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くらいの眠れない日常 #1

眠れない夜は気づいたら唇の皮を剥いている。剥きすぎて唇がボコボコになる。
唇の皮を剥く以外何にもすることがなくて、漫画を読んだのが失敗だった。気丈に振舞っていた主人公が遠慮なく相手を頼る女の子に彼氏を奪われる話で本気で泣きそうになってしまった(この間も泣きそうになりながら器用に唇の皮を剥いている)。

辛すぎる。男の人に好かれるのは可愛くて、頼ってくれて、自分より気も頭も強くなさそうに見える、自分のプライドを崩さない女の子なんだろう。気丈に見せることが得意で、仕事に一生懸命で、彼氏のことを支えようと必死な主人公じゃない。辛い。本当に辛い。主人公なのにこんなことあるか?

そこまで考えて私側に思考が移った。ほぼ毎日朝になっても上手く眠れず、1人で唇の皮を剥いて、お腹が空いていないのに手近で簡単な快楽が欲しくて、1人でむしゃむしゃお菓子を食べる、愛想なし気丈巨漢女(日本語あってるのか?)…これじゃあ何を奪われても泣きそうにはならないか…。出かけていた涙が自分のおかげで引っ込んだ。ありがたい。

本当は、私は大リバウンドした体を戻す努力と、お金を貯めて整形する努力と、もっと柔らかい気性になる努力をしないといけないのだけれど、それができない。根性がない。だからせめて女の子とも男の子とも違う土俵で戦えるようにならなくちゃいけない。
滅茶苦茶に努力するか、諦めて全ての対象から自分で外れて「私」になるか選ばなければ、本当に差別されて突き落とされて踏みにじられる。だから差別される前に、さっさと自分をわけるのだ。さっさと自分をわけてここまで来たのだ。奪われる前に自分で選んで捨ててきたのだ。つまりそもそも奪われるようなものももうあんまりないのだ!

そこまで考えて唇がヒリヒリしていることに気づいた。奪われるようなものがない人間でも、唇の皮を剥けば唇が傷んでしまうのだ。悲しい。ベビーワセリンリップ塗ります。

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