禍話リライト【怪談手帖〈未満〉「海を臨む家」】
Aさんの一族の持ち山に、普段は顧みられない廃屋があった。
緑の間から張り出すように建てられていて、遠目に辛うじて海が見えるロケーションだ。
一族の羽振りが良かった昭和の頃、遠縁の人々を住まわせるのに使われていた家らしく、その人たちが出て行ってからは管理が面倒で長いこと放置されていたのだという。
ある時、Aさんとお兄さん、従兄弟の3人は「その家を見分し直す」と言って、父方の叔父に駆り出された。
大雑把な一族には珍しく、神経質でがめつかった叔父は、家一軒の地所を遊ばせておくくら