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都民の力を活用した盛土の見守り

UPGRADE with TOKYO 第26回(テーマ「都民の力を活用した盛土の見守り(安全性確保)サービスの開発・普及・利用促進」)を開催しました!

東京都が抱えるさまざまな課題の解決に向け、これまでにない製品・サービスをスタートアップ企業が紹介するピッチイベント「UPGRADE with TOKYO」が開催されました。第26回目となる今回のテーマは「都民の力を活用した盛土の見守り(安全性確保)サービスの開発・普及・利用促進」。ドローンによるサービスを提供する企業など5社がピッチに臨み、東大発スタートアップの株式会社アーバンエックステクノロジーズが優勝しました。盛土は、あまりなじみがないテーマですが、都民が参加しやすいサービスを提案した点が評価されました。

危険な盛土を全国一律の基準で規制する法律が成立

2021年7月に静岡県熱海市伊豆山地区の逢初川で発生した土石流は、死者27名、行方不明者1名という甚大な被害を発生させました。逢初川源頭部に造成された盛土が崩壊し、大量の土砂が下流域へ流下したことにより、被害を甚大化させたと推定されています。
こうした事態を踏まえ、危険な盛土等を包括的に規制し盛土等に伴う災害を防止する「宅地造成及び特定盛土等規制法(通称:盛土規制法)」が令和4年5月に成立しました。
都では、この法律に基づき、令和6年度に新たな規制区域の指定を行っていく予定です。

不適正盛土の早期発見と既存盛土の経過観察

盛土等に伴う災害を防止するためには、許可を受けずに行われる不適正な盛土等を早期に発見し適切に対処すること、既存の盛土の経過観察を行い適正な状態を保つことの2点が重要です。
都では、盛土規制法に基づき、盛土等によって人家等に被害を及ぼしうる区域を広く規制区域として指定する予定です。このため、不適正盛土への対応としては、行政による監視に加えて、都民の方から広く情報を集めることが有益です。
また、既存盛土への対応としては、擁壁の変状等、日頃から定期的な観察を行うことが重要ですが、都内には1,500を超える大規模な盛土があり、効率的な情報収集が課題となっています。
しかしながら、都民の方の多くは、盛土といってもなじみがなく、不適正な盛土や危険な盛土がどういったものなのか、イメージが難しいと思われます。こうした状況の中、都民による情報提供や都による情報収集を容易かつ効率的に行える環境整備が必要と考え、今回のテーマを設定しました。

■第26回優勝社:エントリーNo.1 アーバンエックステクノロジーズ
ドラレコの画像から路面の損傷箇所を自動検出する技術

アーバンエックステクノロジーズは、スマートフォンやドライブレコーダーを用いた道路の総合管理ツール「RoadManager(ロードマネージャー)」を提供しています。車載のスマートフォンやドライブレコーダーで撮影した画像から、路面の損傷箇所をAIで自動検出し、Web上の画面に地図や損傷の詳細な情報を表示。道路管理者が補修対象の選定や補修箇所の指示書作成を行うシステムです。自治体などへの導入実績はすでに20を超えています。

車載カメラ映像から盛土の異状を自動検知

提案したサービスの一つが、RoadManagerを用いた自動検知です。車載カメラ映像から見える範囲における盛土の異状を自動検知し、Web管理画面のマップに表示して管理します。また、市民協働アプリMyCityReportを活用し、都民が盛土を発見・投稿すると、管理者は画像と位置情報を確認できます。このほか、盛土の認知度を高める施策にも力を入れる提案となっていました。具体的には違法と思われる盛土や沈下・亀裂が見られる場所を投稿する地域イベントを開催。また、通学路の点検時期に公立校と連携した特別講義やアプリ投稿イベントの実施を提案しています。

■エントリーNo.2 株式会社ORENDA WORLD
仮想空間を活用した検知システム

株式会社ORENDA WORLD(オレンダワールド)が提案したのは、仮想空間を利用した盛土AI検知システムと盛土周知アプリケーションです。
仮想空間シミュレーションを活用したAI盛土検知システムで、撮影時の天候を再現することにより、雨や夜といった条件下でも検知が可能です。また、都民がAR技術を活用して盛土を検知する盛土周知アプリケーションの導入を訴求しました。

■エントリーNo.3 株式会社スカイマティクス
盛土の状況をリモートでモニタリング

株式会社スカイマティクスは、都民がドローンやスマホで撮影した画像を、「KUMIKI」という3Dモデルを自動生成するシステムで管理し、盛土の状況をリモートで確認する、住民参加型の見守りサービスを提案しました。

■エントリーNo.4 Cellid株式会社
投稿動画に基づき3Dモデルを作成しWeb上で共有

Cellid(セリッド)株式会社が提案したのは、カメラ映像をインプットして空間を認識する「Cellid SLAM」を活用したサービスです。都民が撮影した動画から3Dモデルを自動作成しWeb上で共有、都が違法性を検討・判断します。これによって現地情報を的確に判断できるようになり、調査の効率化につなげることができます。

■エントリーNo.5 エアロセンス株式会社
リアルタイムに多拠点の同時配信を実現

エアロセンス株式会社は、自社開発のVTOL(Vertical Takeoff and Landing)ドローン、エアロボウイングを活用した事業を展開しています。エアロボウイングは、ヘリコプターのようにどこからでも離陸し、飛行機のように水平に飛行でき、最大航続距離は一般的なドローンに比べ約10倍の50キロメートルに達します。このため、一度に広域の状況を把握することが可能。また、クラウドサービスを介し、リアルタイムに多拠点の同時配信を実現します。

 
 以上、多岐にわたるアイデアが発表されたなか、ピッチイベントで優勝したアーバンエックステクノロジーズは、今回のサービスを東京都モデルとして確立させ、他自治体へ展開することを提案しています。実現すれば、全国の盛土対策推進の一助となるかもしれません。


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