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XIIX「USELESS」アルバムレビュー

先日、UNISON SQUARE GARDENのフロントマン斎藤宏介率いるXIIXの新譜「USELESS」が発売されたので自分的レビューをしよう、的な記事。
勿論初回のBlu-ray付を購入。配信ライブ丸々入ってるので実質無料。

前作の「White White」良いアルバムでした。
リード曲の一つの「Light&Shadow」は恐らく去年で一番聴いた曲かも知れないってくらい好きな曲です。

ただ、ユニゾンのようにキャッチーかつロックンロールの絶え間なき暴力を期待して聴くとそれとは完全に別物です。
ユニゾンとXIIXは違う、これはちゃんとリスナー側は前提として承知しておくのがマナーだと感じます。

アルバム全体の評価としては、☆10満点とすると初聴では☆7くらいでした。
先行曲がユニゾンとは全然違う現在のトレンドの音楽とジャズ要素を組み合わせかつキャッチーな2曲だったので、その期待分、全体を聴いた時
「そっちか」ってなったのは正直なところ。

構成が前述のキラーチューンでホームラン打った後に
中盤以降イージーリスニング風の緩めな曲とファンク要素を取り入れた変化球的バンドサウンドが交互に来るのがひたすら続くアルバムなので、
かなりアート性の高い作品だった。
キャッチーさも勿論担保されているがいわゆるスルメ曲がかなり多い。

というのが、前作を聴いた率直な感想でしたが、
配信ライブを観てその考えが改まりました。

勿論このバンドに限らずだけど、特にXIIXはライブで初めて完成されるバンドだと思いました。めちゃくちゃロック。
生音を聴いて再度改めて前作を聴くと全く違った解釈、聴こえ方をして、
実はこのアルバムは「ちゃんと開かれた」作品なのだと気付いた次第。
この配信で前作の自分的評価がめちゃくちゃ上方修正されました。

そういえば余談中の余談ですが自分の誕生日が10月2日なので20%くらい自分にもXIIX要素あることに最近気付きました。

では、本筋へ。

XIIX「USELESS」

01. Halloween Knight

(オススメ度:☆☆☆☆☆☆☆☆)

半年前にPV公開された先行曲。昨年の12月に配信解禁され、やっとこさCD化。
王道ロックチューンで、恐らくバンドキッズはこのアルバム中で一番琴線に触れる取っつきやすい曲。
PVに横山由依起用してたりかなりマスを意識したのではないかと。

まず自分の感想として、
「これ1曲目に持ってくるか」と思いました。
曲目だけ発表された時色んな意味でこれ大丈夫か、と感じた案件。

野球に例えるのであれば、
「あえて初球高めのストレート」というか。
というのも、恐らくユニゾンのアルバム哲学に置き換えるなら
多分この曲を1曲目に置くことはしないかなぁ、と感じていて。
(基本初球内角低めドロップカーブのイメージ)
前作「White White」も1曲目は序曲的なものだったしね。

他のロックバンドも大体こういうシングルカット曲は中盤に置くのが定石かなと思うし、
どちらかというとこのタイプの曲を先頭に持ってくるのはJ-POPアーティストのやり口だと思うので、逆を突かれた感じ。

なるほど、今回のアルバムは「より開けた形」でリスナーに訴求をかけてくタイプかと思ったら本人もインタビューでそれっぽい事を言ってたけども、
単純に今回の作品がカレンダー形式で「曲が出来た順」に曲順を構成したとのことだったのでそういう意味合いもあるらしいです。

02. No More

(オススメ度:☆☆☆☆☆☆☆☆)

キラキラ打ち込み主体のポップチューン。
斎藤さん版パプリカを聴いた気分になった。
この曲を聴いて、
「あぁ、今作はポップアルバムだ」という確信を持てた。
初聴はちょっと眩しすぎる感あったけど、二回目以降は意外と聴いてて体が自然と動く感じになって自分でもびっくり。

明るいけど全体的にサウンドがしつこくないというか、メロの流れが凄い気持ちいい。意外とA,Bメロの譜割は当て込んでないし。
散歩しながら聴きたい。

03. フラッシュバック

(オススメ度:☆☆☆☆☆☆)

からの揺り戻し変化球アプローチ。
【in the rough】をメジャー用にチューニングしたらこうなりました、曲。
程よいヒップホップ感がオシャレ。
緩めなサウンドとサビの重ねたボーカルで騙されがちだけど結構歌詞は皮肉言ってる。騙されちゃダメ。平気でこういうことしてくるから。

04. ブルー

(オススメ度:☆☆☆☆☆☆)

サウンド的に前作の「Light & Shadow」の延長線上にある曲。
ただ全体的にこの曲は低体温な感じで来るのかな、と思いきや
サビが二段階構成で2ブロック目で攻めてくる。
曲構成も二番からの流れが2A,Bメロ→サビA→Eメロ→サビBで締めるオサレな展開。

05. Vivid Noise

(オススメ度:☆☆☆☆☆☆)

ここで待ってました感あるバンドサウンド。
王道なサビで引っ張っていくと思いきやむしろそれ以外は面白そうなの全部乗せてみました的なやりたい放題な曲。
前作の「Stay Mellow」からジャズ要素を排してロックにしました、感。

歌詞がかなり遊び心入ってて、ユニゾンの「オトノバ中間試験」イズムを感じる。
根幹は斎藤宏介だけど、やっぱ少なからず田淵の影響はあるんだろうな

06. ZZZZZ

(オススメ度:☆☆☆☆☆☆)

前作でもあったアルファベット5文字曲。
次ブロックへ繋ぐブリッジ的な立ち位置で、前作に入っていた感じの緩いサウンドの曲。
絶対これライブで聴いたら斎藤さんえっちなんやろなぁと。
と思ってたらラスト40秒で急にロックサウンドかましてきてびっくりした。

07. おもちゃの街

(オススメ度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆)

先行配信曲。
みんなのうたで使われてても違和感ないバラード。
これ聴くと、ああ「スカースデイル」を作った人の作品だなあと思う。

このコロナ禍だからこそ、決して押し付けがましくない「寄り添う」スタンスを大事にしてるんだろうなぁ、という歌詞。
巡る季節を本のページに例えた表現が素敵。
でもちゃんと、その中で確実にバンドが鳴ってて静かな熱さも感じる。

田淵よろしく斎藤さんもこのアルバムは「勝手に主題歌シリーズ」多く入れてるらしいけどこれ何の主題歌なのかな。
トイストーリーかな。さすがにそのまま過ぎるかな。

しかし何でこの曲再生回数低いんだろう。
PVに本人達出てないからなのかな。
見つかったら軽く100万再生バズってもおかしくないマスへの訴求が非常に高い曲だと思います。

08. ユースレス・シンフォニー

(オススメ度:☆☆☆☆☆☆☆☆)

本作のリード曲、でいいのかな。
前曲からの流れでポップネスを綺麗に爆発させてる。
M2に次いでこんなキャッチーな事やっちゃうんだと初聴の感想。
だけど決して胃もたれしないのは、ファンという理由なのか、それともこの曲がそうさせるのか。

総評でも書くけど、表題通りこのアルバムで斎藤さんが伝えたいメッセージそのものがこの曲なんだと思います。

あと上のMVが完全に「斎藤宏介 個人撮影 流出動画」なので全国の斎藤さん夢女子は見事憤死してると思います。
自分が一応性自認同姓なので何とか曲に集中できるギリ致命傷で見させていただきました。

09. ホロウ

(オススメ度:☆☆☆☆☆☆)

一旦流れをフラットに冷ますアルバム然とした曲。
音作り、サビのボーカルエフェクトが印象強い。
確かにこれはユニゾンではやれないだろうなぁサウンド。

この曲もそうだけど、こういうブリッジ的な役割の尺が3分台なのは非常に聴きやすくて良いと思います。

10. Regulus(オススメ度:☆☆☆☆☆☆☆☆)

前曲で空気をフラットにしてからのロック寄りのバンドサウンド。
ギターの空間系のMIXとスネアの抜けが超気持ち良い。

比較的アップテンポ寄りなA,Bメロからサビでロックバラードになるところがシンプルだけど凄い良い。
この曲順でこのカードを切ってくる、というのも
「確かに来るアルバムの終わり」を感じてセンチメンタル倍増。

先行配信曲除くと一番好きな曲かも知れない。

11. like the rain

(オススメ度:☆☆☆☆☆☆)

静かなピアノの音色から徐々にバンドサウンドに導かれるバラード。
恋愛ドラマの挿入歌にありそう。
これもまた勝手に主題歌シリーズなのかな。
ここがこの作品の大団円。そして次曲。

12. Endless Summer

(オススメ度:☆☆☆☆☆☆☆)

前曲で一種のクライマックスを経てからの余韻、読後感的な一曲。
前作の「Saturdays」と似た立ち位置。
終わらない夏、とタイトルで付けといて2分半で終わる潔さが好き。
前曲のような壮大なバラードで終わるより、この形のがアルバムの締めとしてはすごい自分好み。


総評

(オススメ度:☆☆☆☆☆☆☆)

前作「White White」とは全く違うアプローチの作品。
全体を通してかなり大胆にポップネスに振り切ったアルバムで、
本人達もインタビューで言ってたけど
XIIXのポテンシャルを世に伝えるためにあえて前作からの流れを汲んで投じた作品なんだろうと思いました。

ただ、無理してセルアウトをやってるんじゃなくて、
「XIIXの音楽の一部」かつ「心からXIIXが今やりたいモードの音楽」なんだな、という印象で、
いわゆる一般受け的なアプローチが多くはあるものの、
決して押し付けがましくないから斎藤さんの音楽を今まで聴いてきた人にすんなり届く音楽なんじゃないかなぁと。

というのも、このアルバムのリード曲M8の歌詞がストレートに伝えたいテーマを表していて、
特にこのご時世、音楽なんて必ずしも必要ではない。
だけどそんな音楽が大好きで、そこに譲れないものがあって、
役に立たないかもしれないけれどかけがえのない音楽が最高だ。

この歌詞に尽きるんじゃないかなぁと。


個人的に、自分の中でユニゾンは「自分の中だけで秘密に大切にしておきたいもの」で(余裕でアリーナ埋めるバンドではあるけれど)、
XIIXは「好きだからこそもっと世の中に見つかって欲しい」音楽だと思っています。特にこのアルバムは。
特に「おもちゃの街」とか今の時代にこれ以上ないくらい寄り添った曲で全然もっと見つかっても良いのになと。


で、インタビューとかでXIIXは「3つのアルバムで音楽性を提示していく」と話していて、
1stが自己紹介的なもの、今作が恐らくポップネスを追求したもので、
恐らく次作はロック路線に揺り戻しが効いた作品になるのではと。
ユニゾンの4th~5thの流れ的な。

個人的にはやっぱり世間でJ-POPと言われているものよりかは断然ロックンロールのが好きなので、次作への期待が高まったなと思いました。

世間一般では別に役に立たないかも知れない、
でもそんな役に立たない音楽こそ大好きで、それを心待ちにしている自分みたいなマイノリティが確かにそこにいるからこそ、
これからも斎藤さん、XIIXのやりたい音楽を奏で続けてほしいな、と感じた一作でした。



ライブ行きたい。

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