雑踏を包み込む歌声
2023/5/26〜2023/5/27
宿でシャワーを浴び、しばらくして夕方。
近所でナイトバザールという催しがある事を知る。
毎日開催しているチェンマイ名物みたいだ。
散歩がてら行ってみる事に。
徒歩数分。
少し大きい通りに出ると、車道の脇にズラリと並ぶ屋台。300m位はあるだろうか。
食べ物に飲み物、お土産から服まで色々。
雰囲気は日本のお祭りそのものだ。
少し車道から中へ入ると、生演奏の音が聴こえてきた。
屋外型のLIVE BARだ。
10代らしき若いバンドが、レッチリのカバーを演奏していた。
一生懸命なのだが難しい曲もあり、所々ミスをして、その度にメンバーが顔を合わせて笑う。
『わかる…楽しいんだよなぁ』
演奏中にそんな事をするのは客に失礼でカッコ悪いという見方もあるだろうが、とにかく楽しそうに演奏している様子が好印象で、こちらも自然と笑みがこぼれる。
と同時に、音楽に頼ってばかりで旅をしていてもいけないな、とも思った。
そんな事はないのだろうが…。
翌朝9:00。既に炎天下。
宿から自転車をレンタルし、郊外まで走る。
頬に当たる柔らかい風と
いつもとは違う、流れる景色のスピード
それだけで何もが新鮮に映る。
それに
「自転車を漕いでいる」
という行動が
その土地で生活している気分で嬉しかった。
『けどやっぱり暑いわ…』
『暑過ぎるわっ…!!』
のんびり爽やかサイクリングが、早速過酷なドMの所業に変わる。
コンビニを見つけては水を買い、一気に飲み干し、再び走る。
謎の一人耐久レースだ。
途中で引き返したら良いものの
『この先に面白いコトがあるかも…!』
という期待を捨てきれず
結局
気温39℃の道中を往復30km走った。
まぁ結果的には楽しかったのだが…。
時刻19:00。
宿で屍の様に倒れつつも、また外に出る。
今夜はサタデーナイトマーケットという、チェンマイで有名な催事があるらしいのだ。
前夜に行ったナイトバザールの拡大版との事なので、目新しさは期待していないが雰囲気を味わいに足を運んだ。
なるほど、確かにすごい人集りだ。
地元の人から観光客、車、バイク、そして屋台が視界の端々までびっしりと連なる。
そのうえ歩きながらの飲酒と煙草が禁止されているので、安全で穏やかに賑わっており、やや幻想的な雰囲気さえ覚える。
そんな中、行列の目立つマンゴースムージー屋台があったので、休憩がてら並んで買ってみる事に。
女性の両手分ほど大きいマンゴーを注文後に皮剥きし、ミキサーにかけ、最後にブロック状にカットした果肉を乗せて渡してくれた。
鮮やかな黄色と夜道のコントラストが気分を引き立てる。
なんだこれ…!メチャクチャ美味い!
ストローから伝わるスムージーの滑らかさ。
その中に、摺り下ろしたての新鮮な果肉にしか出せない、厚みのある口当たり。
濃厚な甘みが舌に伝わり、さっぱりとした後味に変わると、最後は南国らしい香りが鼻から抜ける。
これが驚愕の40バーツ(約160円)…!
ご当地ならではの味、価格に感動する。
その後は雰囲気だけ楽しむつもりでフラフラ歩き回る。
すると遠くから
一際に異彩を放つ歌声が聴こえた
絶えない人と会話で賑わう雑踏の中
緩やかなギターの音色、落ち着いたトーン
まるで
そこだけ切り取られた別の空間の様だ
音に誘われるまま近くに寄ると
なんと
歌っていたのは少女だった
制服を着た
おそらく中高生くらいの子供だ
この喧騒の中、物怖じもせず堂々と
周りに流される事なく
時間の流れを止める様な演奏と存在感
こと音楽においても
人を魅了するには佇まい、雰囲気、オーラ
そういったものが必要だと思うのだが
厄介な事に
それは努力や技術で培われるとは限らない
生まれ持った才能
生き方のスタンス、背景
そこから現れるものが大きい
個人的にはそう思う
久々にそれを感じる演者を見た
スピーカーの上に箱が置いてある
よく見ると、そこには文字が
「For Education」
演奏を終え
路上に軽く頭を下げたその子は
聴き入っていた私に気付くと
一瞬目線をこちらに向け
再び路上を見据えて
軽く目を細めた
私はその箱に御礼を添え
黙って通り過ぎた
2023年3月から世界中を旅して周り、その時の出来事や感じた事を極力リアルタイムで綴っています。 なので今後どうなるかは私にもわかりません。 その様子を楽しんで頂けましたら幸いです。 サポートは旅の活動費にありがたく使用させて頂きます。 もし良ければ、宜しくお願いいたします。