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#書く術 note 第13回 【フィードバック編②】田所さんロングインタビュー

■ 編集担当からのフィードバック編です。

みなさん、こんにちは。
『書く術』製作委員会実行委員で、書籍『書く術』編集担当の小倉 碧です。

前回のnoteでは、書籍『書く術』の、著者であり教官(風間杜夫)でもある田中泰延さんと直塚大成さんのお二人が織りなすOJTの様子を、
克明に書き記して頂いているブックライター・福島結実子さんによる、直塚さんへのフィードバック編をお届けしました。

大変僭越ではございますが、
今回はわたくし、編集・小倉によるフィードバック編をお届け致します。

■「書く」ために超大切な、でも超大変なこと

【その1】徹底的に準備する

プロライターとして歩み始めた、直塚大成さんの「初仕事」。
それは、『スローシャッター』の著者・田所敦嗣さんにインタビューし、
本書をまだお読みでない方に、手に取って頂くきっかけとなるよう制作されるリーフレットに掲載される2000字の原稿を、田所さんの人となりや仕事に対する考え方が伝わるよう執筆する、というものでした。

わたくし自身、書籍編集者として「本をつくる」仕事を日々させて頂いておりますが、本の「原稿執筆」のされ方には大まかに、

〇著者の方に、ご自身の手で原稿をご執筆頂く

〇著者の方に何度かインタビューをさせて頂き、お伺いしたお話をもとに、ブックライター(書籍『書く術』における福島さんのような)さんに原稿をご執筆頂き、ブックライターさんが書き上げた原稿を、著者の方にお渡しし、そこから加筆・修正を頂く

という、2種類がございます。

直塚さんの今回のお仕事は、後者の方式でつくらせて頂く場合における、書籍編集者と、途中までは工程が似ているな、と感じておりました。

  1.  ずっとお会いしたかった方と対面する

  2.  「目的」に沿って、しっかりとその方からお話を引き出すべく、事前に用意した質問を投げかける

  3.  (取材時の録音音声を、文字起こしする)

  4.  伺ったお話を元に、原稿の構成を考える

このあたりが、「似ている工程」です。

「3」をカッコ書きにした理由は、編集者それぞれで、文字起こしを自分でする方、プロの方にご依頼して用意する方、と双方存在するからです。ちなみに私は、後者です。

わたし自身は、普段「新書」というポケットサイズの書籍と、
それより少し大きめの「単行本」(ジャンルはビジネス・実用書)の編集を担当させて頂いているのですが、

「4」や、その後に続くライターの仕事、

5.  原稿を執筆する 

は、「1」と「2」の工程がしっかりとできていなければ、
なかなかうまくいきません。普段編集の仕事をさせて頂く中で、
そのことを、噛みしめる日々です。

その点、直塚さんは、田所さんへの取材に臨むにあたって、
『スローシャッター』を何度も音読(!!)していたことや、
鉛筆でびっしり気づきが書き込まれた『スローシャッター』の紙面を拝見したとき、直塚さんの事前準備の徹底ぶりが感じられ、
自分なりの気づきを率直に田所さんに伝えて、
直塚さんだからこそ引き出せる話を伺うことが、きっとできただろうな、
と思いました。

直塚さんご自身は、反省点がいっぱい…みたいに仰っていましたけれど。

【その2】漠然とした質問はしない

これは、ある日の『書く術』の定例会
(製作委員会メンバーは定期的にZoomで集って、制作に関するやりとりを進めております)で、田中泰延さんが仰っていたことです。

「漠然としたとした質問(たとえば、『田中さんにとって、《書く》ってどういうことですか?』みたいな感じの)を投げかけても、相手の方の考えや言葉を「ちゃんと引き出す」ことはできないし、
それは、相手に質問しているように見せかけて、実は自分の考えを開陳しているに過ぎない。
そして場合によっては、「とても失礼」に映る
こともある。

相手の方の書いたことや話したことに対して、
自分(聞き手)としてはどのように感じたか。
それを率直に伝えつつ、質問をすることが大切。

この言葉を聞いたとき、
本当に本当に、
本当に大切な「インタビュアーの心得」だと感じました。

「フワッと質問をする」⇒「結果として、相手の方からよいお話を上手く聞けない」は、我がこととして、非常によく遭遇する瞬間です。
これは、本当に気を付けなければなりません。自戒を込めて。

【その3】納期は厳守する

こちらのnoteの記事でも皆さまにお読みいただいた、
7万8千字もの超・ベリーロングなる文字起こし。

わたし自身、直塚さんがお送りくださって、これを初めて拝読したとき、
びっくり仰天しました。
だって、2時間半ものロングインタビューですよ!!!!
「文字起こしAIの力を借りてもいいんだよ」などという、悪魔の囁きが私の頭をよぎりました。


文字起こしを1度でもされたことがある方は、
「2時間半の音声を全部、自分で文字に起こすこと」
がいかに大変なことか、おわかりになるはずです。

これはわたくし自身の話になってしまうのですが、
映画雑誌を刊行している出版社で社会人1年目の日々を過ごしていたころ、
雑誌編集(といいつつも、半分以上、「記者」の仕事だったように思いますが)の仕事の中で、当時の上司から、「1時間半の録音音声を文字起こし」せよ、との指示がありました。

「まあ、3時間くらいで終わるだろう」
と甘く見ていた私。甘かった。
本当に甘かった。

誇張なしに、「丸3日」かかりました……!

不慣れだったこともありますが、それくらい労力のかかることです。

今回のお仕事のクライアントである、ひろのぶと株式会社の廣瀬翼さんから、「進行スケジュール」のお話を頂いた際、
たしか、取材⇒第一稿提出まで1週間弱でした。

この日程で、文字起こしを最後まで終える、だけでもすごいくらいですが、
直塚さんは、「第一稿」までちゃんと書き上げて、提出されていました。

「締切を何としても厳守する」ことの大切さ。

これは、わたしが大変尊敬する、ブックデザイナーの井上新八さんも仰っていることですが、(ちなみに井上さんは、おひとりで何と年間200冊以上ものブックデザインを手掛ける、超人的プロフェッショナルです)

こちらから何も言わずとも、
自主的にこれをしていただけるライターさんは、
編集者にとって本当に「神」のような存在であります……!

一番最初の仕事から、それを徹底なさる直塚さんの姿勢に、
「プロ意識」をひしひしと感じましたし、
「この方なら、安心してお仕事をお任せできる」と一編集者として感じた次第です。

直塚さんの完成原稿は、
遠からぬうちにこちらの『書く術』noteおよび、『ひとのぶと株式会社』noteで発表されるかと思います。

皆さま、楽しみにお待ちくださいませ。

フィードバック編は以上です。
では。


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