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詩ことばの森⑪「きく きこえる」

以前、福祉の相談員をしばらくしていました。相談のお仕事は、わたしの感覚では、およそ八割以上は「きくこと」でした。どれほど知識があっても、相談に来られる方の話を、しっかりきけなければ、適切な相談のお仕事はむずかしいと思いました。反省の毎日でしたが、その方の思いに寄り添うことがわずかでもできたかと感じた時、ふしぎに解決へと進んでいた体験が、何度かあったことを覚えています。それでも、やはり人が人の話を「きくこと」は本当にむずかしく、わたしはおそらく苦手なのだろう、と思いながら書いた詩です。

きく きこえる
 
ひとの話を きく
くりかえし きく
くりかえし くりかえし きく

きいても わからなければ きく
きいても わからないから きく
わからないよ と口をきいた
わからなければ くりかえしきく
くりかえし くりかえし きく

どうして わからないのだろう
どうして わかりあえないのだろう
わたしの心に きく
くりかえし くりかえし きく
ことばにならなくても きく

いつのまにか 夕ぐれだ
風の声がきこえる
きかなくても きこえる
くりかえし きいたことのある
いつか どこかで
なつかしい声が きこえてくる

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