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#書く術 note 第12回 【フィードバック編】田所さんロングインタビュー


■はじめまして。ブックライターの福島結実子と申します。

ツイッター @yumikofh
勝手に写真を貼るのは大抵、田中さんです 

「書く術」プロジェクトの本編執筆担当として、田中さんによる「調べて、書く」指南をまとめる役割を務めてまいります。

どうぞよろしくお願い致します。 

今まで鳴りを潜めておりましたが、そろそろアンタもなんか書きんしゃいとのことで(そう言われたのではありませんが、「今回は福島さんも……」と控えめにおっしゃった編集担当小倉さんの心の声が聞こえた気がして)、ぽちぽちとキーボードを打っております。 

さてさて、直塚さん、まー、すごい御仁です。 

オーディションの応募作としてはイチかバチか感ありまくりの(それが結果的に奏功した)『私と北条政子』

プロジェクトの一員に加わっていただいてからの個性あふれる数篇のエッセイ。

そしてこのたび、初めての依頼案件として『スローシャッター』特別企画、著者・田所敦嗣さんロングインタビューを成し遂げられました。

出来上がった記事の末尾に燦然と輝く(取材・文 直塚大成)のクレジット。
これを大書して表装し、床の間に飾ってもいいくらいの初仕事っぷりでした。

✂︎ 切り取って床の間に額装してください


■「ライター・直塚大成」や、いかに


 ところで、と強引にカットインしてみましたが、私が生業としているブックライティングとは何とも不思議な稼業でして、それぞれ向き合い方は違うと思いますが、個人的には「無色透明であること」を前提条件としているところがあります。
 
もちろん著者の方から話を引き出し文章を構成する者として「たしかに存在している」し、文章自体は「たしかに福島が書いたもの」に違いありません。
でもそこで表現・説明・解説されているのはあくまでも著者の色であり個性であり、主義主張やノウハウです。
 
そういうスタンスで日ごろ仕事をしている身からしても、今回、直塚さんが依頼案件に取り組まれる様は非常に興味深いものでした。
 
自由に書かれた『私と北条政子』やエッセイ群が直塚さん一色、個性炸裂しているのは当然のこと。
 
では、いざ、
 
「ライターとして、クライアントの要望を受け、ある本の著者にインタビューし、まとめる」
 
という仕事に取り組んだときにどうなるのか?

■え、そうやって進めたんだ?(びっくり)
 

私のもとにも、ときどき数千字ほどのインタビュー記事のご依頼が入ります。
 
ある人物にインタビューする。
たいていは媒体の担当編集者さんと一緒に。
依頼の主旨を念頭にインタビューの速記原稿を読み返す。
「この部分を中心にまとめよう」というアタリをつける。
適宜、見出しを立てながら、話の順番を入れ替えたり、バラバラな発話をひとつにしたりと、語られた内容を整理していく。
 
概ねこんな感じでまとめていきます。
おそらくこれがもっともスタンダードな手順ではないでしょうか。
(私だけだったらすみません)
 
が、直塚さんがまず取り組んだのは、「田所さんの魅力をそのまま伝えたい」という考えのもと、「自分の発話をすべて削る」ことでした。
会話を会話でなくすると話の流れがわからなくなってしまいそうなので、たとえ最終形態がQ&Aでなくても、私ならまず採らない手法です。
 
でも直塚さんは、そうしたうえで「徐々に読み手に一番届けたいことを絞り込んでいく」という手順を踏んだ。まるで言葉の山で宝探しでもするみたいに。びっくりしました。
 


■お主、やはり只者ではないな……


 最初にアタリをつけるには思い切りが必要で、それはある種、場数を踏むことで身につく職人的な勘によるものといってもいいかもしれません。
速記原稿を読んでインタビューを振り返っていると、「はい、これ、いただきました!(ありがとうございます)」と思えるひと言がきらきら光っているように見える、なんてことがあるものです。
 
尤も、今回が初仕事となった直塚さんにしても、何も考えずに内容を絞り込んでいったわけではありません。

ご自身も前回のnoteで書かれているように、「田所さんのこんなところを読み手に感じ取ってほしい」という考えは早い段階からありました。

それでも、まず自分の発話を削り、さらに軸を定め、その軸から比較的外れていると思しき枝葉を少しずつ取り除き……と段階的に内容を絞り込んでいったわけです。
 
決して器用でも効率的でもない進め方です。
専業ライターとなって仕事が立て込んできたら、毎回、こういう手順は踏んでいられないんじゃないかと思います。
 
ただ、初のお仕事、初のインタビュー記事執筆という局面で、こんなにも大事に丁寧にインタビュイーから発せられた言葉と向き合い続けるあたり、やはり只者ではないなと唸らされてしまったのです。
 
聡さとは違う、真面目一本のひたむきさに「ライター・直塚大成」を見た気がしました。
 

勝手に写真を貼るのは大抵、田中さんです

■鬼……じゃなくて神フィードバックを経て完成へ


 こうして約78000字から約2000字にまで量的・質的に鍛錬された原稿は、本プロジェクト教官役(風間杜夫)の田中泰延さん、本インタビュー案件の担当編集者である廣瀬翼さんからの懇切丁寧な神フィードバックを経て、さらに練り上げられていきます。

そこがまたすごかった。完成までの過程は今後のnoteで垣間見ていただけるのか、はたまた書籍で初公開となるのか。まだわかりませんが、どうぞお楽しみに。


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