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自分を愛でる(めでる)、全ての人が幸せに働ける世界へ

マインドフルネスを体現している、心豊かな人生を送っている方からまなぶシリーズ第八弾。

今回は、オンラインピル診療サービス「mederi Pill(メデリピル)」を手がける坂梨 亜里咲さん(以後、坂梨さん)。

女性が望むタイミングで妊娠出産できる環境を作りたいと、ピル処方の普及、女性の健康の職域での理解向上、などの活動をされている坂梨さん。

坂梨さんが創業した企業mederiは「私を愛でる」という想いから名前を決めたとのこと。
今回、どうして起業をしたのか・忙しい生活の中でどのように自身をケアしているか、など色々とお話を伺ってきました。

プロフィール
坂梨 亜里咲(さかなし ありさ)
明治大学卒業後、大手ファッション通販サイト及びECコンサルティング会社にてマーケティング及びECオペレーションを担当。その後、女性向けwebメディア会社のCOO、代表取締役も務める。
2019年にmederi株式会社を設立し、2020年3月より自らの3年に渡る不妊治療経験から気づきを得たサービスをスタート。オンラインピル診療サービス「mederi Pill」、妊活サポートプロダクト「mederi Baby(旧:Ubu)」を展開。2021年より実業家・前澤友作氏が設立した前澤ファンドの「13の事業」に採択。

左:坂梨さん、右:箕浦(弊社代表)

箕浦 はじめまして、本日楽しみにしておりました。よろしくお願い致します!

宮崎で生まれ育ち、テレビの世界に憧れた幼少時代

箕浦 まず、起業されるまでの人生について簡単に教えてもらってもよろしいでしょうか?

坂梨さん 生まれは宮崎県で、大学に行くために東京に出るまで宮崎県で育ちました。

箕浦 宮崎県なんですね、どのあたりご出身なんですか?

坂梨さん 宮崎の中でも田舎の方の日向市というところで育ちました。

中学からは宮崎市に家族で引っ越したのですが、宮崎市といっても”田舎あるある”で、集合場所の約束をしなくても、遊ぶところは一つしかないので、解散したら、中心の商店街の通りに集合して遊ぶという学生時代を送っていました。

箕浦 どうして大学進学時に宮崎を出て東京に行こうと思われたのですか?

坂梨さん 田舎に住んでいたこともあり、唯一の娯楽はテレビでした。大人の女性と言えば、その当時の私のまわりには今のように女性が結婚後もフルタイムで働くという人がいなかったので、パートタイムでスーパーなどで働いている女性か、テレビの中で輝いている女性の芸能人の方、しか知らなくて。

自分はテレビの中の人になりたいと思って東京に上京することにしました。宮崎にいた時から、タレント活動をしていて、東京に行く機会も当時からあったこともあり、小さい頃から東京にいきたいと思っていました。

大学卒業後は、憧れた世界ではなくIT業界の道へ

箕浦 大学への進学を機に、宮崎から東京に出てきていかがでしたか?

坂梨さん ものすごく刺激があって楽しかったです。

宮崎にいた時は、バイトも禁止されていたのですが、大学に入ってからは、アパレル、コンビニ、飲食などのバイトを幅広くやったみたり。東京だと全国から人も来ているので、色々な方々にも出会えて楽しい毎日でした。

箕浦 新しい体験が色々とあったと。テレビに出る人になりたいという想いは大学進学後もありましたか?

坂梨さん テレビなどを通じた表現者になりたいと思っていたのですが、なかなか難しかったです。

アナウンサースクールに通っていたり、女子大生タレントとしての活動もしていたのですが、タレント活動もアナウンサーとしての就職活動も上手くいきませんでした。

箕浦 その後、アパレルのEC販売の会社に就職されていると思いますが、どういったきっかけで入社されたのですか?

坂梨さん 目標を見失ってしまった中で、自分が好きなものは何かについて、過去の体験から考え直してみました。

そうすると、宮崎ではアパレルブランドの店舗があまりなかったので、幼少期からインターネットで通販でものを買っていたり、大学入学後もアパレルが好きでインターネット通販でものを買っていて、インターネットでショッピングをするのが、意識はしてないけど好きなことだったのだと気づきました。

箕浦 自身の人生体験を振り返ることで気づいたのですね。

坂梨さん はい。それでご縁があったアパレルのEC販売の会社に就職することとなりました。

学生時代にはタレント活動でCDも発売

自分の価値を認めてくれる環境を大切にする

箕浦 就職後から起業まで7,8年間ほど働かれていると思いますが、その時はどういったことをされていたのですか?

坂梨さん 1年目は、カスタマーサポートとか商品のECサイトへの登録など現場に近いところを担当していました。

ただ、2年目で新卒で入社した会社はやめて、大学時代に出会った友人が立ち上げた会社に4人目のメンバーとして転職しました。

箕浦 同じ業界(アパレルのEC販売)の会社に転職されたのですか?

坂梨さん 少し近いのですが違います。ECで購買する時、ユーザーの方は商品について情報収集をされてから購買することが多いのですが、購買の前の商品紹介などをするメディアを作る会社に転職しました。

二、三十代の女性をターゲットとしたメディアで、自身もよくメディアで商品を確認してから購買していたので、まさに自分だなと思って、楽しそうという理由で転職を決めました。そこでは最初は記事ライティングを担当していて、1日に多いときは20記事など書いて、配信をおこなっていました。

箕浦 20記事って物凄いボリュームですね、、。

坂梨さん はい、サービスも上手く立ち上がって、転職してから一年以内には他社にM&Aで会社が売却となりました。私は、その後も会社に残って、ディレクターを経て、最後は代表取締役と、より上流工程の部分を担当するようになりました。

箕浦 忙しく働かれてきたのかなという印象ですが、その当時、何か達成したい目標などあって頑張っていたのですか?

坂梨さん いいえ、特に中長期的にこうなっていたいなど目標はなく、いま目の前にあることを一生懸命やっていました。

ただ、一つ意識していたのは、自分の価値を認めてくれる環境に身を置く、ということを意識して働いてきました。

箕浦 なるほど。

坂梨さん 成長や幸せを感じる時に、外部要因と内部要因があると思っていて、内部要因である程度モチベーション・やりがいを感じるようなマインド思考を持てたとしても、外部要因として自分を評価してくれない環境に身を置いてしまうと、中長期的には上手くいかなくなると考えています。

箕浦 それはそうかもしれないですね。何かそう思うきっかけはあったりしたんですか?

坂梨さん 社会人一年目で、偶然に他の方の給与を見る機会があって、ほどほどに仕事をしていた中途入社の方が想像以上に高い給与をもらっていることが分かり、世の中は完全に平等には出来ていないので、その辺り意識して上手く生きていくことが大切だなとその時に感じました。

当時の坂梨さん

30歳になる手前で起業、当初はことごとく失敗

箕浦 最後は、社長もやられていたと思いますが、どうしてご自身で起業しようと思われたのですか?

坂梨さん 最初は起業をするつもりもありませんでした。ただ、社長ではありましたが、売却先の会社の子会社社長という形だったので、やりたいことが出来ているようで出来ていないという感覚がずっとありました。

箕浦 最終決定権があるようでないと。

坂梨さん はい、新規事業を提案しても、親会社の方向性と異なるから難しいと却下されたり。また、給与も保証されていたので、少しぬるま湯につかっている感覚もありました。

そのような時に、周りにも起業している方が何人もいたのもあり、起業に対する心理的ハードルも低く、やりたいことが100%できる環境で新たにチャレンジしたいと思い、起業を決断しました。

箕浦 なるほど。2019年に起業されたと思いますが、どのような想いで今の事業を始めたのですか?

坂梨さん 今とは違った事業を当初はしていました。私自身が不妊治療で悩んでいたこともあったので、妊娠を望む女性をターゲットに、妊娠をする体づくりに良い成分を配合したサプリメントの事業を立ち上げました。

箕浦 その事業は上手く立ち上がりましたか?

坂梨さん それが、全然上手くいかず、悲惨な一年となってしまいました。外部から資金も調達しその事業にかけたのですが、マーケティングなど様々な面で上手くいかず、大変でした。

最初に手がけていたサプリメント事業

新規事業で女性が働きやすい世界を目指す

箕浦 最初の事業は上手くいかなかったということですが、その後、今のオンラインピル診療の事業に変更されたのですか?

坂梨さん はい、元ZOZOの前澤社長が募集されていた企画(”【総額100億円】10億円を10人の起業家に投資”)に受かり、投資を受けることができまして、前澤社長とディスカッションする中で、今の事業を始めることとなりました。

箕浦 どういった経緯で、オンラインピル診療の事業領域を選ばれたのですか?

坂梨さん 女性の人生の中で、出産の与える影響は大きく、女性が望むタイミングで妊娠出産できる環境を作りたいと、自身の経験から考えていました。

当初は、卵子凍結など他の事業を考えていたのですが、女性への経済・時間的負担も大きいので、日本ではまだ浸透に時間がかかるかと考え、前澤社長との議論の中で諦めました。

そのような時に、データを見てみると、ピルの服用率が高い国はジェンダーギャップ指数が高く(男女格差が小さい)、相関があることが分かっており、日本は服用率もジェンダーギャップ指数も低く(男女格差が大きい)、ピルの服用の普及が、より女性の活躍推進や健康に大きく寄与できるのではないかと考えるようになり、今の事業に取り組むことに決めました。

箕浦 キャリアと妊娠出産の時期を設計できる環境の方が、ジェンダーギャップが低くなるということですね。

坂梨さん はい。競合のサービスも多くある市場なのですが、私もずっとピルを服用し仕事とプライベートを両立していた背景もありますし、将来的な市場成長の観点から市場を見極めて、今の事業に決めました。こういった市場選択の見方は、前澤社長から多く学ばせていただいたと感じます。


「私を愛でる」、mederi(メデリ)という社名をつけた想い

箕浦 社名はmederi(メデリ)という名前をつけられているかと思いますが、どのような想いで名前をつけられたのですか?

坂梨さん 今も自身のことがあまり好きでなかったり、実は、私は自己肯定感が低い人間で。不妊治療をしていたときも、妊娠が難しいというだけで、自分が当たり前のことができない人間のように感じてしまったり。

そのような時に、「自分を愛でる」ということが、すごい大切だと実感していたので、その想いを込めました。

箕浦 多忙な生活を送られてきていると思いますが、”自分を愛でる”ようなセルフケアの習慣は意識をされていたりしますか?

坂梨さん 昔から、土日のどちらかは、完全にフリーの時間として家でぐだぐだしたり、あとはマッサージや定期的な運動としてヨガ・ピラティスに通ったりしています。睡眠も7時間はとることを意識しています。

箕浦 素晴らしいですね。経営者の方で、睡眠をきちんと毎日7時間取れている方は少ないと思います。

坂梨さん 睡眠不足だと、肌や気持ちの調子も大きく下がってしまうので、ちゃんと取るようにしています。

睡眠時間を確保するために、職場から徒歩10分圏内の場所に住むようにしています。

箕浦 平日の一日はどういった過ごし方をされていますか?

坂梨さん 会社としての勤務時間は10-19時なので、そこは働いて、会議や会食が時間外に入っている時もあるという感じですかね。

箕浦 仕事もやろうと思えばいくらでも出来ると思いますが、どのように仕事量のコントロールを意識されていますか?

坂梨さん 大事な会議などはもちろん出るようにしますが、会食については多くても週1回までで、本当に大切なものであったり、気が合う方でないと行かないと決めています。行ってストレスが溜まるかなと感じる予定は、入れないようにしています。

箕浦 スケジュール自体を忙しくならないようにコントロールされているんですね。

今後、どうやって新しい市場、習慣を広げていくか

箕浦 弊社はマインドフルネスなど休む習慣を日本で広げていきたいと思って活動しているのですが、mederiもピル処方を当たり前の選択肢として普及していく上で、何か意識されていることなどありますか?

坂梨さん 啓蒙活動が非常に重要な領域だと考えています。若い女性の中ではある程度浸透してきていると感じるのですが、親世代とか男性にとってみれば、ピルは、卑猥なものであったり、避妊するものというイメージが残っていたりするので、その辺り変えていきたいなと考えています。

箕浦 若い女性の間ではすでに浸透してきているのですね。

坂梨さん はい、メデリピルも20代の方を中心に多くの女性に使って頂いています。メデリピルのユーザーは半数以上が初めてピルを服用される方なので、今後も伸びていく余地が大いにあると考えています。

箕浦 今後も他の世代にも浸透していくといいですね。

坂梨さん はい。面白い傾向があって、最近テレビCMを打った時に、大きく利用が伸びた世代が10代だったんです。保護者の方がCMを見て、お子さんに勧めてくれたのかなと考えています。

最近では、お母さんと娘さんで一緒にご利用いただいている親子ユーザーも増えてきています。

箕浦 今後も若い世代を中心に浸透していきそうですね。自身も男性として、女性の健康について、まだまだ勉強していかないといけないなと思います。

浸透が増えた背景として、mederiさんのような事業者の方々の活動もあると思いますが、他に何かあったりしますか?

坂梨さん そうですね、事業主も増えてきて発信が増えているのと、あとは著名人やインフルエンサーの方々も、自身のSNSなどで、生理など自身の健康や悩みについてオープンに発信されるようになったことも大きいのかなと思います。

今後は、全ての人が幸せに働ける世界へ

箕浦 今後、女性にとってより働きやすい社会にしていくために、こうあればいいなと思うことなどありますか?

坂梨さん ちょっとしたお節介が大切かなと思います。

箕浦 お節介とはどういうことでしょうか?

坂梨さん 心と体の健康は、本来は大切ですが、生活していると後回しにしてしまいがちだと思うんですよね。

不調であっても自分で気付けなかったり、気づいても頑張ってしまったり。そのような時に周りの家族や企業のコミュニティが、”少し休んでみない?”、”こういう習慣はどうかな?”とか、お節介のような言葉をかけたり、環境を作ってあげることが大切だと考えています。

箕浦 なるほど。そういう意味でのお節介ですね。

坂梨さん 例えば、無償での健康診断などそうですよね。そういった機会がないと、中々私たちは健康に対して向き合えない。

mederiのオンラインピル処方も、最近では、理解のある企業の方に福利厚生として導入が増えてきたりしています。

法人向けプランも開始

箕浦 そういうように、周りで”お節介”の仕組みを作っていくことは大切ですよね。企業側も費用が発生するので、導入を決断するのに難しい部分もあると思いますが。

坂梨さん 今、人口減少が問題になっていて、国が出生率を減らすために、出産に対して助成金を出すということをしていますが、自身が安心・心地よいと思える環境でないと、そもそも産みたいと思えないじゃないですか。

箕浦 そうですね、自分が充実していて、はじめて他人をケアできる余裕が生まれてくると思うので。

坂梨さん 自分の心と体が健やかであって、はじめて産みたいと思えると思います。なので、メディテーションとか、ピル処方もそうですし、セルフケアの習慣に対する国からの助成金があればいいなと、ものすごく感じます。

そのために、なぜセルフケアが大切で、どういった効果があるのか、多くの方の声やデータを集めていって、定量的に大切だなと思ってもらえるように、動いていければと考えています。

箕浦 素晴らしいですね。今後、会社としてどのようにしていきたいとかありますか?

坂梨さん 今は、オンラインピル処方で女性の健康についてサポートを行っていますが、今後はより多くの方が”自身を愛でる”社会に貢献できるように、LGBT含めジェンダー関係なく、お互いをケアできるよう、健康サポートの対象を広げていければいいなと考えています。

箕浦 最後に一言。坂梨さんもかつて自身に自信がなかったり悩まれていたと思いますが、かつての自身や、同様に悩まれている方がいたら、どのように声をかけられますか?

坂梨さん そうですね。自分を大切にするとか、余裕のある人がすることかと思うかもしれないですけど、本当にちょっとしたことでもいいと思ってて。頑張ったご褒美にケーキ食べるとか、10分単位でもいいから自分の好きな趣味に時間を費やすとか。

自分を大切にする習慣を少しでも始めてみてくださいと、声をかけてあげたいです。

箕浦 有難うございます、ちょっとしたことからで良いので、習慣にして、少しずつ変わっていけると素敵ですよね。

今回のインタビューとても楽しかったです、有難うございました!

インタビューを終えて

日本で新しい習慣を広げて、女性の健康に貢献されようと活動されている坂梨さん。自身の事業と被るところもあり、大変勉強となりました。

特に、多くの人が健康である社会であるために、ちょっとした”お節介”が大切だという話が印象的でした。日本社会の中でセルフケアが一つの習慣として広がり、より好きなことに長期的に頑張れる、世の中になっていけばいいなと思います。今回、素敵なお話を有難うございました、今後の坂梨さんの活動、大変応援しております!

代表取締役(箕浦 慶)プロフィール
オーストラリア・パース生まれ。2015年に東京大学工学部を卒業、チームラボに入社。2016年までスマートフォンアプリのエンジニアとして開発業務に従事。2017年に米Bain&Company(戦略コンサルティングファーム、東京支社)に転職し、経営戦略の立案に従事。2021年にUpmind株式会社を設立。瞑想歴はゴア(インド)で体験してから10年以上。日本最大のマインドフルネスアプリUpmindの開発者。

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