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5月8日「世界赤十字デー」に国際機関やNGOの中立性を考える #ウクライナ

ウクライナ・マリウポリでの人道回廊に関する報道が続く。赤十字国際委員会(ICRC)と国連がウクライナ・ロシアどちらからも中立であると見られてはじめて成立するミッションだ。

政治的、人種的、宗教的、思想的な対立において一方の当事者に加担しないという「中立性」は、人道支援団体にとっての生命線。これがあるからこそ、困難な状況において、人道活動に関わるものの命を担保し、最も必要な人々にサービスを届けることができる。

同時にジレンマもこの「中立性」にある。明らかに国際法や人権が脅かされている現状を前にして、人々に必要なサービスを提供するために中立性を保つ(不正義に目をつぶる)べきか、または、サービスが提供できなくなる可能性があったとしても、不正義に対して声を挙げるべきか。この古い議論の模範解答があるとすれば、それは、どちらの組織も社会に必要ということであろう。

ミャンマーでも、ウクライナでも、国際NGOの現地スタッフであった若いミャンマー人、ウクライナ人たちが、ミャンマー国軍やロシア軍と武器を持って戦うために離職した話をよく聞く。あまりに明確な国際法違反や人権侵害を前にして、「中立性」は人道組織の限界を規定するものにもなる。

ある記事で、キーフの赤十字国際委員会(ICRC)代表や国際法の専門家が語っていた言葉が印象的だ。「人道組織や国際法は、戦争を終わらせたり、爆撃による被害を止めることはできない。それは政治家や外交の仕事だ」「人道組織は、人々の苦しみを軽減するためにそこにいるのだ」

国連や人道組織、NGOは、すべての課題を解決できる「メシア(救世主)」ではない。何ができないかを明らかにすることで、何ができるのかが見えてくる。重要なのは、全てのアクターが、それぞれの制限の中で、自分たちの責任を適切に果たしているかだ。

5月8日は、「世界赤十字デー」。赤十字の創始者であるスイス人の実業家、アンリー・デュナンの誕生日にちなんで作られたこの記念日は、赤十字の原点を振り返る日でもある。改めて「中立原則」とは何かを考えさせられる。

※人道四原則

人道原則(Humanity):どんな状況にあっても、一人ひとりの人間の生命、尊厳、安全を尊重する。

公平原則(Impartiality):いかなる差別もせず、最も助けが必要な人を優先する。

中立原則(Neutrality):政治的、人種的、宗教的、思想的な対立において一方の当事者に加担しない。

独立原則(Independence):いかなる立場にも左右されず、自主性を保ちながら人道支援を実施する。

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