徳島県美波町のウミガメが問いかけるもの #SDGs
地図で見ると四国の「右下」に位置し、ウミガメが上陸することで知られる徳島県美波町(みなみちょう)大浜海岸。ここには、世界唯一のウミガメに特化した博物館がある。
1950年、戦後の食糧難の時代、肉を取るために無残にも殺されたアカウミガメの亡骸を見た中学校の先生と生徒が涙を流して憤慨。ウミガメ研究会を発足させ、ウミガメの産卵回数の記録や飼育研究を始めた。当時の日本では、人々の動物保護への関心はまだ低かったが、時代に先駈けて生き物を見守り、記録に残し始めたのがこの地域の人々だ。
こうした努力もあり、同海岸では1990年にはアカウミガメの上陸数が220匹を記録したが、近年は一桁台まで減少している。その理由として、同海岸周辺地域の環境変化(街の明るさや人間が出す音等)等の問題に加え、世界規模で加速する、漁業・船舶関連事故や海面温度の変化、野生動物の違法取引等による個体の減少も挙げられている。1億年以上もの間、世界の海を泳いできたウミガメは現在、国際自然保護連合(IUCN)の「レッドリスト(絶滅のおそれのある種のリスト)」に掲載されている。
美波町に話を戻すと、2000年には9,307人だった人口が、2025年には5,690人にまで減少することが見込まれており、高齢化率も45%を超える過疎化に苦しむ自治体の一つでもある。一方で、県内トップのサテライトオフィス誘致数を誇り、学童の他拠点就学を可能とする「デュアルスクール制度」を日本で初めて実現するなど、「にぎやかな過疎(にぎやかそ)」として、「2022年度SDGs未来都市(総務省)」にも選ばれている。
「人もウミガメも還る町」をビジョンに掲げ、とても精力的にウミガメの保護や、地域に関わる人たちの数を増やすことに取り組む美波町。しかし、それは、自治体 や地域住民の努力だけでは実現できない。地球規模での気候変動や密輸、海洋汚染の問題、日本全体で進む人口減少等に対し、この国や地球に住む私たち一人ひとりの取り組むことが必要なのだ。各レベルでの適切な政策の実現なくしては、小さな町や地域住民の努力は「むなしい」ものに終わってしまう。
国境も県境も市町村の境も関係ない。ただ、この地球で、私たちと同じいのちを賛歌している愛くるしいウミガメたち。彼ら・彼女らを絶滅に導く社会は、持続可能な社会と言えるのだろうか。ウミガメたちは、地球上の私たち一人ひとりに問いかけている。
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