見出し画像

なつの栞㊺ 母を想う

親友は、高齢のお母様と二人で暮らしています。
お母様は、優しく、愛嬌があり、しっかり者で愛される存在でした。

数年前、一緒に買い物に行った時のことです。
道の反対側から、家族の姿を見つけると、赤信号にも関わらず、渡ってくるような動きを見せたのです。初めて「おかしいな」と感じた瞬間です。

それから、同じ話を何度も繰り返している事に気が付きました。
「もしかして、認知症か」と思い、専門医を受診しました。
結果は「認知症」の診断でした。

お母様のために、デイサービスを利用することを決めました。
「明日は出かけるの?」「何時に行くの?」「何しに行くの?」「何処へ行くの?」「何着ていけばいい?」を、不安気に繰り返し問いかけてきます。

親友は、お母様の問いかけに、優しく、寄り添い、決して怒らず、それぞれの質問に丁寧に答えます。
何度でも、同じ質問に、同じように答えます。
その対応に、お母様は、安心して部屋に戻り眠りにつきます。

食事やおやつも冷蔵庫に入れておくと、あるだけすべて食べてしまい、利用したいと思うときに「ない」と言うことが何度もあったため、今はその都度、食材を購入しています。

親友は、「しっかり者だった母も、認知症になった母も、自分の母です。だれでも年を取れば認知症になる可能性があります。そう思えたとき、母の認知症を受け入れることができました」と話していました。

親友が、認知症を受け入れられた時、お母様も不安が少し和らいだのか、穏やかに安心して暮らせているようです。
病気になっても心の奥の相手を想う気持ちは、伝わるのですね。

親友は、時にはイライラしたり、泣きたくなったり、怒りたくもなると思います。それでも、自分の気持ちをコントロールしながら、試行錯誤を重ね、細やかな対応を心がけています。なかなか、ここまでの対応は出来ません。親子ならなおさらです。頭がさがる思いです。

これからも、親子とも、お元気で幸せに暮らして行かれることを、心から願わずにはいられません。
くれぐれも、無理せずに、気分転換しながら、自身の健康にも気を付けて、過ごしてくださいね。

                           御室文美子

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?