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美意識とモチベーション:羽生善治が語る将棋と現代人の挑戦
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Number1060号『[ロングインタビュー]羽生善治「来るべき、小さな光」』(2022年10月6日発売)
の記事を読んで、いろいろと考えてみた。
美意識とは「この形は綺麗だ」「この形は歪だ」といった人間が長年の経験から積み上げてきた感覚だ。8年前、羽生は『AIの影響によって人間の美意識が変わっていくことが本当にいいことなのかどうか。間違った方向に導かれる可能性もある』と疑問を呈していた。だが今は、意図的に変えるという覚悟をしている。
「AIは時系列でものを考えない。評価の高さだけで判断する。人間が思いつかない斬新なものと、50年前の古いものが混然一体となっているのが今の将棋です。美意識を変えるのは、言い換えれば発想の幅を広げることで、美意識を磨くのは、無駄な考えを省くことなんです。考えの幅を広げて無駄を省く。ただこれ、言うのは簡単ですけど、実戦でやるのは大変です(笑)」
美意識とは日本人特有の考え方で、昔から受け継がれた伝統である。羽生さんは、伝統=経験の積み重ねの重要性を想い、新しい形の美意識を作り上げようとしている。
最後に「恐怖心」について聞いた。以前羽生はAI将棋に対して『恐怖心がないというのは本当に強い』と感嘆していた。『恐怖心を無くすのは大変なこと』とも。
今、負ける恐怖心は少しずつ無くしていますか。それとも持ち続けている?
「勝ちたいという気持ちを強く持ちすぎると、オーバーモチベーションで自分の力が発揮できない。だから、そぎ落とすことが大事です。ただ、負けたくないという気持ちまで無くなると、モチベーションが下がるので意味がないんですよ。本当に何のためにやってるのかわからなくなっちゃう。だから、その『間』が一番いいですね」
――勝ちたいとは強く思わないけど、負けたくない気持ちは持ち続ける。
すごく重要な考え方だと思う。将棋の世界だけじゃなくても、若い頃は勝ちたいと思うことは多い。それは、大学や就職先などの自分のステータスだったり、車や服などの物質だったりと張り合っていた。しかし、年齢を重ねると、そういった考えは減り、モチベーションは下がっていく。
現代人が負けたくないと思うものは、何だろうか?モチベーションを下げないようにするには、どうしたら良いだろうか。
人それぞれ守りたいものは違うけれど、日本人は日本人のアイデンティティである美意識や共同体主義などの伝統は守りつつ、共同体主義と個人主義の間で新しい日本人になっていく必要がある。
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