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映画館ジブリ、最高だった件について

そんな件について。

散々言われている、「映画はスマホやテレビじゃなくて、やっぱり映画館で観ないとね!」という意見に対して、明確な答えが得られるかもなーと思って、映画館に観に行きました。

ので、映画館でみたことないけど散々テレビで観たことがある『もののけ姫』を鑑賞してきましたよ。

結果としては『もののけ姫最高』ってことでしたね。

が、映画館という場所としての特性を改めて見直す機会になったので書いていきますね。

◆映画館はスクリーンも音も、すっごくでかい

すごくない?これ、普通にすごいことですよこれ。

映画で物語を演出する時に、スクリーンと音響は必須なんだってわかる。

もののけ姫の話をします。もののけ姫って、序盤の10分、アシタカが村を出るまで、恐ろしく展開が早いんですよ。最高。

この緊張感を出しているのが、もちろん役者の演技、絵の演出もありますが、音の演出も最高。これを映画館で味わうと、鳥肌が立つ。

序盤、タタリ神となった巨大な猪の神が村を襲うシーン。アシタカがぬるぬると物見やぐらに登っていき、「ズーン」という大きな音の後、「来る!」とアシタカが森の中に目を凝らす。

するとここで、音が一瞬無音に。

そしてすぐ、不気味な低い音が一定の音階で流れ始め、「何か不吉なものがいる」という恐ろしさを演出。

そこから様々な音が足されていき、タタリ神の立てる物音、そしてBGMは勢いを増す。

恐ろしいものが近づいてるってことを、音で説明してるんだ。

これ、何十回とテレビでもののけ姫みていたけど、ここの恐ろしさは初めて感じた。映画館でみたから、初めて気付いたんだ。すげえ。

そしてアシタカの旅立ちのシーン。

絶望を隠しながら呪いを解くために西へ向かうアシタカ。

宮崎駿は音楽担当の久石譲と背景担当の人に、
「今アシタカは村を守ったにも関わらず出ていくことになり、自分がいつタタリ神になってもおかしくない絶望、不安を抱えている。それを村人の誰にも見せず勇敢に旅立つ。そんな彼に、世界に素晴らしいこともあるんだ、ということをみせたい」
というオーダーをしたという話があります。

そんな旅立ちのシーン。

名曲「アシタカせっ記」ですね。美しい壮大な風景の中をアシタカとヤックルが共に旅する様が描かれます。

この旅たちのシーン、本当に最高。

遠景で描かれる壮大な自然が、でっかいスクリーンに映え、壮大な音楽がリッチな設備で存分に演奏される。

ここでもう感激。世界観に没入させられる。それまでは不気味な音や部族的なBGM、火の燃える音(これが重要だった)しか聞こえないんだけど、ここから初めてストリングスの壮大な音楽がかかる。

壮大な旅立ちが、始まるんだ!って感覚がすごい。映画館ならではの感覚ですや。

◆映画館って他人が多いしすっごく広い

これも。すっごい。

映画館って、広いんですよ。何十人も入れる空間がある。しかも、そのほとんどが知らない人。

そしてその知らない奴ら全員同じ空間で、同じ映像物語をみる。

この奇妙な連帯感は、映画館っていう場所でしか生まれない。

昔は音響設備が整っておらず、いわゆるヤジとか笑い声が普通に聞こえるような空間だったから、また違った連帯感だったらしい。(映画『カツベン』をみるといい)

だから映画館が今みたいな迫力のある映像と音響効果を出せるようになってくると、物語世界にいかに没入させるか、という映像作品が多くなってくる。

それが今に繋がる映画という文化の変化なんだ。

つまり、息もつかせぬ展開、ど迫力映像、音楽。こういう映画表現がメジャーになっていく。だから、正直これだけだったらスマホの画面でイヤホンつけてれば、ほぼ似たような体験は味わうことができるっちゃあできる。そう思ってた。

でもね、違った。やっぱり映画館でみる映画は違うんだ。

もののけ姫で初めてシシ神をみつけるシーン。

今まで歩いてた山道から、透き通った湖のような場所に出る。そこから、無音状態。

ここで、緊張感が生まれる。

自分だけじゃない、同じ空間にいる全員が、物音立てずにみている。その事実が、まるで自分が息を潜めているかのように錯覚させる。

昔のような面白いところでみんなで声を出して笑ったり突っ込んでいた一体感は、音響設備の進化によって失われている。

でも、さっきまでうるさかった空間で何十人もの人間がいるのに物音を一つ立てないってのは、いまの映画館だからできる演出。日常にない。異常。やばいことが起きてる。息を潜めなくてはいけない。

そしてその時もののけ姫のスクリーンでは、左から右へ、長く、そして速く、何かを見つけようとパンする一人称視点になる。ひっそりと息を殺しながら、やばい何かを探してる

そしてアシタカの横顔のシーンに切り替わる。真剣な顔で毛を逆立てながら何かを見つめる。ここで不吉な音楽。アシタカの目へズームしていく。

そしてアシタカの目線にカメラは変わり、不気味に光る森の奥へと目線が狭まっていく。また無音。

ここはもう緊張感のマックス。本当に、本当にやばいやつが、あそこにいる。そんな感覚が、身体から湧き上がってくる。みない、という選択肢はない。

そして、シシ神をみる。

このシーン、今までテレビでみていたらなんの感情の起伏もなかったけれど、あの映画館という空間でみると、本当に恐ろしいシーンなんだ。すごいよ。

◆もののけ姫という「映画」は最高

ということで、もっと新しい発見もあったんだけど、いったんここまで。

映画館の魅力を、テレビでみていた時に感じなかった感情を煽られることで、再発見できるいい機会でした。

そして何より、ジブリ映画の魅力って物語とかキャラクター、世界観とかだと思っていたけど、映画表現として恐ろしいほど練られてる、ということを再発見することもできました。

本当に。

機会があれば、みなさんもぜひ。

もしよければ、何卒…