お題小説『もがれた翼・艶っぽい声・薬指』
左手にそっと細い手が乗せられた。次いで、腕に僅かな重みと温もり。
「私たち、一体何をしているのかしらね」
面白くもない言葉だった。続く笑いはねっとりと纏わりつくような艶っぽい声。
「全くだ」
俺も面白くない答えを返す。何を返したところで、俺たちが罪を重ねていることもこれから何をするかも、変わることはないのだから。
「これ、もう要らないでしょう?」
手に乗せられていた白い指が、俺の薬指に嵌る指輪を撫でた。
「捨ててしまいましょう」
そう言う彼女の左手に、もう指輪は