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チーズケーキとか

 私は自分へのご褒美に料理をする。
 少し手間のかかる料理や、やったことのない料理やお菓子作りに挑戦することが多い。

 先週からずっと、ものすごく忙しいというより、大変だったので、よく頑張った味のするものが食べたいと思った。
 何を作るにも道具も設備もあまりそろっていないし、場所も広くない。「簡単で、おいしい」「○○を使わない」というキーワードで作る料理ばかりだけど、一生懸命作っておいしければ、そんなことはどうでもよくなる。

 今回は、オーブンを使わない、フライパンで焼くチーズケーキと、卵焼き器を作っただし巻き卵を作ることにした。


 チーズケーキのレシピそのものは、オーブンで焼くレシピとあまり変わりない。クッキングシートをフライパンに敷いて、その上に生地を流し、蓋をして弱火でじっくり焼く。レシピ考案者の工夫点は、弱火でじっくりというところらしい。なるほど、ふむふむ。
 少し前に、クリームチーズは別のお菓子作りのために買い、すでに半分量使ってしまっていた。レシピのクリームチーズは200gだったが、100gということにして、他も材料も約半分の量で作ることにした。お菓子作りは材料の計量が何より大事だけど、ないものは仕方がない。もうすでにお腹の中に100gは収まってしまっている。
 さて、困ったのは溶き卵の存在。半分量にしても、いいことはいいけれど、残った分で卵焼きを作るにも、二分の一個分では、かなり寂しい。ここは、本来悩むところだと思うけれど、えいやと1個分入れてしまう。卵だけ2倍量。

「まあ、チーズケーキだしね。私のすることだしね! 食べるの、私だけだしね!」
 普段の生活では、細かいところが気になって色々大変なのに、肝心で大事なところでは、大雑把になりがちな性格をいかんなく発揮する。
 ――食べるのは、私だけ。
 この魔法の言葉は、私を無敵にしてくれるスペシャルワード。

 小麦粉を減らすと、ケーキそのものが貧弱になる気がして、半分量より少し多め。他はレシピ通りに計量して混ぜる。フライパンにクッキングシートを敷いて、生地を流し、蓋をして弱火で焼くこと13分ほど。
 できた!
 小躍りするほど、いい感じの黄色。
 少しだけぷうっと膨らんだ生地はとても柔らかそう。
 クリームチーズとポッカレモンのスンとした酸っぱい匂い。
 底面はうっすら焦げて、見るからに香ばしさを程よく備えている。
 うっきうきで、皿だ! フォークだ! となるのがいつもの私だが、今回はご褒美。「粗熱を取り、冷蔵庫に入れましょう」とレシピに書いてある。仕方がない。ケーキクーラーがないので、鍋敷きを上に乗せたどんぶりにフライパンを据えて、粗熱を取る。少ししてケーキの形が安定した感じになったので。フライパンから、ケーキをクッキングシートごと外しさらにどんぶりの上で粗熱を取る。それにしても、どんぶりの上にチーズケーキが鎮座ましまししているのは、変な感じだった。
 冷蔵庫に入れてきちんと冷やし、おりこうに食べた。
 一人で1回で食べるには多いので、8等分に切った。まだしばらく楽しめる。想像を超えるおいしさに、思うとニマニマ笑いが止まらない。おりこうに冷蔵庫で冷やしてから食べた自分を褒めてあげたい。
 せっかちは、いかん。

 
 次はだし巻き卵。
 玉子焼き器も、実は持っていなかったので先日買ったばかり。私の母は、卵焼きはスクランブルエッグを主に作っていたので、だし巻き卵について、私はほとんど知識がない。ただ食事に行くと、出てきたりするなぜか四角い卵焼き。噛むと中から、じゅわりとだしが染み出てくる甘い卵焼き。母の作る卵焼きとは、違う味の卵焼き。どう巻くのか知らないが、「だし」で「巻く」らしい卵焼き。
 ずっと興味津々だった。
 興味津々なところに、食いしん坊の妄想は暴走する。
 これはもう、作ってみなければ!

 YouTubeで、レシピ本の写真で、焼き方の予行練習、イメトレに余念なく取り組む。
 いつものことだが、私はレシピ本を買っても、必ず自分のレシピノートに書き写す。だから。実際作る時に見るものは、自分が書き写した文字情報と、手書きの絵のみになってしまう。大概、作ったことのないものは、どんなに分かったつもりでも混乱し、あたふたあたふたと、ガスレンジの前とノートの前を行ったり来たりすることになる。ノートを置く場所が遠いのだ。これはもう、どうしようもないことだが、ノートくらい置ける広い台所がほしいと常々思う。
 だし巻き卵は、完成した。
 最初の巻きはうまくいかなかったけれども、2、3回目の巻きではミラクルが起きてくれたので、なんとかイメージ通りの四角い卵焼きが完成した。
 途中、中々ひっくり返ってくれないので、「ほいさっ、ほいさっ」と卵に掛け声をかけたり、ひっくり返ってくれた時は、「ほわっちゃー!」と嬉しさのあまり、フライ返しを手に思わずカンフーのポーズをしたり……。かなり忙しい感じの卵焼きだった。


 早速食べてみると、口があたりよく、じゅわりとだしが滲む。甘い卵と砂糖の味。「ほわっちゃー」の頑張った味がした。電子レンジで作る卵焼きとは一線を画す、やわやわで、とろとろな食感。側面は黄色の卵がきれいに渦を描いていて、これはもう、完璧に「巻いてある」卵焼き。
 手前に卵を寄せる、油をひく、奥に寄せる……、手順は簡単なようでいて、事前学習(イメトレ含む)もあまり役に立たなかったけど、次はもっとうまく焼ける気がする。
 

 チーズケーキと卵焼きを食べながら、幸せに浸る。ご褒美プラン成功。
 おいしいは、正義。

 おいしいは、たのしい。

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