結婚が立ち消えになった話【前編】
想定していなかったことが起こり、目の前がグレーがかって、耳がキーンとなったことはありますか。
私はあります。
人生で2回。
1回目は、以前の上司に、新宿駅で怒鳴り散らされたとき。
2回目は、結婚がほぼ決まっていた彼の秘密を知ったとき。
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私はそのとき浮ついていた。
27歳の時から、ううん、嘘だ、もっと前。ずっと前からあこがれていた「結婚」が、もう手に入りそうだったから。
「彼が好き」というよりも、やっとこの婚活地獄から抜けられる、みんなと一緒の場所に立てる、卑屈にならずにいられる!!と、踊りだしたいくらい浮かれていた。
でも、一瞬でそれがぶち壊された。
喫茶店で、週末の予定を決めていた時、彼がぽろっと【それ】を話した。
私は今まで飲んでいたクリームソーダの味がしなくなり、耳がキーンとした。
彼が何か言っているけど頭に入ってこない。あんなに奇麗だったグリーンのソーダも色を失った。
その時、私はきっと真っ青な顔をしていたんじゃないだろうか。
ふり絞って私が出した言葉は「それ、遺伝するの?」だった。
そのあとのことはよく覚えていない。
私はお手洗いに行き、トイレの個室で冷え切った指先でスマホを操作した。
手は震えるし、ドキドキした。
悪いこと何もしていないのに。
今考えたら、彼はその時何を考えていたのだろう。
いや、何も考えていないか。
「〇〇、遺伝」「〇〇、子供、遺伝」
終わった。人生終わった。また振り出しかよ。
そこから席へもどり、普通に彼と食事をした気がする。
別れた後、「今日元気なかったね」とラインが来た。
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彼とは相談所で出会った。
だから、こんなことになると思っていなかった。
相談所に登録している人は、私の考える「普通」の人しかいないと思っていた。
すぐさま、仲介者に相談したけれど、「なんだそんなこと?」という拍子抜けするような言葉だった。
「そんなこと」なのか・・
私がおかしいのかな?と不安になって、yahoo知恵袋にかじりついた。
そこでも論争が起きていた。
きっと、彼に対して「愛情」があったら私は今結婚していたんだと思う。
そして彼を思い出しては今でも暗い気分になるのはなんでだろう。
きっと彼は他の女ともう結婚しているだろう。
私が自分で手を離したのに、彼とみた景色を見ればなんだか悲しくなるし、お見合いをすれば(彼のほうが面白かった)と思う日々が嫌で嫌で仕方なくなる。
冷静に考えたら、結婚しなくて正解だったのだと思う。
自分ひとりで抱え込み、子供の心配、孫の心配を一生するのは私には無理だったから。
そう頭では理解しても、いまだに夜、泣いてしまう時がある。
「あぁ、あの時結婚していたらなぁ。」
そのひとことをごくんと飲み込む。
声に出したら、ベランダから飛び降りたくなるから絶対に出さない。
彼より素敵な人と結婚しなきゃ、とずっと思っていたけれど、最近はもうそんなモチベーションはどこにもない。
足を止めたらもう這い上がれないから必死に走っている。
わたし、いつか結婚するのでしょうか?
つづく
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