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【自由律俳句エッセイ】そんなにインスタやってそうに見えるか

ガッキーこと女優の新垣結衣さんは、Instagram(以下、インスタ)を使っていないらしい。

本人曰く「映える毎日を送っていないから」との事だ。インスタをやらない理由をこう語るガッキーに対して、称賛や納得の声が多数あったという記事をネットで見た。私はガッキーを少しうらやましく感じた。

高校生の頃から、インスタやってるかと友人らから聞かれるようになった。私はインスタを使っていない。そのためインスタに関する話題になると、大抵の場合会話の流れはこうだ。

知人「インスタやってる?」
私 「やってないよー」
知人「え、嘘、やってないの?何で?」

そんなに驚かなくても。何でと言われても困る。

インスタをやらないのに深い理由がある訳ではない。知らないうちに周りから乗り遅れていたというだけである。

だからといって、じゃあ今から始めようという気にもならなかった。今以上に多くの人と繋がるのが何となく億劫だし、インスタで特に見たいものもない。それに加え、ガッキーと言う事がやや被るが人に見せるほど輝いた日常を送っていないのだ。だからインスタは自分に向いているSNSではない気がしていた。

「インスタやらないの?」と聞かれた際、このように言う事もあったがあまり共感を得られない事が多い。そのうち説明が面倒になり、「興味ないからー」の一言で済ませるようになった。

高2の秋、修学旅行があった。

4日間の日程のうち1日は班行動だった。昼食を取る店も班ごとに決めた。私達が行ったのは、窓から海の見えるイタリアンの店だ。班の女子達は入店するなり店内の写真を撮り始めた。自分は料理だけ撮ればいいかと思っていたので、何も撮らずに窓の外を眺めていた。

メニューを選び料理を待つ間、先ほど写真を撮りまくっていた女子達は皆スマホを凝視していた。ある者は撮ったばかりの写真の加工にいそしんでいる。別の者は必死に角度を調整しながらジュースの写真を撮っていた。

一方男子達はこんな話をしていた。

「めっちゃ写真撮ってるじゃん」
「まあこれインスタにあげるから」
「お前も結構撮ってるじゃん、インスタやってないのにどうすんの?」
「家帰って自分で眺めるだけだけど」
「眺めるだけってまじかよインスタやれよ」
「普通インスタにあげるもんなの?」
「僕もインスタやってるよ」
「ちょっと待って皆インスタやってるの?」
「(女子達にも呼びかけて)インスタやってない人いる?」

挙手したのは7人のうち自分を含めて2人だけだった。
インスタをやっていない男子は言った。

「えー俺時代遅れってこと?」
「うんやった方がいいよ、皆やってるから」

皆やってるからやっぱりやった方が良いのだろうか?

料理が運ばれてきた。写真を撮ってはみたが、おしぼりが映り込んでしまった。一瞬気になったが撮り直さずに私はパスタを巻き始めた。

「インスタやればいいじゃん」「やった方がいいよ」「何でやらないの」という言葉を聞くうちに、私はある疑問を感じ始めた。

なぜ皆インスタをやるのだろう?

そこで、今後私にインスタをやらない理由を聞いてくる人にはその疑問をぶつけようと決めた。

しかし既にその頃、私はインスタをやる今時っぽい人達との関わりが減っていた。気づいたら私は誰からもインスタを聞かれなくなっていた。

大学生になった。やはり私にキラキラした今時っぽい友人はあまりできなかった。

そんな折、数少ない高校時代の友人とのLINEの会話の流れで「インスタ教えて」と言われた。やっていないと言うと案の定是非インスタをやれと勧誘された。やっと聞ける。「逆に何でインスタやってるの?」

「だってインスタの方がLINEより使いやすいし」

インスタとLINEは比較対象なのか。全く別物だと思っていた。

「連絡手段がLINEしかないと、もしLINE使えなくなったら終わりじゃん。だからインスタやってよ」

輝かしい日常を送っていないからやる意味が無いと答えた。

「いや自分も写真とかほぼ投稿してないし見るだけだよ」

この人にとってインスタは単なる連絡手段かつ写真を見るツールなのか。

私がインスタを使わないことに皆が驚いたのは、私が映える写真をアップしていそうだからではなく、皆が使うツールを私が使っていないから、という事にすぎないのかもしれない。

つまり私にインスタをやれと誘ってきた人達は、私の撮る写真や日常に物凄く興味がある訳ではなかったのか。今時の皆がやる事に乗ってこない私を変な人だと認定し、自分達とはタイプが違うと離れていったのだろうか。

「今はやる気ないけど、今後やる可能性が無い訳じゃないから」
自分らしくない返信をし、インスタについての話題を終わらせた。

それから数年経ったが、私は未だにインスタを始めていない。

インスタを絶対にやらないと誓っている訳ではない。だが始めたいと思う決定的な理由も見つからないから現状を維持している。

でも私にインスタがなくても自分なりに輝いた日常を送っているつもりだし、特に不便な事はないからこのままでいいやと最近思っている。
 

「何でインスタやらないの?」と聞かれたら「ガッキーもやってないし良いじゃん」と言えばいい。

ガッキーがインスタを始めたらどうしようか。それはその時に考えよう。


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