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《そして、乙女は剣を手に進み続ける》を心理考察する~英雄伝説 創の軌跡~

 2020年10月1日、《英雄伝説 創の軌跡》において、大型アップデート《夢幻の彼方へ》が公開され、さらにその中には次回作の伏線メインともいえる、《創まりの先へ》がありました。
 リィンがユン・カーファイの足跡をたどった先の邂逅、《もう一つの温泉郷》。
 レンが共和国の足場として進んだ学園での一幕、《ある少女の学園生活》。
 そして、本編にて噂されたサラに次ぐ最年少A級遊撃士、エレイン・オークレールの一幕、《そして、乙女は剣を手に進み続ける》

 リィンとレンをはじめとした西側の人たちの物語は、ある程度は終えている。ここでは、少ない情報ながらも内面をさらけ出すことになった重要人物エレインについて、その心象を考察しようと思います。そして彼女の心象について勝手に語ることで、今後情報が明かされたときの参考や、また一つの楽しみにできればと思う次第です。

 ★本稿は、《英雄伝説 創の軌跡》の中の大きなネタバレを含みます。また、2020年10月時点で明らかになっている情報を基にした考察・妄想記事となっております。


1.エピソード《そして乙女は剣を手に進み続ける》

※エピソードの流れを簡略して載せています。飛ばしても構いません。

 七耀暦1207年、9月。クロスベル再事変より半年後。カルバード共和国。
 遊撃士として活動するエレイン・オークレールは、半年ほど前より、遊撃士協会本部より『A級への昇格の打診』をされていた。だが、エレイン自身はその昇格に乗り気ではない。
 先輩遊撃士である不動のジン──ジン・ヴァセックも彼女に昇格を勧めるが、それでも彼女は首を縦に振らない。
 彼女は、自分がA級に相応しくないと思うとともに、目立つことを望んでいなかった。上級遊撃士としての人気や、端正な顔立ちや佇まい。それにより彼女はすでに、映画業界や雑誌社などの各業界からオファーを受けており、周囲も忙しくてんてこ舞いだったのだ。
 だが、是非はともかく彼女に昇格を促すのも、遊撃士協会としての目的があった。カルバード共和国では現在かつてないほどの好景気が続いていて、大陸中の資本が流れ込んでいる。そして金があるところに人が集まり、争いごとは生じる。そのトラブルに対する抑止力として彼女に白羽の矢が立ったのだった。
 時間は進み、ある時、あるところ。エレインはギルドの仕事帰り、行きつけのバーに立ち寄る。顔見知りのマスターとも話せるカウンターの席へ。「いつもの」ではなく、適当に酒を注文する。出されたのは美しいカクテルだった。蒼耀石のような透き通った青色から、心が落ち着くような翡翠色へのグラデーション。
 気の利いたマスターに感謝しつつ、エレインは聞く。「何か新しい情報があった?」
 マスターはいわゆる情報屋でもあった。遊撃士の立場として、ある事件の情報の手配を頼んでいたのだ。
 事件は、とある兄妹の失踪事件について。何の背景もない家であり、家出の線も薄く、金目当ての脅迫状もない。依然として足取りはつかめない。
 失踪した場所は一つの手がかりとなった。最近共和国に流通し、裏社会の秩序の乱れによりばらまかれつつある違法薬物……ドラッグの取引現場と、失踪したエリアが重なっているのだった。
 だが、マスターは兄妹や手掛かりとなるような情報はないと言う。今は動くに動けない……そんなもどかしい状況の中、エレインは一人の幼馴染のことを思い浮かべる。
 青みがかった癖のある黒髪と、懐かしい顔。その幼馴染は数年前に離れ離れになり、ある日突然街に戻ってきて、堅気とは言い難い『仕事』を始めたという幼馴染。
 そんな、裏社会に片足突っ込むような幼馴染に、連絡の一つもよこさない幼馴染に対し、初めに出る感情はいら立ち。「……帰ってきたのならどうして会いに来ないのよ……人がどれだけ心配したと思って……!」
 そして、次に出たのは、まるで自分が幼子に戻ったような言葉だった。「なんで……どうして私を置いて行っちゃうの……」
 そこに現れたのは、エレインが思い浮かべた幼馴染ではなかった。もう一人の幼馴染……政府筋で働いている年上の男だった。
 偶然居合わせたことに驚きつつ、もう一人の幼馴染と言葉や世間話を交わす。
「時代は今、新たな英雄を求めている──それは確かかもしれねない」そんな言葉が印象に残りつつも、彼は本題に移った。
「あの地区をシマにしていた組織を特定した。有力な証拠も押さえている」
 後日、エレインは幼馴染の情報をもとに、遊撃士として行動を開始した。兄妹の行方を明らかにするため、アジトへ同時に乗り込んだのだ。
 立ちふさがるマフィアは、正直大した戦闘力もない者たちだった。エレインは順調に攻略し、リーダーさえも下して部屋の奥に兄妹が囚われていることを明らかにする。だが──
「先に自分の方から名乗るのが礼儀じゃないか? 麗しきギルドのエース殿」
 男の声がした。光学迷彩らしきなにかによってその姿をくらませ、アジトにいた『下請け』たちを『ゴミ掃除』と称して無残な肉塊とした傲慢な男の声。
 敵は、強かった。勝てないと判った。それでも、この場で逃がすわけにはいかないと直感が告げる。
 理の境地に至ったような、そして理解のできない強敵。逃がしてしまったその男の言葉だけが、耳に残る。
「万物の根源には恐怖がある──支配も、複縦も、生産も共存も秩序すらも、恐怖なしでは成り立たない。だから俺は究極の恐怖を求めている」
 男が立ち去った後……エレインは兄妹を救出した。
 兄妹は確かに、恐怖に駆られていた。妹が、エレインに向けて刃を突き立てたのだ。それを、素手で受け止め、怒ることもなく、エレインは少女に優しく微笑む。
「それだけじゃないはずよ。人は恐怖に支配されるだけの生き物じゃない。諍う勇気を持てる。あなたのお兄ちゃんのようにね」
 後日、共和国ギルド、首都総支部。
 エレインは、『とある所要』でそこにいた。席を共にするジンに、先日の事件の背景を語り合う。
 救出された兄妹は、心のケアが必要でも、ちゃんと元の生活に戻れるだろうとのことだった。
 エレインは自覚する。彼らと出会ったことで、少なからず触発されたことがある、と。
「さぁて、ここからが今日の本題だ」
 エレインは、それを受けることにした。
 せめていつか本物の英雄が現れた時に、その隣に並び立てる自分になれるように──
「おめでとう──《剣の乙女》、A級遊撃士、エレイン・オークレール!」

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2.エレイン・オークレールの素性

 本編での情報では、とある会話で、1207年3月当時、「共和国に新たな最年少A級遊撃士が誕生するかもしれない」というものが初出。その時は、名前も性別も、どんな人物かすらも判りませんでした。
 本編から一ヶ月が経ち、無料アップデートにて公開されたそのエピソードは、少なめながらも共和国のことをほとんど知らない現在の我々ファンにとって、決して薄くない情報を与えてくれたのだと思います。

 ・名はエレイン・オークレール。
 ・二つ名は《剣の乙女》
 ・1207年3月、創の軌跡の時系列時点でB級。9月の事件と心境の変化を経て、A級遊撃士となる。
 ・高等学校卒業後、そのまま遊撃士の道を選ぶ。
 ・雑誌のモデルや映画主演のオファーが来るなど、容姿や佇まいは優れていると思われる。
 ・自身は、A級の格は分不相応だと思っている。
 ・年齢は恐らく20代前半。
 ・不動のジンをして『真面目なタイプ』
 ・二人の男の幼馴染がいる。
 ・一人は年上でCID分析官。メガネをかけている。
 ・もう一人は最近街に帰ってきて、堅気でない仕事を始めたらしい。蒼みがかった黒髪。
 ・家族たちは、当初遊撃士になるというエレインに反対していた。

 ※A級遊撃士は、公式における最高位のランク。既出のA級は達人以上の実力を持っている。
 ※CIDはカルバード共和国における中央情報省の略称。
 ※芸術において、帝国ではオペラ、クロスベルでは劇団など。対し、共和国では映画が流行している模様。
 ※最年少A級遊撃士サラ・バレスタインは、閃の軌跡Ⅰで25歳。その前年に遊撃士を辞めトールズに就職している。元A級として認知されていることから、昇格してからそれなりの期間は活動していたと思われる。
 ※仮にサラが23歳で昇格したのだとすると、『紫電に並ぶ最年少』かつ『高等学校を卒業して遊撃士になって早数年』は、20~23歳ではないかと個人的に推測。

 エレインおよび周辺人物に関する情報はこんなところでしょうか。
 《剣の乙女》という二つ名は、遊撃士における《重剣》《銀閃》《紫電》《方術使い》《不動》など、容姿や得物の特徴をそのまま表しやすい遊撃士の中では、まあ判りやすい気はします。

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 後述しますが、エピソードの中で描かれる内心と独白は、アリオスのようでないにしろ自戒的で、ジンの言う『真面目』に合っている。
 今までの登場人物において、華やかで有名で登場人物やモブキャラから愛でられるような存在は、クローゼ、ティータ、キーア、リーシャ(not銀)、アルフィンなど。彼女たちは多くがその地位や芸術的な実力において秀でており、主に護られる象徴としてのイメージが強かった気がします。プレイヤー目線からのゲーム的な能力、あるいは彼女らの素性を知る仲間たちの評価ではなく、表におけるモブキャラの評価です。
 対し、女性で有名で実力の高い人物は、オーレリア、クレア、サラなど。
 ゼムリア世界の一般人から見て、アイドルのように人気が高く、かつ戦闘能力の高い人物と言うのは、なかなか珍しい気がします。


3.共和国における遊撃士の特性、背負わされるもの。

 別記事でも書いたように、カルバード共和国は世界大戦を経て、帝国からの資金と東からの移民が集まる大陸規模のホットスポットとなりました。

【創まりの先へを読み解く~ある軌跡ファンの雑記考察~】

 そんな場所ではジンが言ったように、共和国において遊撃士の需要は高まる可能性はあります。
 ただ、エレインが葛藤したとおり、遊撃士には『人民保護』と『内政不干渉』の原則があり、『それが犯罪であっても守るべき市民に危害が加わらなければ動けない』というジレンマがあります。これは、クロスベルに近いものです。
 それともう一つ。共和国には、元から『東方移民とカルバード共和国元々の国民との軋轢』──いわゆる『民族問題』がありました。

 ゼムリア大陸各国における遊撃士協会の特徴といえば、時代による差はあれど、
①リベール王国:軍と協力し綿密な連携での捜査
②クロスベル自治州:遊撃士は歓迎されつつも、問題の根本解決はできないジレンマ
③帝国(閃シリーズ):遊撃士そのものが動きにくい、存在意義そのものを考察しうる環境
④レマン自治州:遊撃士協会の総本山であり、エプスタイン財団の導力技術を僻地に広める随行団にも参加できる
 といったところではないでしょうか。そして、
⑤カルバード共和国:クロスベルのようなジレンマに加え、民族問題という特異なバランス感覚を考えるべき場所
 になったのでは、と考えます。

 遊撃士が遊撃士として、そのまま勧善懲悪の正義の味方とはなりづらい共和国。そして、時代は軍拡→世界大戦といった時代から、(メタ的には)世界そのものの秘密に迫る展開、世界の存亡そのものを問う時代になる気がします。であれば、そんな時代において人心は、平和な時とはまた違う拠り所を求めていく……正義の味方となりやすい遊撃士は正義の象徴としても祭り上げられやすいのなら、そこに生きる遊撃士、ジンをはじめ、さらにはエレインも、大きな課題を背負わされることになるでしょう。

4.蒼と翡翠が示すもの

 《そして、乙女は剣を手に進み続ける》はエレインの視点で語られ、さらに現在の出来事と共鳴し合うように彼女の深淵が語られています。
 まず、一人称であるということは、彼女の注目する内容は少なからず彼女の興味や、気にかけているものに影響を与えていると思います。
 その中で、単なる一つの描写ではありますが、やはり彼女が幼馴染を気にしているように感じるものがありました。

 『出されたのは美しいカクテルだった。蒼耀石のような透き通った青色から、心が落ち着くような翡翠色へのグラデーション。』

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 行きつけのバーのマスターに出されたカクテルです。
 堅気でない仕事を始めた幼馴染は、《青》みがかった黒髪のよう。エレイン自身の髪色は、ぼやっと見るに灰色・銀髪のような色ですが、その服装には少なからず、緑──翡翠の色が見え隠れしています。
 マスターが良く知るエレインについて、「今のあなたにはこれが似合っている」と告げた配色のカクテル。酔いと共に、失踪事件の情報を考えるエレインにとって、幼馴染の存在を考える呼び水にもなったような気がします。
 ちなみに、蒼と翡翠が象徴する二つの至宝も未だ登場していないのですが……これは考えすぎでしょうか?

5.止まった時間に立ち続ける少女

 エレインの二つ名は《剣の乙女》。エピソードは、《そして、乙女は剣を手に進み続ける》。
 創の軌跡の本編ではクレアが「未だに《乙女》は……じゃなくってっ」みたいなオモシロ発言もありましたが、エレインもエレインで似たような境遇のようです(上に考察した歳や、また兄妹救出時の会話など)。

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 それはあだ名としての《乙女》でしょうが……彼女自身は、共和国の一般人にも認知されるほどに有名ですし、達人レベルのその実力も織り込み済みです。
 回想の随所に、エレインは自身が強くないこと、核たる芯を持っていないこと、それでも『何者か』になり、『何か』を手に入れたいと思っている、そんなことを考えています。
 それは、未だ彼女が、彼女自身が納得する成果を得ていないということ。他者の評価はともかくとして、自分自身は未だ望む姿になっていていない、ということです。

 個性が重視されるようになった現代においては、次に言う道だけがすべてではありません。けれど女性にとっては、《少女》から成長して《女性》となり、誰かと添い遂げて《妻》となり、そしてやがては《母親》となる。この流れは、多くの人が『世の女性の多くの代表的変化だと、世間が思っているだろう』と考えるものだと思います。
 その過程において、身体的には成熟し、社会の法律としても成人となり、社会の立場もB級遊撃士として認められるエレインは、それでもまだ《乙女》=《少女》と呼ばれている。

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 本来もう女性と呼ばれていいはずのエレインは、過去にあった何事かによって彼女の心の変化が止まり、どれだけ外的な経験や知識や思考を吸収しても、未だその本質が少女であり続けている。彼女の《時》が止まっている。
 そんな彼女が、「自分が英雄のような存在でない、何者でもない乙女のままでも、それでもいつか英雄の隣に立てるように」と誓う。それが、《そして、乙女は剣を手に進み続ける》の真相なのではないでしょうか。

 がむしゃらに進んでいた彼女は、今回の事件を経て信念という剣を手に《進み続ける》ようになった、それでも、まだ彼女は乙女のまま。彼女が一人の《エレインという女性》になれるかは、きっと共和国編の物語と、彼女を取り巻く仲間たち、主人公たち、あるいは敵たちが、積み上げていくのでしょう。

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6.過去を抱いて進みだした《乙女》の行く末

 エレインは、子供の頃に『何者か』になりたいと願った。自分じゃない自分にです。
 同時に「自分の世界がいかに狭苦しいものか、それを思い知らされた」とも語っている。
 『子供の頃』が果たして4歳という自我の芽生えの前後なのか、14歳程度の思春期なのかはわかりませんが……創の軌跡の本編と筆者の今までの考察を考えると、どうもエレインもまたルーファスのように『自分の存在の確立』ができてないように考えてしまうのです。そして、それをルーファスは『本物に勝つことで自分の存在を間接的に本物以上と定義する』としたように、エレインも『今の自分が世界に許容されないのなら、自分でない存在に成り代わる』というような仮初・ハリボテの方法を選んでいるのではないか、と考えます。

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 そうしてエレインは、高校時代の再会を経て、大切なものを手に入れ、理想の自分『自分ではない何者か』になれた。けれど、何者になれたきっかけが『自分』ではなく『誰か』なら、誰かひとりに左右されるほど危ういもの。だからエレインもあっけなく、「結局、気のせいだった」と思うような結果になったのかもしれません。
 ※「なんで……どうして、私を置いて行っちゃうの……」というセリフから、このあたりの出来事に幼馴染が関係しているように感じるのは私だけでしょうか。いずれにしても、青みがかった黒髪の幼馴染は、彼女の心に少なくない影響を与えている存在なのです。

 けど、エレインの真面目な(それでいて、もしかしたら不器用な)性格のせいで、今さら後には引けなくなった。彼女が真面目か、あるいは暴走すると制御が利かないほどに突っ走る様は、『家の反対を押し切って』まで進んだ道(恐らく遊撃士)という回想によく表れています。
 ただ、その時点でエレインにとってあこがれていた正義の味方は、エレインが理想としていた『何者か』ではなかったのでしょう。もはや自分の意志でなく、自分の中の諍えない何かによって突き動かされるエレイン。

 この描写の限り、現状のエレインにとって剣は、リィンにとっての『己そのもの』ではなく、『己を飾る』仮面や盾のように感じます。そうして遊撃士としての実力が上がっていくと、いつしか《剣の乙女》と呼ばれるようになった。仮面をかぶった未熟な自分……自分が望まない『何者か』になってしまう。
 自分でない自分になりたかったのは確か。でもそんな確実性の低い自分では、高等学校の時のように脆く崩れ去ってしまうかもしれない。だから、「また失ったりはしないか、また傷ついたりはしないか」と、足がすくんでしまうのです。
 A級遊撃士という『何者か』は、自分が納得のいく『自分』ではない。だから、栄誉あるA級の称号も怖かったのではないでしょうか。

 ただ、エレインは今回の兄妹の失踪事件について、彼らに会うことで触発されたことがありました。

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 ただの一般人であるはずの兄妹の、その兄は、エレインと何より妹を守るために勇敢に戦った。直前にたたかっていた男が言った「万物の根源には恐怖がある」という言葉を跳ねのけるように。だから『たとえこの先躓いて、派手に転ぶ頃があったとしても、それはそれで構わない』と思えたのでしょうか……。

 『怖くて、次の一歩が踏み出せない』『派手に転んでも構わない』。一つの事象に対するまったく質の違う心構え。
 理想の自分になりたいのに時が止まっていた少女が、進み続けられるようになった決定的な瞬間です。彼女の内面=心にとって、この事件で出会った兄の勇気は、並大抵の先輩や、下手な先達の名言よりもずっと意味と意義にあふれた出来事だったのです。

 ただ、まだエレインは自分を自分だと証明する勇気は持っていないように思えます。『時代は今、新たな英雄を求めている』という幼馴染の言葉を思い出し、『仮初でもいい、自分に英雄の資質があるとも思わない』そして『せめていつか本物の英雄が現れた時に、その隣に並び立てる自分になれるように──』と思う。
 自分が英雄だと思わないのは判ります。けれどこの発言には、『自分という存在が英雄の横に立つ』のではなく、『英雄の横に立つ誰か』という、主体性のかけた理想を感じました。
 《乙女から女性へ》の話で上げたように、この自分の存在を規定するのもまた、共和国編なのかもしれません。

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 共和国のA級遊撃士について、妄想を膨らませた考察を展開しました。
 この記事に書いた《剣の乙女》の心の行く末が、正しかったのか否か……。
 《共和国編》を楽しみに、ゆっくりと待ち続けたいと思います。

 お付き合いただき、ありがとうございました。


次回作 黎の軌跡の考察もどうぞ。


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記事を最後までお読みいただきありがとうございます。 創作分析や経験談を問わず、何か誰かの糧とできるような「生きた物語」を話せればと思います。これからも、読んでいただけると嬉しいです。