんちゃんは「しつこい…」と感じてしまいます。一方でパピーのわんちゃんは「どうして遊んでくれないの…」と思ってしまいます。

つまり年齢によって体力的な差があるとどちらのわんちゃんにもストレスがかかり穏やかな共同生活を送るのが難しくなります。その場合、どちらかのわんちゃんに過度な負担がかからないよう、飼い主様の介入が必要となります。例えば、お散歩を別々にする、居住空間を分けるなどの配慮が欠かせないでしょう。このようにそれぞれのわんちゃんのニーズを個別に満たす場面が増えれば増えるほど、飼い主様の負担も大きくなります。

したがって、先住わんちゃんと新入りわんちゃんの年齢差は、できれば2~3歳離れていても5歳差くらいまでが好ましいと言えます。体力的な差があまりないぶん、お散歩やお出かけを一緒に楽しむことができます。

仲が深まれば、わんちゃん同士が一緒に遊ぶ姿を見ることもできるでしょう。同じ犬種の多頭飼いであれば体格もほぼ同じなので、わんプロや追いかけっこでどちらかが一方的に不利になるということも少なくて済みます。違う犬種同士で且つ体格差がある場合は、飼い主様が見守っているなかで一緒に遊んでもらうこともできます。

【注意点④】性別を考慮すべき場合も

一般的に、多頭飼いをする場合は男の子同士・女の子同士よりも、男の子と女の子異性の組み合わせがうまくいきやすいと言われています。男の子と女の子では、家族や他のわんちゃんとのかかわり方が異なることが多いからでしょう。傾向として、男の子は甘えん坊で女の子は自立しているケースが多いです。飼い主様に構ってほしくてまとわりつく男の子と、その様子を少し離れたところから冷ややか目で見る女の子、みたいな関係性は実際によくあることです。

そうした性別による違いから、片方が強いこだわりを持っている対象にもう片方は興味がない、強気な同性には敵対心を燃やしがちだが強気な異性にはあっさり譲る、といった感じで対立が起きにくく、ほどよくバランスのとれた関係性を築きやすいのは確かです。

ただ、もちろんこれにも個体差があるので、異性の組み合わせなら絶対に仲良くなれる!というものでは決してありません

◎異性の組み合わせで暮らすうえでの注意点

異性での多頭飼いの場合、そういった性格的な相性とは別に注意すべき点がひとつあります。それは、去勢・避妊手術を受けていない男の子と女の子の多頭飼いでは、妊娠・出産の可能性が非常に大きいということです。

望まない妊娠を避けるために、また女の子特有のヒート(生理)中の経血の処理や、その間の男の子の激しい興奮からくるストレスを回避するためにも、適切な時期に去勢・避妊手術することを検討しましょう。

\異性同士の多頭飼いについて詳しく!/
異性同士のわんちゃんの多頭飼い|相性が良いと言われる理由とは?

\兄弟・姉妹での多頭飼いについても詳しく!/
「男の子同士」多頭飼いの注意点|特性を知れば最高の相棒になれる!
「女の子同士」多頭飼いの注意点|性格・特性を知って仲良し姉妹に!

結論:犬種にこだわる必要はない!

ここまで読んでくださった方なら、同じ犬種にこだわらなくてもハッピーな多頭飼いは可能であることにお気づきかと思います。そうなんです、犬種は違っても仲良く暮らすことはできるのです!

むしろ、犬種よりも年齢・性格・性別・体格差に関する注意点をより意識しわんちゃん同士の相性を見極めることが大切です。特定の犬種に強い思い入れがあるということでなければ、犬種という枠にとらわれず選択の幅を広げてみてください。きっと、相性抜群のわんちゃんに出会えるはずです!

ハッピーな多頭暮らしを実現しよう!大切な心構え3つ

ここまでは、ハッピーな多頭飼いを実現するための注意点を、わんちゃんの目線からお伝えしてきました。しかし、2頭(またはそれ以上)のわんちゃんと穏やかに楽しく暮らすためには、飼い主様の気配りやスキルも不可欠です。最後に、多頭飼育をする飼い主としての心構えについてお話しましょう。

【心構え①】常に公正で沈着冷静なレフェリーであること

多頭飼いにおける飼い主様の役割は常に一定のルールに基づいて公平な判断を下せるレフェリーのような存在であることです

柔道やボクシングなどのスポーツに例えてみるとわかりやすいかもしれません。レフェリーがいなければ、試合が試合として成立せず、お互いが自分の主張を通すことしか考えません。相手を倒すという目的を達成するためならば、それが反則技だろうが何だろうが関係ない、そういう心理になってしまうでしょう。

【心構え②】ルールは飼い主様が明確に決めること

多頭飼いがうまくいくかどうかは、飼い主様のレフェリーとしての技量次第と言えるかもしれません。ルールブックは飼い主様自身です。一緒に生活していく上で、わんちゃんにしてほしいこと、してほしくないことをルールとして明確に定め、それを同居しているわんちゃん全頭にきちんと理解が浸透するようトレーニングに励むことが必要になります。もしルール違反があった場合には、逐一介入して場を収める能力も必要です。飼い主様が、その役割を十分に果たすことができるかどうかにかかっています。

ルールブックで定める約束事は、終始一貫していることがとても重要です。昨日はルール違反だった行動が今日はお咎めなし、のようにレフェリーの判断にブレが多ければ多いほどわんちゃんは混乱し、ルールを守りたい気持ちはあっても何を守ればいいのかわからない状況に陥ります。そうなると、レフェリーである飼い主様の判断にも疑問を持つようになり、やがて素直に従わなくなるでしょう。その結果、家の中はやりたい放題の無法地帯と化す、というわけです。

【心構え③】秩序ある自由がもたらす平和を

ボクシングをただの殴り合いのケンカにするのか、それとも権威あるスポーツにするのか。すべてはレフェリーにかかっています。

多頭飼いの場合も同じで、わんちゃんたちを一定の秩序ある自由の中で生活させることが大切になります。秩序をきちんとつくることで、お互いの存在をリスペクトすることを学び、主張のぶつかり合いによって起きるトラブルを回避することができるのです。


犬種以外にも、性格、年齢、性別など、多頭飼いをはじめる際に考慮するポイントはたくさんあることがわかりましたね。

攻撃性がある、社交的でない、高齢である、持病がある…などの理由で「1頭での暮らしが幸せというわんちゃんは実際にいます。このようなわんちゃんの個性を無視して多頭飼いに踏み切っても、結果的にトラブルやストレスを抱えるばかりで、多頭飼いならではの喜びや発見を得るのは難しいです。きちんとあなたの愛犬の個性を考慮したうえで多頭飼いという選択がほんとうに幸せにつながるのかを判断しましょう

また、多頭飼いにおける飼い主様の役割がとても重要であることもわかりました。複数のわんちゃんがひとつ屋根の下で穏やかに暮らすには、飼い主様が公正なレフェリーの役割を担っていかなければなりません。多頭飼いをしている、あるいは今後検討している飼い主様は、ぜひとも、わんちゃんたちからの信頼の厚い、公正で沈着冷静なレフェリーを目指してくださいね!

●ライター:キュウタ
ドッグトレーナーの資格を保有
●編集:うしすけチーム

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