情熱とためらいの無限ループ・2

皆さんには大好きなものはありますか?何かや誰かのファンですか?
大好きな人がもし目の前に立っていたら、サインや写真を求めて突撃する方ですか?それとも何も言えずに蝋人形のように固まって立ち尽くしてしまうタイプのファンですか?

私は後者です!完膚なきまでに完全にパーフェクトに後者です!(泣)

熱しにくく冷めにくいタイプと言うか、自分の中である程度「何故この人のファンなのか」を自問自答してから(※大抵は答えが出ぬまま既に少々のことでは飽きなくなっている状態に突入する…)ようやく「ファンです」と言い出せるという人間なので、ファンだと胸を張って言える相手の数はそれほど多くありません。なかなか気軽に誰かのファンだと言わないので「あなたが好きだって言うくらいだからよっぽどの人なのね」と言われることもあるほど。かっこよく言えば中途半端なイケメンには心も動かされないということですな。マミヤのドレスを見ても眉ひとつ動かさないケンシロウのようなものです。って違うわ!←通じるのかこのネタ…

それだけに、「それだけ好きならば是非本人に会って欲しい…」と周囲から微笑まれてしまうくらいにその誰かのことは大好きなのですが、大好き過ぎると逆に、恥ずかし過ぎて本人に会うなんてもってのほか、とおろおろと考えてしまうタイプです。ええ、チキンです…。

遠くから見てるだけなのは別にいいんです。客席から見るとか、テレビの前で応援するとか。ファンレターを書いたりブログで愛を叫んだりするのもわりとできる方です。むしろ文章で表現するのが好きなのでノリノリでやっちゃう方です。

しかし、それらはすべて「自分という存在そのものが憧れの対象と空間を共有していない」から可能なのです。客席にいる場合は同じ空間にはいますけど、大勢の客の中で私の存在など基本的には埋もれている。何度も客席で見た人物でも、目があったかな、今手を振ってくれたの自分にだな、と感じたことは片手の指で数えるくらいしかないです。しかも、彼らはそのことをすぐに忘れてしまうでしょう。

だから平気なのです。「私」という存在が彼らの視界に入る必要はないのです、これっぽっちも。むしろ視界に入りたくない。
いつもきらきらと輝いている憧れの対象に、こんなしょぼくれたファンがいるなんて知られたくない。本人にも、本人を知る人たちにも知られたくない。
テレビの前やネット、手紙の中でなら自分のビジュアルが他人にはわからない。自分という存在は確かに存在するのだけれど、その存在は文字という何処にでもある記号に置き換えられる。
だから恥ずかしさが薄れて、応援の言葉を素直に口に出せるのです。大好きだけど認識されたくない。認識されるのが嫌なわけじゃないけど、そんなことあっちゃいけないと思ってしまう。矛盾の中に漂う安定。

なので、憧れの対象が確実に自分を認識し記憶する状態で邂逅した場合はパニックに陥るわけです。基本的にそのような事態は起こり得ないと想定しながら生きているのに、そのイレギュラーが起こってしまう。
こうなると、頭の先から爪先まで身体はフリーズ。話しかけるどころか、話しかけられても声も出ない。まな板の鯉。相手のファンであればあるほど硬直具合はアップ。そしてすべてが終わってから、頭を抱えて反省し後悔しまくるという…。号泣。

よく、サイン貰ったとか写真撮って貰ったとか聞くけど、そういうことがお願いできるということはそこまで好きでもないけど興味はあるからなのか、その人が積極的な性格だからなのか、その両方か。いずれにしろ、もはや私とは違う世界の出来事に思えてくる…(泣)。
特に論外なのはツーショット。本人の写真は欲しいけど、自分の写真はいらねええええ!しかも憧れの存在が隣にいるなんて絶対いらねええええ!こんな拷問あるかああああ!大抵皆顔ちっちゃくて整ってて細くて、私と同じ生物だと認識すること自体不可能なのにいいいい(泣)!

こんな感じなので、ものすごく勇気を出してファンの集い的なものやサイン会等に参加した場合も、基本はフリーズしてるわけです。会場の隅っこからそっと眺めてるだけでいい…。いいんだ、いいんだってば(泣)。

しかし、私は何故か「こういう引き」がやたら強い人間なのですね。隅っこでいいって言ってるのにめちゃめちゃいい席が当たったり、ご本人から手渡ししていただけるプレゼントが当たってみたりするわけ。するんですよこれが←白目
おそらくその会場でいちばんいい席を引き当ててしまった時は、あまりの恥ずかしさに友達にその席を譲ってしまいました…。スタッフさんにも一応断りましたが、まさか素晴らしくいい席を端の席と変更しようとするアホが現れるなんて思わなかったんじゃなかろうか。知人にも散々「馬鹿じゃないの?!」と叫ばれましたが、私も心底そう思いますが、

無理!

そもそもそういう場へ行くこと自体が一生分くらいの勇気を奮い起こさないと不可能。不可能なのによく出向けたね、と思った皆様、これには理由があるのです。
不可能過ぎて諦めようと思っていたある日、行きつけの美容院で美容師さんがこんな話をしてくれました。

その人は若い頃ある映画俳優のファンで、その俳優のファンミーティング的なものが開催された際、迷った挙げ句行かなかったのだそうです。翌年の年賀状に、ファンミーティングに行ったらしいお友達が、その俳優とのツーショットを載せて送って来たのだとか。長い年月が経ってもそのことを思い出すのだそうです。行けば良かったと。
だから行けるなら行った方がいいよ、とのことでしたが、そのエピソードがもうあまりに気持ちがわかり過ぎて、行くことに決めました…。背中を押してもらって良かったのかもしれませんね、うんもうそういうことにしとく…。

そのほかにも「何となく右を向いたら植え込みの向こうに立ってた」(※本当にそうなのでこうとしか説明のしようがない…)とか色々エピソードはあるのですが、まあ個人的に聞いてください、飲みの席とかで…。
出待ちして無理矢理接点を持とうとする人の話もよく聞きますけれど(エレベーターのドアが開いたら出待ちがズラリ、という光景に遭遇したこともある…。怖かったです…)、ネタの神様にお任せした方がいいよ?ただし全部不意討ちだけど、とお伝えしたい。んで、私みたいなチキンをからかうためにしかネタの神様は現れないのかもしれません(泣)。

違うんだ、大好きなんだ。めちゃくちゃ大好きなんだけど、だからこそ迷惑になりたくないし困らせたくないんだ。自分がそんな存在になるくらいなら遠くで見てるだけの方がいいんだ。だって私はあなたの笑顔が曇ってしまうのが何よりも怖い。いつも素敵なファンに囲まれて幸せに暮らしていて欲しいんだ…!

が、固まってるだけのファンなんてある意味超不審人物なわけです。特に相手が話しかけたり笑いかけたりしてくれてるのに反応できないのは人として失礼な気がする…。はっきり自分のファンだって言ってくれる方が嬉しかったりするのかもしれない、決してその憧れの対象に無理強いはしないことを大前提として。
ここが難しかったりします。お会いできて嬉しいです、とかめちゃくちゃ言いたいんだけど、マジで声が出なくなるんですよね(泣)。どうしたらいいのか…。
ちなみに、微笑みかけられた人についてはだいたい漏れなくファンになりますね(笑)←チョロすぎる…

頑張ってください、と一言だけ言いたくて呼び止めたのに、一言も発することができなくなってご迷惑をお掛けしてしまったこともありました(泣)。ここまでの話からもお分かりのように、それは私にとって本当にものすごく勇気の要ることで、何故呼び止めることができたのか今でもわからないのですけど。
結局友達が助け船を出してくれたんですけど、私はそれがなければファンだと告げずに帰るつもりだったのです。実は呼び止める前に色々案内などしていただいてたのですが、自分がファンだと相手にわかっていないからどうにかその状況で正気を保てていただけで、そのままそっとフェードアウトすれば記憶にも残らないだろうと思っていました。それなら何とかギリギリ、「憧れの対象と空間を共有していない」状態を保てますから。

しかし、ファンだとバレてしまった…。「恥ずかしがらなくていい、取って食ったりしないから」と言ってくださったものの、何なんだろうこいつはみたいな表情をされていたので(詳細は差っ引きますがそこに至るまでにも色々…。テンパり過ぎて私が色々…)今も申し訳なさで一杯です(泣)。最初からファンだとお伝えした方が良かったのかな、とぐるぐる考えてしまいます。

友達や、私がファンだと気付いた周囲の方のお力添えがなければ話しかけることもできずにいたと思うので、本当に皆様には感謝ですね。そしてそれもラッキーな話だったんだろうな、と思います。自分の引きの強さがここでも発揮されちゃいましたかね…。うん、色々ありましてな…。大半が私がやらかしてただけですけどね…。
「なんか…自由ですね…」と呆れてる声がしたと思ったら友達が「いつもああなんですよ」とか返しててまったくフォローしてくれてなかったとか(泣笑)。逃走したくなりましたが、テンパり過ぎて逃げ出すこともできませんでした(泣)。もう絶対バカだって思われた…。終わりだ…。さよなら地球…←意味不明
ちなみに友達には「あんたほかの人とは距離感ゼロで喋れるのに、◯◯さん(私がファンの人)にはテンパり過ぎて話聞いてなかったでしょ?失礼だから」ってめっちゃ怒られました…。申し訳ございません…(泣)。

ファンとの距離の近さを売りにしているアイドルなども多いようですけど、私のようなタイプには逆にそれがプレッシャーになってしまうかもしれないですね。距離の近さ故に可能なサービスを相手が仕事としてある程度「当たり前」だと認識していても、それを受け取ることに過剰な躊躇いがある。そもそも憧れの対象なんてものは、遠くから見つめるものと相場が決まっていたはず。時代の変化について行けねえ。いや、昔の漫画家さんのファンレターの宛先が自宅だったみたいな話を聞くとそうでもないのかもしれんけど。
承認欲求が強いタイプの方や積極的な性格の方などには面白いのでしょうけど、私にはなかなかハードルが高いです。前述の方は距離の近いパターンの活動をされていたので、私にかけたような言葉を言ってくださったのでしょうけれど、私の世界にはその言葉を含めた一連のあれこれは「存在しない」ことだったんですよね。

「ファンとその憧れの対象との関係性」的なものについてもう少し色々書こうと思っていたのですが、長くなってきたのでこの辺りにいたします。ちょっとドロッとした話になりそうだったし。また機会があれば…。

大好きなんだ、大好きなんだよー。大好きだからこそ、どうしたらその人にとっていちばん邪魔にならずに、かつ最大限に喜びを与えられるか考えちゃうんだよ。そうしたら、私の存在を出来る限り排除する方がいいという結論に…。でも1%に押し止めた本音は、やっぱり一瞬だけでも同じ空間にいたいんだよね。以下、無限ループ…。

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主にフィギュアスケートの話題を熱く語り続けるブログ「うさぎパイナップル」をはてなブログにて更新しております。2016年9月より1000日間毎日更新しておりましたが、現在は週5、6回ペースで更新中。体験記やイベントレポート、マニアな趣味の話などは基本的にこちらに掲載する予定です。お気軽に遊びに来てくださいね。

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